【名城大学】世界初 空気中の水と二酸化炭素でメタン燃料合成

身近な原料、環境負荷低減 名城大・広島大チーム

【概要】
 名城大学理工学部の土屋文教授の研究チームが広島大学と協力して、空気中の水分(湿度80%)と二酸化炭素(濃度約400 ppm)を使ってメタンを作り出す方法を開発しました。
 研究チームは、水と二酸化炭素を室温で吸収する性質を持つ複合金属酸化物を用いる方法を考案。種々の複合金属酸化物のうち、リチウム-ジルコニウム酸化物を80度以上に加熱するとメタンが発生しました。この温度は太陽熱でも供給が可能です。また、メタンの発生量は温度が高いほど増加しました。
 詳しいメカニズムはわかりませんが、大気中の水と二酸化炭素がリチウム-ジルコニウム酸化物の酸素空孔(注1)と反応し、メタンの前駆体(注2)が形成されたためと考えられます。
 身近にある水と地球温暖化の原因となる二酸化炭素を原料に使い、環境への負荷が少ない温度(80~500度)でのメタンの合成の発見は、世界で初めてとなります。
 この研究成果は2023年2月19日付で環境・エネルギー材料分野で優れた国際論文雑誌の一つ「International Journal of Hydrogen Energy」に掲載されました(48巻、24項、8830~8836頁)。

【背景】
 天然ガスの主成分であるメタンは発電用燃料や家庭用燃料、家庭用燃料電池として広く使われ、年間30000億立方㎥以上が消費されています。しかしその一方で、天然ガスはその構造に炭素を含み、燃焼によって地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大量に発生させています。
 現在、排出される二酸化炭素と回収された二酸化炭素がオフセット(相殺)される「カーボンニュートラルメタン」(注3)が脱炭素化手段として注目されています。この「カーボンニュートラルメタン」は従来の方法(サバティエ反応=注4)では、電気分解によって再生可能エネルギーから製造される水素と、火力発電所などから排出される二酸化炭素を原料に合成されますが、太陽電池や風力発電装置などの発電機と水の電解装置が必要で、環境への負荷が大きい高温(300~400度)、高圧(1~3 MPa)が条件となります。
 そこで、大気中の水と二酸化炭素を室温で吸収する優れた特性を有するリチウム-ジルコニウム酸化物に注目し、低エネルギーでメタンを生成する研究を行うことにしました。

【意義】
 研究チームが複合金属酸化物に室温で大気から吸収された水と二酸化炭素を使って合成したメタンは、既存の発電用プラントや家庭用燃料に適用することができて社会コストの抑制が可能であり、効率的な脱炭素手段として大きなポテンシャルを持っています。このメタン製造手法は、複合金属酸化物の常温水分解を利用した二酸化炭素のメタン転換(メタネーション)技術の一つとして認められています(特許番号:第6727949号「炭化水素の製造方法」)。

【今後の展開】
 今後は実用化に向けて、空気中の二酸化炭素と水からの水素を効率よく反応させてメタンを大量に作り続けることが求められることから、より表面積の大きな複合金属酸化物の作製の実現を目指しています。

【用語の解説】
1) 酸素空孔:結晶中の酸素原子が移動することにより形成された空隙(くうげき)。
2) 前駆体:ある物質が生成する前の段階の物質。
3) カーボンニュートラルメタン:再生可能エネルギーから製造される二酸化炭素フリー水素と火力発電所や工場から排出される二酸化炭素を反応させて生成する合成メタン。
4) サバティエ反応:ニッケル等を触媒として、水素と二酸化炭素を高温高圧状態においてメタンと水を生成する反応。

【お問い合わせ先】
名城大学 理工学部 教養教育 教授 土屋 文
E-mail:btsuchiya@meijo-u.ac.jp


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