【名城大学】半導体負極の界面制御により 高容量かつ長寿命なLiイオン電池を実現 -全固体電池負極への展開を期待-

名城大学カーボンニュートラル研究推進機構 次世代バッテリーマテリアル研究センターの内田儀一郎教授(電子工学)、理工学部電気電子工学科 大前知輝 大学院生、藤掛大貴 学部生らは高容量化が期待できるゲルマニウ(Ge)半導体と劣化に強いカーボン(C)を巧みに組み合わせ、プラズマ技術で界面を制御することにより、電池の高容量かつ長寿命を実証しました。本研究の負極構造は次世代の全固体L i イオン電池に展開することが期待できます。
この研究成果は2024年2月23日にオープンアクセスの国際学術誌「Applied Physics Express 」
(https://doi.org/10.35848/1882-0786/ad2785) に掲載されました。
名城大学ではノーベル化学賞を受賞した吉野彰終身教授が発明したLiイオン電池研究を大きく展開しています。

図(a):独自の高圧プラズマスパッタリングでナノ多孔質のゲルマニウム (Ge)/カーボン (C) 積層負極を作製。
図 (b) :L iイオン電池の電池容量の充電 /放電サイクル特性。新規C /Ge/C構造で従来カーボンの約3倍の910 mAh/g の高容量を9 0サイクル以上劣化なく駆動できることを実証。

【発表のポイント】
● 低温高圧プラズマスパッタリング法を用いて直径10-20 nm程度のナノ構造を持つゲルマニウム(Ge)、カーボン(C)多孔質膜をバインダーフリー(有機接着剤なし)で作製することに成功。
● Ge界面を制御したC/Ge/Cサンドイッチ構造負極のLiイオン電池で、従来の約3倍の高容量910 mAh/gを劣化なく駆動させることに成功。
● ナノ多孔質膜をバインダーフリーで大面積に作製できる方法で、さらに界面の制御が可能であるため、全固体Liイオン電池の電解質と電極との界面制御に応用展開を期待。

【詳細な説明】
1.研究の背景
高エネルギー密度のLiイオン電池を実現するためには、Liイオンを大量に取り込める高容量負極の開発が必要不可欠です。ゲルマニウム(Ge)材料は、カーボン(C)の理論容量372 mAh/gの4.3倍の理論容量1600 mAh/gを持ち、高容量負極の有望材料です(利点)。しかしながらLiを取り込むことで合金化し、その際、体積が4倍近くにまで膨張する特性を持っています。充放電で膨張と収縮を繰り返すことで、亀裂や集電体となる銅電極からの剥離が起こり、高い容量が急激に低下する短寿命という問題があります(欠点)。この問題を解決するためにGe材料を通常の微粒子のミクロン(10ー⁶ m)サイズからナノ(10-⁹ m)サイズ化する方法や、他の材料と混ぜ合わせ複合化する方法が有効と考えられます。

2.研究内容及び本成果の意義
本研究では、独自の低温高圧プラズマプロセスで直径10--20 nm程度のナノ構造をもつGe多孔質電極をバインダー(有機接着剤)なしの工程で作製しました。さらにそのGe層をカーボン層で挟み込む負極構造を考案しました。底のカーボン層は銅の集電極と良好な界面を形成し、また、最上位のカーボン層は電解液と良好な界面を形成すると考えられます。このようにLiを充電するGeの両界面をカーボン層で制御したC/Ge/C多層負極を開発してLiイオン電池を評価したところ、910 mAh/g以上の高い容量を90サイクル以上劣化なく維持することに成功しました。この結果は両カーボン層によりGe材料の機械的劣化と化学的劣化が抑制されたことを示唆します。
このように今回、高容量化が期待できるGe半導体と劣化に強いカーボンを上手に組み合わせプラズマ技術で界面を制御することにより、電池の高容量かつ長寿命を実証しました。今後、この負極構造技術を全固体Liイオン電池に展開していくことが期待できます。

名城大学ではノーベル化学賞を受賞した吉野彰終身教授が開発したLiイオン電池研究を大きく展開するとともに、カーボンニュートラル研究推進機構*を中心に脱炭素社会を目指した研究開発を積極的に推進しています。

*名城大学カーボンニュートラル研究推進機構
https://sangaku.meijo-u.ac.jp/carbonneutral/

【論文タイトル】
Development of nanostructured Ge/C anodes with a multistacking layer fabricated via Ar high-pressure sputtering for high-capacity Li⁺-ion batteries
高容量Liイオン電池のための高圧Arスパッタリング法を用いたナノ構造Ge/Cマルチ積層負極の開発

著者:Tomoki Omae¹, Teruya Yamada¹, Daiki Fujikake¹, Takahiro Kozawa², Giichiro Uchida¹
1.Faculty of Science and Technology, Meijo University, Nagoya, Japan
2.Joining and Welding Research Institute, Osaka University, Ibaraki, Japan

雑誌名:Applied Physics Express 17, 026001 (2024)
WEB:https://doi.org/10.35848/1882-0786/ad2785

【用語の解説】
1)低温プラズマプロセス:ガス温度とイオン温度が室温で、電子のみが数万°Cの状態のプラズマ(低温プラズマ)。このプラズマを利用してナノサイズで材料を削ったり(プラズマエッチング)、高品質薄膜を作製 プラズ マ CVD 、プラズマスパッタリング)したりする方法。半導体デバイス作製に必要不可欠なプロセス。
2)界面:材料と材料のつなぎ面。電池内部の固体/ 液体間の界面と固体/ 固体間の界面をL i イオンと電子がスムーズに移動できるように作製することで、高容量かつ長寿命が実現できる。
3)全固体 Li イオン電池:負極と正極間の Li イオンの移動に電解液が必要だが、その電解液を固体の電解質に代えた次世代の電池。固体電解質は不燃性であるため安全で、かつ急速充電も可能となる。

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
名城大学理工学部 電気電子工学科
教授 内田 儀一郎( ウチダ ギイチロウ)
E-mail:uchidagi*meijo-u.ac.jp

<広報担当>
名城大学渉外部広報課
電話 052-838-2006
E-mail:koho*ccml.meijo-u.ac.jp
(*を @に置き換えてください)


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