【藤井聡】人命の「殺傷能力」は、コロナよりも「大不況」の方が圧倒的に高い。
From 藤井 聡(表現者クライテリオン編集長・京都大学教授)
皆さんこんにちは、表現者クライテリオン編集長、京都大学教授の藤井聡です。
今、日本は、新型コロナ対策の一環で「過剰な自粛」ムードが蔓延し、とてつもない不況に突入し始めています。
折りから消費増税で大変な打撃を受けていた日本経済(なんと、一年で国民所得が一人あたり30万円もなくなる勢いで冷え込んでいます)で、過剰自粛ムードがこれだけ蔓延すれば、さらに途轍もない不況に突入することは必至です。
「マクロ経済」と同時に、「リスクコミュニケーション」「リスクマネジメント」について研究をして参りました当方からしてみると、これは、コロナの蔓延以上に恐ろしい事態であると認識し、次のような記事を配信しました。
過剰自粛という集団ヒステリー ~「100人以下」のイベントでの感染確率は「ほぼゼロ」である~
https://38news.jp/economy/15456
この記事で当方は、
(1)「過剰自粛」は経済を疲弊させ、恐ろしい帰結を導く。
(2)だから、そのイベントの開催メリットとデメリットを比較衡量しつつ是々非々で開催/キャンセルを判断すべき、
(3)そして、現下の感染状況では、100人以下のイベントの感染確率は「ほぼゼロ」であるから、その点を踏まえて、その必要性に応じて是々非々で開催判断をすることが適当である。
と主張しました。
記事をしっかりと読んでいただいた理性的な方は皆納得いただいたと思いますが、中には筆者の主張を批判・非難される方々が少なからずおられました。
そうした批判・非難は、主として「100人以下でも感染者が出てるのに、そんな主張はおかしい!!」というものでしたが、当方の記事を読んでいただければ一目瞭然ですが、筆者は100人以下でも感染する確率が「ゼロ」であると言っているのではなく、「ほぼゼロ」だと言っているわけで、当然、100人であろうが、10人であろうが、はたまた2人であろうが、他者と接触すれば感染が広がるリスクは当然存在します。
したがって、当方の記事を批判・非難される方のほとんどが、記事内容をあまり確認しないで、タイトルのイメージだけで批判・非難されている方が大半のようでした。
(他のパターンとしては、「イベントの質を考慮していないじゃないか!閉鎖空間のイベントは危ないだろ!」というのもありましたが、当方の計算は、そのイベントに感染者が含まれている確率を計算しているものです。言うまでも無く、感染者がイベントに含まれていなければ感染することはありませんから、当方の確率値は感染率の「上限値」を意味しているのです。したがって、当方の確率値はかなり“悲観的”なものになっているのです)
いずれにせよ、当方の「100人以下ならほぼリスクゼロ」という、単なる「客観的事実」の情報提供がこれだけ批判・非難されるのは、世間が今、パニック状態、ヒステリー状態にあることの証左です。
ヒステリーを起こしている人は「それ、ヒステリーだよ」と冷静に指摘されれば、ヒステリーをさらに加熱させる・・・ということがしばしば起こりますが、今回まさに、そういう事態が起こっているわけです。
さて、こうしたコロナについてのヒステリー状況が巻き起こっている理由には、実に様々なものがありますが、その最も根源的な理由の一つが、
「過剰自粛がどれだけ危ないものなのかを、一般の国民はほとんど理解していない」
というもの。
まずは、こちらのグラフをご覧ください。
日本は、(97年の消費増税を皮切りとして始まった)98年からとてつもない「デフレ不況」に突入してしまいましたが、ご覧のようにデフレに突入した98年から、自殺者数が一気に年間1万人も増えてしまったのです!
その後、10年以上もその状況が続きました。2010年代に入ってようやくその死者数も減り始めたのですが、この推移から「このデフレ不況に『よって』増えてしまった自殺者数」を推計すると、実に14万人以上という推計値となりました!!
つまり大不況というものは、14万人もの人命を奪い取る程の、すさまじい「殺傷能力」を持っているのです!
ちなみに、コロナが蔓延し、昨今ようやく収束し始めたのではないかと言われている中国ですら、その死者数は3000人。
これは、上記の大不況による死者数のわずか3%以下の水準に過ぎません。
今はようやく自殺者数も、デフレ不況になる「前」の水準にまで落ち着いてきているのですが、過剰な自粛を繰り返して、日本経済がさらに疲弊すればまた、瞬くまでに自殺者が増加してしまうことは避けられないでしょう。
だから筆者は、せめて100人以下の、感染が含まれているリスクが大規模イベントよりも圧倒的に少ないイベントについては、その必要性を鑑みて是々非々で開催することが必要だと主張したわけです。
これはちょうど、クルマに乗れば事故で死ぬかもしれないが、その必要性を鑑みて、事故で死ぬリスクを「飲み込んだ」上で、クルマを使う、という話しと同じなのです。特に電車があまりない地方の場合、クルマは必需品、になっていますよね。そんな場所でクルマが怖いからといって一切使わなければ、生活ができなくなってしまいます。
それが、「リスクと付き合う」という姿勢なのであって、今、コロナについてもそうした冷静な姿勢が求められているのです(実は、当方が長年従事してきましたリスクマネジメント/リスクコミュニケーションと呼ばれる学術分野では、こういう態度が「リスク・アクセプタンス」risk acceptanceと呼ばれているのですが、リスク問題については、こうした態度が常に求められているのです)。
いずれにせよ、5人や10人、あるいは、数十人程度の会合やイベントをヒステリックに全て中止していれば、皆、生活などできなくなってしまうのです。そして、皆がそれをやればやるほど、大不況になって、何万人もの命が失われてしまうことになるのです!
だから、100人以下の規模のイベントなら、是々非々で開催していけばよいのです。
ただし・・・クルマを乗るときに必要なのは、「安全運転」。
イベントを開催するなら、マスクを全員が着用する、消毒薬で手を洗う、換気をする・・・という対策が必要です。
ついては読者の皆さん、コロナリスクに対しては、冷静に、理性的に対処いただきたいと思います(そしてもちろん、政府は消費税を「凍結」し、あらゆる所得補填、損失補填を徹底的に進める、というくらいの対応が必要ですね)。
さもなければ、未曾有の大不況に突入してしまうことがもはや避けられない様な状況に、我が国日本は立ち至っているのです。
追伸:
・・・そして、このコロナショックによる大不況もまた、人災なのです・・・。是非、ご一読ください。
「日本は今、コロナが病因の肺炎よりも、「安倍総理」が病因の「自粛病」が激しく大流行し、大恐慌に突入しようとしている。」
https://foomii.com/00178/2020030615020564338
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