工場内設備へのワイヤレス給電技術を開発
~すべてをワイヤレス化するスマートファクトリーへの第一歩!~
<概要>
知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期のうち「プロジェクトCore Industry」の「スマートファクトリーの完全ワイヤレス化に向けた非接触電力伝送(研究リーダー:国立大学法人豊橋技術科学大学、事業化リーダー:株式会社近藤製作所)」にて、工場内設備への非接触電力伝送システムを共同開発しました。スマートファクトリーにおいて品質データや量産管理・ロボット制御に使用されているワイヤレスセンサはこれまで電池を使っていましたが、電池交換による作業効率の低下が課題でした。今回開発したキャビティ共振型ワイヤレス電力伝送システムは送電電波を安全防護柵内に閉じ込めて共振させることでセンサへ電力を届けるもので、電池交換が不要となります。今回開発した技術は、同研究開発期間中に開発した産業ロボット向け非接触電力伝送ロータリージョイントと併せて工場へ導入することで工場内の様々な設備への非接触給電に活用が期待されます。
この技術の詳細は2025年2月20日(木)に開催される知の拠点重点研究プロジェクトⅣ期最終成果発表会(開催場所:「知の拠点あいち」愛知産業科学技術総合センター(愛知県豊田市))にて紹介いたします。
<詳細>
現在、日本では人・機械・システムをIoT(Internet of Things)で繋ぐことによるスマートファクトリー化が進められています。これにより、生産現場では品質データの収集による品質向上、生産計画や製造の最適化によるコスト削減など、大きな効果を上げ始めています。これまでデータ管理、システム制御、モニタリング等は、IoTやAIの導入によりデジタル化が進んできた一方で、これらデータを収集するワイヤレスセンサの電池交換作業による作業効率の低下という課題が残されています。これらのセンサは技術基準適合証明を受けているため、電池交換も含め修理を行うことができる登録修理業者に依頼する必要があり、電池交換のためにセンサを回収する作業に加え、新しいセンサを設置する作業が追加され、作業効率の低下を招きます。この問題を解決する方法として、センサへの非接触電力伝送が研究開発されていますが、伝送効率が課題の一つとなっています。
非接触の遠距離電力伝送方式にはアンテナを使った空間伝送方式がありますが、今回、障害物があっても高い効率で送電できる独自方式のキャビティ共振型ワイヤレス電力伝送システムを開発しました(図参照)。本開発品は工場内の作業者の安全を確保するために設けられている安全防護柵を活用します。この防護柵で製造区画を囲うことにより、センサへ電力を供給する電波は網目の大きさより波長サイズが十分大きい周波数に設定することで防護柵内に閉じ込め、ワイヤレスセンサの通信電波は網目の大きさより波長サイズの小さい周波数に設定することで防護柵の外へ通り抜けることができます。さらに、防護柵内に閉じ込められた電波が柵内に設置されたワイヤレスセンサに届くように防護柵の壁面に回路を搭載させ、給電効率を高めています。これにより、アンテナを使った空間伝送方式では給電が困難とされた見通し外の場所でもRF-RF効率30%を実現しました。さらに、防護柵内に同研究開発期間内に開発した非接触電力伝送ロータリージョイントを搭載した産業用ロボットを設置し、製造工程の一区画を模擬した簡易モデルを構築し、ロボットを動かしながらワイヤレスセンサを駆動させることに成功しました。
この電力供給に非接触電力伝送が導入できれば、上記課題を解決できるとともに、自由にワイヤレスセンサを設置してデータ管理から電力供給まで全てをデジタル化でき、作業効率向上や24時間連続稼働による生産性の向上が期待できます。製造拠点の日本回帰が始まっている今、非常に重要な技術となります。
<今後の展望>
今回開発したキャビティ共振型ワイヤレス電力伝送システムは既存設備を利用しながら、電波による高効率給電を実現できる点が魅力です。工場内の製品製造に関わるロボットから作業環境を管理するセンサまで、データ管理から電力供給まで全てをデジタル化できれば、作業効率向上や24時間連続稼働による生産性の向上が期待できます。製造拠点の日本回帰が始まっている今、非常に重要な技術となります。今後、本開発品の実用化に向けて最適な送電周波数の選定・更なる効率改善に向けた回路設計、工場以外でのアプリケーション探索も並行して取り組む予定です。
<謝辞>
本研究開発は「知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期」(プロジェクトCore Industry)、によるものです。
