5類移行後もマスクは着用し続ける⁉ 人々の行動は変わらず
拭いきれない「警戒心」が習慣化【リスク対策.com調べ】
連休明けの5月8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類から5類へと移行します。危機管理の専門メディアであるリスク対策.comは、全国の会社員を対象に、今年5月8日以降におけるマスクの着用意向等に関するアンケート調査を実施しました。その結果、5月8日以降も日常的にマスクを着用することを「受け入れる」との回答が54.3%と過半を占め、多くの人がマスクの着用を肯定的に受けとめている傾向が明らかになりました。生活の場面別にマスク着用の意向を聞いたところ、5月8日以降も「公共交通機関」では77.8%、「周囲に人がいる屋外」でも60.7%がマスクを「着用したい」と回答しています。
調査は、2023年4月22日から26日にかけてインターネット上で行い、20歳以上65歳以下の会社員838人からの回答を得ました。回答者の男女比は男性49.3%、女性50.7%で、年齢層は20代、30代、40代、50代、60代の各年代とも20%前後でした。居住地では東京都が18.9%で、大阪府(8.9%)、神奈川県(8.4%)、埼玉県(8.1%)などとなりました。
(本調査は、兵庫県立大学教授の木村玲欧氏と関東学院大学准教授の大友章司氏の協力を得て実施しています)
半数以上が5類移行後もマスク着用することを肯定
アンケートでは、新型コロナウイルス感染症が2類から5類に移行した後も、人々が、日常的にマスクを着用することを受け入れられるかどうかを質問しました。その結果、20.8%が「とても受け入れられる」、33.5%が「ある程度受け入れられる」と、計54.3%がマスクを着用し続けることを肯定的に捉えていることが明らかになりました【グラフ1】。一方で、「全く受け入れられない」はわずか4.5%、「あまり受け入れられない」は10.7%にとどまりました。
現状は施設内では9割がマスクを着用
現在のマスクの着用状況については、「職場」「対面での会議・打合せ」「接客」「公共交通機関」など、10の生活場面について、マスクを着用しているか、していないかを質問しました。その結果、「接客」については92.8%、「対面・打合せ」は92.3%、公共交通機関は91.7、公共施設は90.8%と、施設や乗り物の中では9割前後の人がマスクを着用していることが分かりました(「該当しない」との回答は除外)。 また「人がいる屋外」は77.9%、「人がいない屋外」でも46.5%がマスクを着用していると回答しました【グラフ2】。これに対し、5月8日以降もマスクを着用したいか、マスク着用の「意向」について聞いたところ、施設内や乗り物内では70%前後、「人がいない屋外」でも33.1%がマスク着用を望んでいることが分かりました【グラフ3】。さらに、5月8日以降に“実際に”マスクを着用すると思うか「予測」について聞くと、「着用すると思う」との回答は、全場面で前問の「着用したい」との回答を上回り、逆に「着用しないと思う」との回答は前問の「着用したくない」との回答を下回りました【グラフ4・5】。マスクの着用を望む以上に実際には着用せざるを得なくなる、あるいは、マスクを外したくても、外せなくなる、と考えている割合が多いことがうかがえます。
目的は「感染防止」が最多
マスクを着用する理由を、複数選択方式で聞いたところ「感染防止の徹底」が38.6%で、次いで「花粉・黄砂対策」(34.2%)、「マスク着用が習慣になっている」(30.0%)と続きました。「周囲の多数がマスクを着用している」は23.5%でした【グラフ6】。
同様にマスクを着用しない理由についても聞いたところ「息苦しい」が38.4%で最も多く、「暑い」(27.6%)が2番目に多くなりました。3番目は「特に理由はない」(18.7%)、「熱中症が心配」(18.7%)で、今後、花粉が収まり暑さが厳しくなれば、着用しない割合は増えることも推察されます【グラフ7】。
コロナ後の社会は楽観的だが収束には慎重な見方
最後に、コロナ後の社会について聞いたところ「旅行しやすくなる」「スポーツ観戦等に行きやすくなる」「人に会いやすくなる」「外食・飲み会に行きやすくなる」など、行動が自由になることについては楽観視する割合が多くなりました。一方で「引き続き感染対策が求められる」「感染症の脅威は引き続き続く」についても、共感する割合は多く、慎重な姿勢がうかがえる結果となりました【グラフ8】。「コロナはほぼ収束する」との意見への共感もわずかでした。外食や旅行などの需要は今後高まるものの、依然としてコロナへの恐怖心は払拭しきれず、経済への影響が長引くことも懸念されます。
■本調査を監修した兵庫県立大学教授の木村玲欧氏のコメント
5月8日の新型コロナ5類移行後も、施設内で7割以上、人がいない屋外でも3割以上の人が「マスクを着用したい」と回答するなど、マスクは「新型コロナ感染防止」というだけではなく、人によって違和感を覚えながらも「習慣」「エチケット」「周囲からの同調圧力」として定着している現状がうかがえる。しかし、今後、気温や湿度が高くなるにつれ、マスクによる熱中症のリスクも考えられることから、「外したいなら・必要ないと思うならマスクを外す」ことを積極的に呼びかけていくことも重要である。
世界各国が「新型コロナ流行終息宣言」を出す一方で、日本では「新型コロナ感染症の脅威は今後も続く」、「新型コロナ感染症はほぼ収束するとは思わない」が5割程度にのぼるなど、未だに新型コロナに対する警戒感が強い。警戒することは重要だが、過剰な警戒感、必要以上の恐怖感は、日本経済や景気の低迷にもつながる。新型コロナ対策について「なし崩し的な対策」という印象をもたれると、新型コロナへの警戒感、対策への不信感は薄れていかない。科学的な知見をしっかり伝えながら「どのような段階を踏まえながら日常生活に戻っていくか」のロードマップを周知することが重要だと考える。
■関東学院大学准教授の大友章司氏のコメント
コロナ禍が長期化し、マスク着用が習慣化している。人は変化することに抵抗を感じやすく、とりあえず着用したままでいようとする現状維持バイアスの心理が作用していると考えられる。5類移行後にコロナ禍のリスクをどれくらい受容し、それに見合った行動になるよう変化が求められる。
お問い合わせ先
リスク対策.com(株式会社新建新聞社 危機管理メディア事業部) 担当:中澤
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