現存のインフラの充実度を評価する「日本インフラの体力診断」、第四弾レポート(街路空間・バルク港湾・空港)を公表しました
公益社団法人土木学会(会長 佐々木 葉)は、日本のインフラの「強み」「弱み」を総合的に評価するため、インフラの『体力診断』を実施しています。
このたび体力診断の第四弾として、街路空間・バルク港湾・空港の3種類のインフラについて、各インフラ関連の制度・整備の推移、国際比較の観点から質・量双方の総合アセスメントを取りまとめました。
日本インフラの体力診断について
「日本インフラの体力診断」は、「日本インフラの実力診断」を構成する3つの観点の一つです。
「日本インフラの実力診断」とは、これまで国内において蓄積してきたインフラについて、能力、体力、健康状態の3つの観点で診断を行い、日本インフラの実力を評価し、その結果を世に問うことを通じて、以下を目指すことを目的としています。
① 「インフラ概成論」から脱却
② 日本の技術への「過信」から脱却
③ 国民や政治家の正確な理解
④ インフラや国土に関する(賛否の)議論を促進
⑤ 国土やインフラに関わる政策へ反映
能力診断
要素技術・システム・コンセプトのもつ強みとオリジナリティを批判的に評価・紹介。
健康診断
現存インフラの充実度を評価。
2020年度より開始し、これまでに9分野で診断を実施。
健康診断
現存インフラの健全度を診断。
2014年度より開始、逐次分野拡大・更新中。
日本インフラの実力診断:https://committees.jsce.or.jp/kikaku/node/118
日本インフラの体力診断(街路空間・バルク港湾・空港)
公表にあたって(レポート本文より)
道路、港湾、鉄道等の交通インフラ、上下水道の都市インフラ及び発電・送電等のエネルギーインフラは、戦後から高度経済成長の中で整備を進め、日本の生活・社会・経済を支えてきた。また、河川の整備は、国民の生命・財産を守る重要な役割を果たしてきた。このように、日本のインフラは、国民の安全・安心、生活水準や経済の発展に対応して、「体力」を確実につけてきた。一方近年では、わが国を取り巻く国際経済環境や安全保障環境が大きく変化するとともに、地震災害、豪雨災害等の自然災害が頻発・激甚化し、さらに深刻なコロナ禍を経て、種々のインフラへの要請も質・量ともに大きく変化・高度化しつつある。また、各種インフラの老朽化が顕在化している一方、人口減少に加え建設業の2024年問題でインフラの構築・維持管理・更新を行う労働力が不足している。これら災害や老朽化、労働力不足は、「インフラの体力」を脅かす要因としなり、その影響は年々深刻になっている。
日本のインフラへの投資に目を向けると、ここ数年、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策や加速化対策として重点的に財政措置されているものの、「日本の社会資本整備の整備水準は概成しつつある」との根拠なき「インフラ概成論」も影響して、1996年をピークにほぼ半分まで減少した状況が続いている。また、日本のインフラ取り巻く情勢を俯瞰すると、「東京一極集中」の是正が進まない中、大都市部と地方部とのインフラの整備水準とそれに関連する生活・交通・産業・雇用等の格差が拡大する一方、本年1月に発生した能登半島地震では、人口減少・過疎化に直面する条件不利地域におけるインフラのあり方について、改めてその課題が浮き彫りになった。さらに、海外各国が積極的にインフラへの投資を行っている中、わが国の相対的な国際競争力が低下し続けていると認識せざるを得ない状況にある。
そこで、土木学会では、「インフラ体力診断小委員会(委員長:家田仁)」を設置し、「日本のインフラ体力を分析・診断し、国民に示す」議論を重ね、2021年に第1弾として主要な公共インフラである高速道路・治水施設・国際コンテナ港湾を対象とした「インフラ体力診断書Vol.1」を、続けて2022年に第2弾として下水道・地域公共交通・都市鉄道を対象とした「インフラ体力診断書Vol.2」を、さらに2023年には第3弾として水インフラ・公園緑地・新幹線を対象とした「インフラ体力診断書Vol.3」を公表した。
そしてこのたび第4弾として、街路空間、バルク港湾及び空港を対象とし、各インフラ関連の制度・整備の推移、国際比較の観点から質・量双方の総合アセスメントを「インフラ体力診断書Vol.4」として取りまとめた。我が国の同分野における政策、制度への反映を期待するものである。
レポートの構成
各章の内容は以下の構成となっています。
街路空間
0.はじめに
1.わが国における都市内道路の課題
1.1 歩行中・自転車乗車中の交通安全性向上
1.2 人を優先する道路空間への転換
2.道路における歩行者空間の拡大
2.1 歩道整備の推進/2.2 通学路の安全性向上
2.3 道路の再構築による歩行者空間の拡大
2.4 道路のバリアフリー化の推進
3.面的な歩行者空間の形成
3.1 面的な歩行者空間を長期的な視点で形成
3.2 低速ゾーンを市街地全体に展開して自動車の流入と走行速度を抑制
4.自転車通行空間の整備
4.1 高密度で連続した自転車通行空間ネットワークの整備
4.2 自転車が通行する専用空間の確保
5.総合アセスメント
バルク港湾
0.はじめに
1.バルク貨物輸送の概要
1.1 バルク貨物の役割
1.2 世界のバルク貨物輸送の現状
2.2.バルク貨物の輸出入拠点の整備水準の比較
2.1 とうもろこし(穀物)
2.2 鉄鉱石
2.3 石炭
3.日本における輸入拠点の整備状況
4.新たなバルク貨物の受入環境の形成に向けて
5.総合アセスメント
空港
0.要旨
1.1. 日本の空港政策と世界の航空輸送の現状
1.1 日本の空港政策の経緯と現状
1.2 航空旅客数の推移と今後の展望
1.3 航空貨物輸送量の推移と今後の展望
2.航空輸送と空港整備の国際比較
2.1 空港数の国際比較
2.2 航空路線数・輸送量等の国際比較
2.3 サービスレベルの国際比較
3.これからの空港に求められる機能
3.1 防災・減災、国土強靭化
3.2 空港におけるDX・GX の推進
4.総合アセスメント
これまでの体力診断レポート
2021年に第1弾として主要な公共インフラである高速道路、治水施設、国際コンテナ港湾を対象とした「インフラ体力診断書Vol.1」を公表しました。
2022年には第2弾として下水道、地域公共交通、都市鉄道を対象とした「インフラ体力診断書Vol.2」を、2023年には第3弾として水インフラ、公園緑地及び新幹線を対象とした「インフラ体力診断書Vol.3」を公表しています。
Vol.1 https://committees.jsce.or.jp/kikaku/node/121
Vol.2 https://committees.jsce.or.jp/kikaku/node/127
Vol.3 https://committees.jsce.or.jp/kikaku/node/131
インフラ体力診断は土木学会公式noteでも掲載しています。
レポート概要
タイトル:「日本インフラの体力診断」Vol.4 街路空間・バルク港湾・空港
公開日 :2024年6月17日
作成 :土木学会 企画委員会 日本インフラの体力診断小委員会
(委員長 家田 仁 第108代土木学会会長・政策研究大学院大学)
詳細URL:https://committees.jsce.or.jp/kikaku/node/135
土木学会 概要
企業名:公益社団法人土木学会
代表者:佐々木 葉(第112代会長)
所在地:東京都新宿区四谷1丁目無番地
設立:1914年11月(公益社団法人化:2011年4月)
1914年設立。産官学の土木技術者により構成。個人会員数約40,000人。「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」(土木学会定款)ことを目指し、土木工学に関する調査研究のほか、技術者教育・土木広報・国際交流などの活動を展開している
URL:https://www.jsce.or.jp/