GSアライアンスが リチウムイオン電池用次世代型正極材料である リチウム過剰型正極材料を開発
現代社会において、リチウムイオン電池は代表的な蓄電池であり、電気自動車、バイブリッドカー、スマートフォンやパソコンなどを含めた種々の蓄電池として用いられている電池です。ただ今後の電気自動車などのさらなる高効率化やスマートグリッド社会の実現などの要求に対応していくためには電池容量のさらなる向上が求められています。リチウムイオン電池の構成材料の中でも正極や負極などの電極材料は、電池の性能を左右する非常に大きな要因であり、世界中の企業、大学などの研究機関で活発に研究開発が行われています。
リチウムイオン電池用の正極活物質は、電池性能として高容量、高電位、耐久性のある良好なサイクル特性、優れた充放電速度、化学的及び熱的安定性、高密度などが要求されます。また、商業化を考慮すると、低コスト、再現性、収率の高い合成法等も重要な検討事項です。これまでに電池性能の向上のために様々な正極用途向け化合物が検討されてきました。近年においては、主に層状岩塩型構造、スピネル型構造、およびオリビン型構造の遷移金属酸化物とこれらに関連する化合物について検討されています。商業化された材料として主なものに層状岩塩型構造の LiCoO2、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.5Mn0.2Co0.3O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、オリビン型構造のLiFePO4などの正極活物質があります。これらの化合物は平均電位 3~4V、理論容量 170~280mAh/gですが、実際に利用可能な容量は100~200mAh/g程度となっています。そしてさらなる電池容量を増やすためにより高電位、より高容量となる材料が求められています。高電位材料としては、スピネル型構造のLiNi0.5Mn1.5O2やオリビン型構造のLi2CoPO4Fなどが検討されています。これらの材料は平均電位でも4.5V以上であり、電池電圧を従来よりも1V程度高くすることができる材料として期待されています。さらに、高容量材料については、最近Li2Mn1/2Ti1/2O2FやLi1.2Ti0.4Mn0.4O2などの層状岩塩型構造のリチウム過剰系正極材料に関する研究報告が増えています。リチウム過剰系正極材料はその材料における遷移金属に対するリチウムのモル比が1よりも大きく、理論容量 380~460mAh/g、実際に利用可能な容量は最大320mAh/gであり、LiCoO2などの従来品に比べて100mAh/g以上も高いことが特徴です。これらのことからリチウム過剰系正極材料は、蓄電エネルギー量を飛躍的に増大させる材料として期待されており、材料探索や実用電池への適用に向けた研究開発が世界中で進められています。
GSアライアンス株式会社はリチウムイオン電池、アルミニウム系電池、金属空気電池、全固体型リチウムイオン電池、金属有機構造体を応用した電極材料、SiO系負極材料などの各種の次世代型二次電池の研究開発を活発に行っており、電極、固体電解質の合成、電極塗布用インクの作成、試験用セルの作成、電気化学的測定、分析など全て自社内で行っています。
この度、当社の古西 克次研究員と森 良平博士(工学)は、ある種の化学組成のリチウム過剰型正極材料を合成し、その正極材料を用いた塗布用電極インクも作成しました。このインクをアルミニウム集電体に塗布して電極として用い、対極にリチウム金属を使って試験用リチウムイオン電池を作成し、電解液としては、標準的なカーボネート系の電解液を用い、従来のリチウムイオン電池の測定方法で電気化学的特性を測定しました。
結果、0.1Cの印加電流条件下で初期的に約265mAh/g、そして40サイクル後も215mAh/gという比較的大きな電池容量を有するリチウムイオン電池を作ることができました。この電池容量は負極にリチウム金属を用い、正極中のリチウム過剰型正極活物質の重量に対して計算した数字です。約40回の充放電サイクルで約20%弱の容量低下は観察されているので、今後もサイクル特性の向上、そしてさらなる電池容量の向上などの改良のために研究開発を続けます。またリチウム金属ではなく、負極に炭素系材料を用いて試作セルを作成し、リチウム金属を用いた時と比較して約80%程度の電池容量があることを確認しているので、リチウム過剰型正極材料を用いたリチウムイオン電池の製造、実用化を目指します。
会社概要
商号 : GSアライアンス株式会社
代表者 : 代表取締役社長 森 良平 博士(工学)
所在地 : 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容: 環境、エネルギー分野の最先端材料、製品の研究開発
URL : https://www.gsalliance.co.jp/