【岡山理科大学】既存の災害像の見直しから防災を考える――国際ワークショップ開催
季節風の影響で夏に雨が多いアジア・モンスーン地域の災害状況と対応を包括的に比較する国際ワークショップが10月21日~23日、岡山市北区の岡山理科大学で開かれました。国内をはじめインド、バングラデシュ、ネパール、ミャンマー、ブータンからオンラインを含めて約50人の研究者らが参加。地理学や気象学などの観点から洪水対策を考えました。
初日はまず、研究代表者の宮本真二・岡山理科大学生物地球学部准教授が、今後求められる研究視点として、①周期性のある災害履歴とその影響の把握②災害を「利用」する人間活動の実態の把握③災害と離農・過疎問題の検討、という3つの方向性を示し、「既存のハード中心の防災対策のみでは減災に帰結しない」とし、「災害を受ける主体に着目する『レジリエンス論』が注目されつつある」と強調しました。レジリエンスは困難・脅威に直面しても適応して乗り越えていく能力のことです。
宮本准教授は、この動向を示すものとして、氾濫域も含めて一つの流域として捉え、流域全体で水害を軽減させる治水対策に取り組む国土交通省の「流域治水プロジェクト」(2021年3月公表)という政策の大転換を指摘しました。
続いて2日間にわたって計16件の研究発表があり、インド・ゴウハティ大学のニッタロンダ・デカ博士は、頻繁に大洪水に見舞われているアッサム州の先住民による洪水適応事例を紹介。高床式住居や高台で暮らし、洪水期を外して収穫が可能なコメに切り換えるなどしている現状を発表しました。
また、バングラデシュ農業大学のラシュドール・ラーマン博士は、水害耐性品種のコメに切り換えるなどした、洪水の影響を受けた農業システムへの取り組みを発表。岡山県倉敷市防災推進課の三宅健文さんは、2018年7月の西日本豪雨災害の被災から復興に向けた過程を説明しました。
障がい者の立場からの発言もありました。東京在住の原田華代さんは「災害時の避難所で、ハンディキャップをもつものも含めて、だれ一人として取り残さないでほしい」と訴えました。
最終日は西日本豪雨災害被災地の倉敷市真備町川辺地区などを視察しました。