真鍋博士、ノーベル物理学賞受賞! 今、改めて考えたい、地球温暖化について【ZIP!気象キャスターくぼてんきさんインタビュー】

ZIP!気象キャスターとして活躍中のくぼてんきさんにお話しを聞きました。

2021-10-20 15:00

 2021年のノーベル物理学賞の受賞者に、大気と海洋を結合した物質の循環モデルを提唱し、二酸化炭素濃度の上昇が地球温暖化に影響するという予測モデルを世界に先駆けて発表した、プリンストン大学の上級研究員でアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎博士が、ドイツとイタリアの研究者とともに選ばれました。
 ノーベル物理学賞が、気象や気候の研究分野を対象とするのは初めてのこと。現代の気候の研究の基礎を築いた偉大な研究です。

 そこで、『くぼてんきの「天気のナンデ?」がわかる本』の著者で気象キャスター・防災士のくぼてんき氏に地球温暖化についてうかがいました。

◆地球温暖化ってなに?

 地球の平均気温が長期的に上がっていくことを「地球温暖化」といいます。
地球温暖化の原因は、「温室効果ガス」の排出量が増えていること。温室効果ガスとは、地球をおおう大気に含まれているもので、布団みたいに地球の熱を逃さずに暖めてくれています。このガスがないと地球はとても寒くなってしまうから、必要なものですが、増えすぎると地球を暖かくしすぎてしまいます。

 温室効果ガスにはいろいろあって、なかでも地球温暖化に大きく影響しているのは「二酸化炭素」。二酸化炭素は「化石燃料」と呼ばれる石油や石炭、天然ガスを燃やすときに、空気中にたくさん排出されます。化石燃料でできているものは身近にたくさんあるから、たとえばゴミを燃やすたびに、二酸化炭素が大気中に増えてしまいます。

 1921年から2020年の100年あたりで、世界全体で気温が+0.88℃上昇していて、日本だけで見ると+1.26℃上昇しています。日本のように都市化が進んだ国は、世界全体に比べて上昇率が高くなります。
 このまま何も対策をとらなかった場合、21世紀末には基準年(1986年~2005年)の平均気温より、最大4.8℃上昇する可能性があるとも言われています。

◆「温室効果ガス」のことをもう少し詳しく

 温室効果ガスは、太陽の熱で暖められた地球から宇宙に放射される熱の一部を吸収し、それを地球に戻すことで、地球をボクたちが生活しやすい温度にしてくれています。でも、増えすぎると暖かくなりすぎてしまうから、そこが問題です。

 ゴミの燃やしすぎのほか、自動車や飛行機を動かしたり、電気をつくったりするときにも、温室効果ガスである二酸化炭素が大量に排出されています。二酸化炭素は森林などの木が吸収してくれるのですが、農地や工業地をつくるために森林がどんどん伐採されていることも、原因の一つとなっています。
 ボクたちの生活が豊かに便利になるほど、温室効果ガスは増えるわけだから、どう減らしていくかを世界中で考えていかなくてはなりません。

◆地球温暖化で北極の氷もとける?

 気温が上がるごとに氷がとける量は増えるから、地球温暖化で気温が上がれば、北極の氷も昔に比べて多くとけるようになります。
ただ、北極は海の中の厚い氷に覆われたところで、陸地はありませんから、北極の氷がとけても海の水が増える=海面が上昇する心配はないのです。コップの中の氷がとけても、コップの水はあふれないのと同じで、北極の氷がとけても、海の水の量には影響しません。

 海の水の量が増えるのは、陸地の氷がとけて海に流れ込んできたとき。たとえば、北極圏にはグリーンランドという地表が大きな氷の塊でおおわれた国がありますが、この氷の塊がとけて陸地から海に流れ込むと、海面が上昇してしまいます。

 グリーンランドの氷がとけて海面が上昇する現象はすでに始まっていて、21世紀の終わりまでには最大で1メートル上昇すると言われているのです。そうなると、小さな島や低い土地の多い都市は海に沈んでしまうのではないかと考えられていて、なかでも「ツバル」という太平洋にある小さな島は沈む可能性が高いと言われています。日本でも、沖縄には海抜が低い島があるので、海面が1メートル上がったらどうなるか……。100年以内で完全に沈んでしまうかもしれないのです。

◆地球温暖化が進むとどうなるの?

 豪雨や強い台風など、極端な気象現象が増えるかもしれません。地球は70%が海なので、地球温暖化で海の温度も上がり、蒸発する水分の量が増えると、雲がたくさんできるようになります。となると、雨雲や台風の発達が増え、これまでにはなかったような豪雨や強い台風がおこることが考えられます。

 桜の開花日が少しの温度変化で変わるように、0.1℃の変化でも植物は敏感に反応しますから、農作物にも影響が出てきます。気温が100年で4~5℃も上がるのは、足がなくてすぐに移動できない植物にはペースが早すぎて、絶滅する種もでてくるかもしれません。
たとえば、暖かい地方でしか採れないみかんが東北地方でも採れるようになるかもしれないけれど、寒い地方でしか採れないリンゴは採れるところがなくなるかもしれないのです。気温上昇に合わせて品種改良が進まなければ、お米も収穫量が減ってしまうでしょう。

 そして、日本じゅうの植物が暖かいところで生息できる熱帯の植物に変わると、それに合わせて熱帯の昆虫もやってきて、これまではいなかったその昆虫が害虫となり、農作物が被害にあうことも想像されます。蚊を介して感染するデング熱やマラリアといった熱帯の病気もやってくるかもしれません。

温暖化は確固たる科学に基づいて解明されていることですから、これからも世界中で真剣に取り組むことが大切です。

※書評・著者インタビュー、専門家出演等のご検討をいただけましたら幸いです。

【著者プロフィール】くぼてんき

 気象予報士、防災士、こども環境管理士、紙芝居師
1983年生まれ、大阪府出身。
2019年4月~日本テレビ「ZIP!」の気象キャスターとして活躍中。
気象予報士と防災士の資格に加え、東京都が認定する大道芸人ヘブンアーティストのライセンスも持っている。小学校、商業施設、さまざまなイベントなどで「天気」「環境」「防災」をテーマにした講演、ワークショップなどを行う。
2016年4月~2019年3月、テレビ神奈川の気象キャスター。

【書籍概要】

くぼてんきさん、初のお天気本が好評発売中です🌤空の色ってナンデ変わるの?ナンデ雨や雪がふってくるの?身近なナンデから、台風や豪雨から身を守る方法までくわしく解説しています。

タイトル:『くぼてんきの「天気のナンデ?」がわかる本』
【目次】
気象写真(カラー) 
第1章 空と雲のナンデ
第2章 雨と雪のナンデ
第3章 風と台風と雷のナンデ
第4章 気温のナンデ
第5章 天気予報のナンデ
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