所得拡大促進税制の判定が簡素化される!令和3年度税制改正大綱
こんにちは。
中小企業の事業承継と成長支援に強いアイユーコンサルティンググループです。
寒い毎日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は令和2年12月10日に公表された「令和3年度税制改正大綱」のうち、多くの中小企業が関係すると思われる所得拡大促進税制の見直しについて解説いたします。
概要
【中小企業における所得拡大促進税制の見直し・延長】
新型コロナウイルスの影響により雇用環境が悪化する中で、雇用を増やすことにより所得拡大を図る企業を評価できるよう、適用要件を一部見直し・簡素化したうえで、適用期限が2年間延長されます。
適用要件の改正
(用語の意義)
・雇用者給与等支給額とは、適用年度の「全ての国内雇用者(役員及び役員の特殊関係者等一定の者を除く)」に対する給与等の総額をいいます。継続雇用者に限定されません。
・継続雇用者給与等支給額とは、雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に係る金額を指します。
・継続雇用者とは、以下のすべてを満たす者を指します。
① 前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である
② 前事業年度及び適用年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である
③ 前事業年度及び適用年度の全てまたは一部の期間において高齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない
上記の要件を満たす場合、雇用者給与等支給額の増加額の15%を税額控除できます(法人税額の20%上限)。
現行制度の判定では継続雇用者給与等支給額を比較する必要があるため、従業員数が多い
場合は、その判定に時間を要していたのが現状かと思われます。
この度の改正で継続雇用者給与等支給額の判定は不要となり、雇用者給与等支給額が前期と比し1.5%増加している場合は税制の対象となります。
ここで、役員1名・使用人4名の会社を例に判定を行ってみます。
前年より従業員が増え給与も増加傾向にある法人のため、所得拡大促進税制の適用ができそうですが、どうでしょうか?
≪現行制度≫
継続雇用者判定のため、適用年度とその前年度の給与を受給者毎で集計します。
以下のような集計が必要になります。
継続雇用者給与等支給額に該当するのはNo.2への支給額のみとなり、継続雇用者給与等支給額が前期に比べて1.5%増加していないため、適用要件を満たすことができませんでした。
また、5人の集計のみですが、賃金台帳等から各月の数字を拾うのにかなり時間を要します。
≪改正案≫
次に、上記の例を改正案で判定をするとどうでしょうか。
全く同じ数字で判定を行ってみます。
継続雇用者給与等支給額の判定は不要となり、雇用者給与等支給額のみの比較で判定を行うため、全く同じ給与であるにも関わらず適用要件をクリアしました。
現行制度では、上記表のように集計を行わなければ適用有無の判定ができませんでしたが、今回の改正では前期比較試算表にて簡易判定を行うことが可能です。
判定は数分もあれば行えるため、判定時間を大幅に削減できます。
上乗せ要件の改正
上記の上乗せ要件を満たす場合、雇用者給与等支給額の増加額の25%を税額控除できます(法人税額の20%上限)。
適用要件の判定と同様に、継続雇用者給与等支給額の判定は不要となり、雇用者給与等支給額の比較に改正されます。
その他の改正点
給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」について範囲を明確化するとともに、雇用調整助成金の取り扱いを以下のように見直されます。
適用要件及び2. 上乗せ要件の判定については、雇用調整助成金を雇用者給与等支給額から控除せずに判定します。
税額控除の金額の計算については、雇用調整助成金を控除して計算した金額が上限となります。
雇用調整助成金の取り扱いについては、以下のような判定が必要になるため注意が必要です。
その他の注意点
・所得拡大促進税制は租税特別措置法で定められているため、適用額明細書に記載がないと適用が受けられない点は注意が必要です。
いかがでしょうか?
現行制度では継続雇用者の給与増加が要件であったため、新規雇用を増やすよりも給与のベースアップに重きが置かれている内容でしたが、この度は新型コロナウイルスの影響により雇用環境が悪化する中で、新規雇用を増やすことに注力しようとする意向がうかがえる改正となっています。
今までは判定が難しく敬遠されてきた方も、今後は容易に判定を行うことができます。
適用期間は2021年(令和3年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日までの間に開始する事業年度です。
是非この改正を契機に所得拡大促進税制の優遇措置を受けられてみてはいかがでしょうか。
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