『大学時代に教えておいてほしかったこと』著者・千田琢哉さんインタビュー

大学で何をするかより、どの大学に入るか ――タブーを恐れない人気作家が語る「大学の価値」

2024-11-29 18:00
 「自分に合った何かに没頭してください」と千田氏

千田琢哉さんは長年、20代に向けた書籍を執筆しベストセラーになるなど、この世代から支持され続けています。新刊『大学時代に教えておいてほしかったこと』を出版された千田さんに、大学や大学時代をどうとらえ、過ごすべきかをうかがいました。

――本書では、ご自身の経験などをもとに、どのように大学生活を送るべきかを書かれています。人生において、大学時代は、どれほど重要で、どのような意味を持つものなのでしょうか。

多くの人にとっては若くて生命力が漲っているうちに何かに没頭できる最後のまとまった時間になるのではないでしょうか。私の場合は大学時代があまりにも充実していたので、早いうちに会社員の生涯賃金を稼ぎ終えて、もう一度大学時代のような人生を送りたいと考えていました。高校時代までは常に誰かと群れていましたが、大学時代は孤独に読書に没頭し、さらにボディビル部に入って孤独に筋トレに打ち込みました。頭と身体を鍛え抜いておいたおかげで社会人になってからは本当に楽でしたよ。ここだけの話、こんなに楽な人生でいいのだろうか、いくら何でも楽過ぎやしないか、ひょっとして自分は夢を見ているのではないかと今でもたまに疑うくらいです。もし私が大学時代に高校時代の延長で群れていたら、そのまま何もせずにボーッとしていたらと思うとゾッとします。私の場合は読書と筋トレに没頭したというだけですから、自分に合った何かに没頭してください。

「虚心坦懐に分析しなければなりません」と千田氏

――その一方で、どの大学に入学するかが、その後の人生で大きな意味を持つこともたびたび指摘されています。

公では誰も本音を口にしませんが、人生において入学大学は極めて重要です。最近は編入や学士入学で学歴の化粧直しをする「学歴ロンダリング」は珍しくなくなってきましたが、水準以上の知識人や組織では卒業大学より入学大学をちゃんとチェックしますよ。これは私が経営コンサルタント時代に社内外の組織で膨大な一次情報を確認してきましたから間違いありません。結局、地頭とは学力のことです。そして学力は編入や学士入学、大学院からのロンダリングよりも学部の一般入試のほうが遥かに難しく本人の地頭が反映されます。学部の一般入試の敗者がロンダリングを狙うのです。付属組や推薦組も増えていますが、高校名もシビアにチェックしていますよ。そこまで大人の世界は甘くありません。入学大学を料理に例えるならお皿ですね。お皿の見栄えがすると盛り付けられる料理が美味しくなるように、入学大学の見栄えがすると積み上げられる人生も美味しくなります。

――とかく学歴を重視することが批判されがちですが、学歴が世の中で価値を持つことは厳然とした事実なのですね。

これは一度誰かがハッキリと言わなければならないことだと思いますが、私が就活をした90年代は上場企業で筆記試験を受けたことは一度もありません。バブル崩壊後です。ある日OBから電話がかかって来てホテルでランチをしながら「御社第一志望」と伝えると、ちょうどその二日後には東京本社に呼ばれます。さらにその二日後に再び東京本社に呼ばれたら内定でした。もちろん仙台からの交通費は先方負担で1円もかかりませんでしたよ。当時定番のリクルートから送られた電話帳みたいな分厚い冊子とは別のあずき色の小冊子があって、そこに北大・東北大・東大・一橋大・東工大限定のOB・OGリストが掲載されていました。その人たちから電話がかかって来ましたね。社会人になってからは就活以上に学歴という“切符”が道を拓いてくれたと最後に囁いておきます。

――とはいえ、大学入学後の過ごし方次第では、集団から抜け出すことができたり、分野によってはエリートを逆転できたりするわけでしょうか。

ほぼ絶望的ですが、不可能ではありません。まず大学受験で一度敗れているという事実を重く受け止めるべきです。本気で逆転を狙う挑戦者のために抽象的な表現はやめますが、例えば早慶とMARCHは僅差ではなく大差であることを理解してください。あと一歩ではなくあと五百歩くらい違います。私はこれまでそれらの大学群の出身者たち三桁と同じ空間で過ごしてきましたが、早慶とMARCHでは明らかに突破力が違うのです。仕事で何が何でも結果を出そうと常軌を逸するほど執念を燃やすのが早慶、このくらいでいいよね、これで精一杯だから仕方ないよね、というのがMARCHです。もし逆転して人生の格を上げたければ、格上がどのような世界で生きているのかを虚心坦懐に分析しなければなりません。格下はB級資格取得に明け暮れますが、格上の世界ではそれらは資格とは見なされないものです。それならシンプルに早慶卒という資格のほうが断然尊敬される上に道を拓いてくれますから。

――アルバイトに関して、経験しておくといいアルバイト、反対に手を出してはいけないアルバイトがあれば、教えていただけますか。

できれば変わったアルバイトをやっておくといいのではないでしょうか。例えば私はバーで用心棒のアルバイトをしていました。大学4年生の頃にジムに通っていたら、そこでスカウトされたのです。結局それがきっかけになって代々後輩にも引き継がれました。実はそこで経験したことがその後の執筆活動に影響を与えてくれたことは多いですね。当時のそのバーは漁師とか仙台の荒くれ者の集まりで警察も頻繁に出入りしていました。乱闘は日常茶飯事で入場前にはナイフやクスリのチェックもありましたよ。油断するとトイレで交尾を始めるお客様もいらっしゃり、幅広い人間観察ができたように思います。社会人になってから海外でぼったくりバーに入ったこともありましたが、用心棒の経験があったおかげで切り抜けられたのは間違いありません。以上はあくまでも結果論に過ぎないので、今までの自分なら逃げていたようなことをあえて積極的にやってみてはいかがでしょう。

――今回のご著書のタイトル『大学時代に教えておいてほしかったこと』です。すでに大学を卒業してしまった「かつて大学生だった人たち」は、自分の大学時代をどのように総括し、これからの人生を歩んでいくとよいでしょうか。

最近思うのはセカンドライフの大切さです。それは人によって50代からなのか、還暦後からなのかは違うと思いますが、ファーストライフだけでは人生の後半が退屈になってしまうということです。あの哲学者のニーチェが提唱したような、ただ死なないためだけに暇を潰してダラダラと生きている“末人”にはなりたくありません。誰でも想像できると思いますが、人生は後半になればなるほど幸せになるほうがいいに決まっていますから。一番悲惨なのは中学受験でピークを迎えてその後下り坂という人生でしょう。それに近い元エリートは本当にわんさといますから要注意ですよ。充実した大学時代を送った人も、送れなかった人も、今この瞬間からセカンドライフに備えて生きましょう。50代からセカンドライフを充実させたければ40代から、還暦後から充実させたければ50代から準備をしていなければ遅いですよね。遅刻です。大学時代の遅刻は笑い話で済みますが、セカンドライフの遅刻は人生の遅刻になってしまいますよ。ゴルフをやるにも俳句をやるにも、今から始めたほうがより高いレベルの人と最初から出逢うことができます。慌てて頑張るよりぼちぼち始めるほうが楽だし楽しいですよ。

著者プロフィール

千田琢哉(せんだ・たくや)

愛知県生まれ。岐阜県各務原市育ち。文筆家。東北大学教育学部教育学科卒。同大学学友会ボディビル部元主将。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。コンサルティング会社では多くの業種業界におけるプロジェクトリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。保険業界では業界紙「保険毎日新聞」「新日本保険新聞」等で1ページ独占連載記事を長期間担当して脚光を浴びた。のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を自らのミッションとして執筆活動を行っている。著書は本書で181冊目。
音声ダウンロードサービス「真夜中の雑談」、完全書き下ろしPDFダウンロードサービス「千田琢哉レポート」も好評を博している。

書籍情報

表紙

タイトル:
著者:千田琢哉
ページ数:240ページ 
価格: 1,485円(10%税込) 
発行日: 2024年11月19日 
ISBN:978-4-86667-723-1
書籍紹介ページ:http://www.asa21.com/book/b652497.html

amazon:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4866677236/asapublcoltd-22/
楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/18001361/?l-id=search-c-item-text-01

選択肢の多い現代の若者が将来を明るいものするために、著者が自身の経験を通して、「学び」「遊び」「友情」「恋愛」「ピンチ」「就活」「進路」「SNS」等について、大学時代に知っておきたかったことを解説します。

目次

【1】邂逅
【2】学び
【3】遊び
【4】友情
【5】恋愛
【6】ピンチ
【7】就活
【8】進路
【9】SNS
【10】余録と補遺

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