大学生のキャッシュレス決済利用実態を調査 調査結果を基に、企業との協働で普及策検討へ
近畿大学(大阪府東大阪市)では、経済産業省が推進するキャッシュレス決済の比率を2025年までに40%程度に引き上げることを目指す「キャッシュレス・ビジョン」に基づき、学生に対するキャッシュレス決済の認知向上や、新しい技術に触れる機会の提供を目的として平成30年(2018年)11月から学内の食堂などでLINE Payでの決済が可能となっています。また、日本の大学として初めて、平成29年(2017年)4月からの入学生約7,200人全員にVISAプリペイド機能付き学生証を発行し、キャッシュレス化への取組みをこれまでも積極的におこなってきました。経営学部鞆研究室では、平成30年(2018年)12月19日から平成31年(2019年)1月10日の間で大学生を対象としたキャッシュレス決済の利用実態調査を実施致した結果、大学生のキャッシュレス決済利用率は68.2%と全体の2/3以上の学生が何らかの形でキャッシュレス決済を利用していると回答しました。しかし「ほぼ毎日」利用しているユーザーは全体の5.0%に留まり、現状は日常的な決済手段として用いられる状況には至っていないとの結果になりました。
【本件のポイント】
●大学生のキャッシュレス決済利用率は68.2%だが毎日利用すると回答した学生は5.0%
●交通系ICカードが認知度・利用度共に高く、スマートフォン決済は認知度の高さに反して利用度は低い結果に
●学生にとってのキャッシュレスはコインレスではなくビルレス(紙幣レス)との認識
【アンケートの概要】
■対 象:近畿大学経営学部1年生 597名(男性 407名/女性 190名)
■実施者 :経営学部 鞆大輔研究室
■実施時期:平成30年(2018年)12月19日~平成31年(2019年)1月10日
■質問事項:(1)キャッシュレス決済の認知/利用状況
(2)施設別利用状況/意向
(3)キャッシュレス決済利用頻度
(4)金額別キャッシュレス利用意向
■調査方法:記名式 Webアンケート
【本件の概要】
(1)媒体毎の認知・利用状況については交通系 ICカードの認知・利用率が最も高く、次いでクレジットカード、デビットカードが良く用いられているとの結果になりました。一方でLINE PayやPayPayといったスマートフォン決済については認知度こそ高いものの利用率は低く、今後の普及に向けては単純な周知広報以外の施策が必要であると考えられます。
(2)施設別の利用状況についてはコンビニや専門店、スーパー等での利用が中心ですが、今後は屋台や病院、アミューズメント施設など、シーンを問わず様々な場所でのキャッシュレス決済が期待されているようです。
(3)どの程度の金額帯がキャッシュレス決済に適していると考えるかという設題に対しては、39.7%の学生が10,000円以上と回答したのに対し、100円未満と回答した学生は9.9%と極めて少数であるという結果になりました。一般的にキャッシュレス決済のメリット・特徴としては小銭を扱う煩わしさが無いという「コインレス」が挙げられる事が多いですが、学生にとってのキャッシュレスは高額紙幣を持ち歩かないで済む「ビルレス(紙幣レス)」としての意識が強く、クレジットカード等のイメージに近いようです。
なお本調査結果に基づき、近畿大学経営学部鞆研究室とLINE Pay株式会社は若年層へのキャッシュレス決済普及に関する共同研究を実施する方向で協議を開始しました。アンケート後の追加調査の結果では、学生がキャッシュレス決済を積極的に利用しない原因として決済事業者への不信感等も挙げられており、これらは通常のプロモーションでは払拭しづらい要素であるため、どのような要因が不信感の原因となるのか、またどのようにすれば不信感を取り除きキャッシュレス決済の利用へと繋がるのかについて、他の決済事業者や学生を交えたワークショップ形式での研究を平成31年(2019年)4月から実施することを予定しています。
【関連リンク】
経営学部経営学科 准教授 鞆 大輔(トモ ダイスケ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/241-tomo-daisuke.html