ウズベキスタン大統領が国連総会で 新しいイニシアチブについて演説
2023年9月19日、ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領が国連総会で演説したことをうけ、駐日ウズベキスタン共和国大使館は、この演説に関しウズベキスタン共和国大統領府 経済研究改革センター長のオビド・ハキモフ氏が10月1日に発表した記事を公開いたします。
経済改革について
ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領は国連総会でウズベキスタンの改革について演説し、法秩序がある国民のための民主的な社会国家としての新ウズベキスタンを建設していくことを目指した政策を続けていくと表明しました。それに対し、アントニオ・グテーレス事務総長は大統領の演説を高く評価し、ウズベキスタンで進められている不可逆的な改革を支持すると強調しました。そして、特に「2030年までのウズベキスタン戦略」の目標と課題の規模は大きく、SDGsと完全に一致していると言及しました。
また、大統領は「一貫した改革により、ウズベキスタンの経済は地球規模の課題にもかかわらず、安定した成長率を示しています。この6年間でGDPは1.5倍以上増加し、2030年までに2倍に増加させるという目標を掲げています」と述べました。
ここで指摘すべきことは、人々が満足した生活を送れるよう安定した経済成長を約束することが「2030年までのウズベキスタン戦略」における主な目標の一つとなっていることです。具体的には、国民一人当たりのGDPを現在の2200ドルから4000ドルに引き上げ、我が国を中所得国以上にランクインさせることを指標としています。ウズベキスタンの人口は急激に増加しているため、2030年までに経済を大きく成長させる必要があります(2022年、ウズベキスタンのGDPは初めて800億ドルを超えた)。
このような目標を達成するため、民間セクターの役割を強化することを目指した改革が今後推進されます。国有企業の数を6分の1に減らし、経済に占める非国有セクターの割合を85%まで高めることが想定されています。鉄道サービスや道路の建設と管理、ガス・電力供給が民間セクターに移行される予定です。
WTO加盟について
大統領は演説で「経済の自由化における主な優先課題の一つは近い将来WTOに加盟することです」と述べました。現在、多くのアナリストが、地政学的な対立が起きている状況下でWTOの役割と意義は低下していると発言していますが、いずれにせよウズベキスタンにとりWTOへの加入は引き続き重要であります。
国民の購買力が十分でないために国内市場の容力が限られていることを考えれば、まともな生活水準を達成するために必要な経済成長率を確保するには、民間部門の役割と重要性を高めることを目的とした経済の体系的な変革だけでは、明らかに不十分です。それを解決するにはあらゆる対策を講じて輸出ポテンシャルを上げることが必要です。
「2030年までのウズベキスタン戦略」では輸出の可能性を拡大し、2022年の輸出高190億ドルの2倍以上にあたる450億ドルに引き上げることを目指しています。そのために海外市場でも競争力のある付加価値の高い製品を製造する企業を支援する産業発展基金が設立される予定です。
輸出の可能性を拡大するという観点から、世界の多くの国へウズベキスタン製品を輸出する際の障壁を下げることになるWTOの加盟は重要な意味を持ちます。
社会支援
ミルジヨーエフ大統領は演説において「国民の生活向上を目指した政策により、2017年より国の貧困レベルは半分に低下し、2030年までに7%まで下げることを目標としています」と述べました。また、国連が発足した枠組み「雇用と社会的保護に関するグローバルアクセラレーター」を支持し、この枠組みの一環として2024年に国連の支援のもと、ウズベキスタンで国際会議「社会的保護:持続可能な発展への道」を開催することを提案しました。
近年のウズベキスタンの社会的保護の強化についていえば、2017年の時点では物質的に恵まれていない50万世帯が社会支援を受けていたのに対し、現在は230万世帯が支援を受けています。支援の資金規模は7倍に増加し、年間11兆スムに達しました。その結果、昨年100万人が貧困から脱し、今年第一四半期には21万人が脱しました。国民に手ごろな住居を提供するため、この6年間で約30万戸のマンションまたは戸建てが建設され、これはそれ以前までの10倍以上にあたります。
今後もこの分野で重要な各種取り組みが行われる予定です。例えば、社会的保護庁や各地域においてワンストップで社会サービスを行う社会保護センターが設立されます。また、各自治会には専門的なソーシャルワーカーが配置され、産休中の女性のためのオンライン業務のシステムも導入されます。それに加え、一定の税金が自治会の発展と整備のために充てられるようになります。また、きれいな飲料水をすべての居住地に供給する体制づくりも行われます。そして、100万単位の住居がさらに建設される予定です。
人という資本の拡大
ミルジヨーエフ大統領は演説の中で「人という資本の拡大とクリエイティブな若者世代の育成はウズベキスタンが目標とする戦略的課題の一つです」と述べ、近年ウズベキスタンでは教育制度の抜本的な改革が行われていると指摘しました。この6年間で幼児教育を受ける子供の数は21%から70%へ増加し、高等教育を受ける子供は9%から38%へ増加しました。大統領は「2030年までには全員が幼稚園に通い、2人に1人は大学で学べる環境を整備する」と述べました。
この点において、「2030年までのウズベキスタン戦略」の最優先事項が、各個人の可能性を実現するための適切な環境づくりであることは非常に明白であります。同戦略は、幼児教育のニーズを完全に満たし、2030年までにその普及率を100%に引き上げるため、早い時期からの子どもの発達、養育、教育を重視することを定めています。近年、学校教育の分野で50万人分の定員増が行われ、2030年までに「年間50万人分の定員増」プログラムを実施し、250万人分の学校の定員増に取り組んでいく予定です。
2030年まで重要な目標の一つとしてヘルスケアの分野での取り組みも行われます。ヘルスケアシステムのデジタル化を進め、医療保険システムが導入される予定です。国民には医療サービス一式が無料で保証され、C型肝炎の治療は全額国費で行われるようになります。
中央アジアについて
中央アジアはウズベキスタンの対外政策において重要事項の一つであります。国連総会においてミルジヨーエフ大統領は中央アジアにおける協力について「ウズベキスタンとその隣国は共に力を合わせることで国境や交通網、水資源の利用など多くの問題を解決することができました。地域内の貿易は2.5倍に増加し、共同事業の件数は5倍に増加しました」と述べました。
このような域内諸国の接近は、2017年にウズベキスタン大統領が提唱した中央アジア諸国首脳協議の開催というイニシアチブがきっかけとなっています。第1回目のサミットは2018年3月にカザフスタンの首都ヌルスルタンで、第2回目は2019年11月にタシケントで、第3回目は2021年8月にトルクメニスタンの観光地区「アヴァザ」で、第4回目は2022年7月にキルギスのチョルポンアテで開催されました。
第5回目のサミットはつい最近、9月14日にタジキスタンのドゥシャンベで開催されました。このサミットでは若者政策の共通分野に関する協定、中央アジアの陸上輸送の連結性に関する協定、ナショナルコーディネータ会議に関する規定、2022年から2025年の中央アジアにおける健康と福祉支援に係るロードマップなど地域協力の深化にとって非常に重要である文書が調印されました。
相互に合意された政策を進めることで、この地域の国々は外国人投資家や観光客にとってより魅力的なものとなっており、輸送回廊の信頼性があるという観点からもその魅力は輸送やロジスティクスが不安定な今日の状況において非常に重要なものとなっています。それを捉えて、ウズベキスタン大統領は「我々の地域は経済発展の中心となりつつあり、東西、南北を結ぶ交通と通信の架け橋となっています。そして、この地域への関心も高まっています」と述べました。そして、「国際社会の支援により、中央アジアは引き続き強化の道を歩むと確信しています」と述べました。
大統領は中央アジアの人口のほぼ半分は若者であり、若者に係る問題は特に重要であるとして、国連に中央アジアの若者の成長支援に係るワーキンググループを設置し、その枠組みで「中央アジア若者に係る議題2030」プログラムを打ち出すことは目的に適っていると述べました。
ウズベキスタン共和国大統領府
経済研究改革センター長
オビド ハキモフ