2022年 都道府県別ランキング・高齢者の自転車事故件数 65歳以上 ワースト3 東京都・大阪府・栃木県 電動アシスト自転車 ワースト3 大阪府・東京都・神奈川県
自転車の安全利用促進委員会は、夕暮れの時間帯が早まる秋冬に交通事故の発生が増えることから、2022年の全国都道府県別、高齢者の自転車事故発生件数について調査・分析しました。本調査は、公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)から提供を受けた2022年(1月~12月)の事故データを、当委員会メンバーの古倉 宗治(一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長/NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長)監修により調査・分析を行いました。
2022年の65歳以上の全国の自転車事故件数(一当+二当)は、約14,000件発生しています。警察庁の発表※によると、自転車乗用中死者数(一当+二当)の約6割が65歳以上の高齢者です。事故が重傷につながりやすい高齢者において、自転車の安全利用推進は喫緊の課題です。免許取得の際に交通ルールを学ぶ自動車と異なり、自転車は法律や交通ルール、安全な乗り方、事故の防ぎ方を学ぶ機会が多くありません。
自転車の安全利用促進委員会は、自転車利用および安全に関する専門家によって、安全・安心な自転車利用のためのルールやマナーに関するセミナーの実施、安全な自転車の選び方について啓発するほか、全国の教育関係者・学校と連携した通学指導セミナーの実施、意識・実態調査などを発信しています。
※警察庁「令和4年における交通事故の発生状況等について」
調査トピックス
(1) 2022年都道府県別 高齢者自転車事故件数ランキング
●65歳以上の1万人当たりの事故件数ワースト1位「東京都」、2位「大阪府」、3位「栃木県」
(2) 2022年都道府県別 高齢者電動アシスト自転車事故件数ランキング
●65歳以上の電動アシスト自転車事故件数ワースト1位「大阪府」、2位「東京都」、3位「神奈川県」
<監修> 自転車の安全利用促進委員会 古倉 宗治(こくら むねはる)
一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長
NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長
自転車の総合的体系的な利用促進策、放置問題の新たな発想による解決策やデータに基づく、自転車の事故の詳細分析及び安全利用促進方策等、自転車に係る総合交通政策並びに、脱生活習慣病や脱炭素のまちづくり、コンパクトシティ、サイクルツーリズム、通勤、買物等のエビデンスデータに基づいたまちづくりの視点から自転車の活用のあり方を幅広く研究している。これら自転車まちづくりを都市計画・都市環境分野で国、地方公共団体、民間に生かすべく活動している。博士(工学)。
(1) 2022年都道府県別 高齢者自転車事故件数ランキング
●65歳以上の1万人当たりの事故件数ワースト1位「東京都」、2位「大阪府」、3位「栃木県」
65歳以上の自転車事故を都道府県別1万人当たりの事故件数でみたところ、ワースト3は大都市部が中心でした。一方、栃木県は、中高生の通学自転車事故において加害者(一当)割合が高く、中学生・高校生の事故件数ランキングで上位に入っていることから通学自転車の事故も多いことが分かっています。全国では2023年4月に道路交通法が改正され、ヘルメットの着用努力義務化が施行されました。引き続き自転車の安全啓発は重要性を増しています。(末尾に全国都道府県掲載)
※高齢者人口…総務省統計局人口推計 都道府県、年齢(3区分)、男女別人口(令和4年)をもとに算出
(2) 2022年都道府県別 高齢者電動アシスト自転車事故件数ランキング
●65歳以上の電動アシスト自転車事故件数ワースト1位「大阪府」、2位「東京都」、3位「神奈川県」
自動車免許返納後の移動手段に電動アシスト自転車を推奨し、購入補助制度を設けている自治体もあります。高齢者にとって手軽で便利な移動手段の自転車ですが、大都市部を中心に事故が発生していることがわかりました。軽量化、乗りやすさ、扱いやすさなど進化している電動アシスト自転車ですが、走り出しのスピードが速くなりすぎないような注意が必要です。また、事故が重傷につながりやすい高齢者はヘルメットの着用を徹底し、自転車の交通ルールを今一度見直しましょう。(末尾に全国都道府県掲載)
2022年 高齢者の自転車事故調査・分析総評
<監修> 自転車の安全利用促進委員会 古倉 宗治
一般社団法人日本シェアサイクル協会 会長/NPO法人自転車政策・計画推進機構 理事長
高齢者の自転車利用は、健康寿命の延伸や外出時の貴重な移動手段として、高齢者の行動範囲の拡大などのため世界各地で推奨されています。わが国の10万人当たりの年齢層別の自転車乗用中の死傷者数をみても、65歳以上の層の方が、20歳以上のいずれの年齢層よりも、原則として少ない結果が出ています。
イギリスの2020年国家自転車戦略(GOV.UK「GearChange」)では、80歳以上の高齢者が利用できることを前提としたインフラの環境整備を重点にするなど世界の潮流となっています。しかし、高齢者の事故はいったん事故が起こると重傷につながりやすく、そのためルール遵守はもちろんのこと、死亡事故につながる頭部損傷を防ぐためにヘルメットの着用徹底が重要です。本年4月より道路交通法改正に伴い、すべての自転車利用者はヘルメット着用が努力義務となりました。近年では、軽量化、通気性、ファッション性の向上などによって、帽子のような多彩なデザインのヘルメットも多数発売されているので、自分にあったヘルメットを着用するようにしましょう。
また、自転車走行時で最も危険な低速時や坂道などでのふらつきを防ぐためには、電動アシスト自転車の利用もおすすめします。信号や一時停止後の再発進が高齢者にとって特に容易で、一時停止の励行や事故割合の2/3を占める交差点事故の防止につながります。電動アシスト自転車に乗るためのルールやマナー、コツを学ぶ機会さえあれば、これからますます進む超高齢社会と環境問題の両方に貢献する乗り物として大変役立つと考えられます。
大都市部を中心に便利な電動アシスト自転車の利用が盛んになり、高齢者の新たな移動手段の一つとして自転車が多くの方に役立つ乗り物として活用されており、大変素晴らしいと思います。しかし今回の調査から、事故を未然に防ぐための対策は、まだたくさんあることがわかりました。自動車免許のように法律やルール、マナーを学ぶ機会があまりない自転車ですが、自分と相手の大切な命を守るため、自転車も「車両」であることを忘れず、交差点や歩道等の危険な事故類型(出会い頭事故など)を知ることや、事故の人的要因として標識等の見落としや判断ミスを防止するため、ルールやマナーの遵守、ミスの発見・判断能力を磨くことが大切です。さらに自転車走行空間の整備、危険個所の周知徹底等、地域や社会全体で協力し合っていくことが重要になります。
●事故を防ぐための車両点検と安全性確認を必ず行いましょう。
自転車事故を防ぐための車両点検と安全性確認は、見落とされがちなポイントですが大変重要です。大きな事故の約1/3は製品自体にも原因があった(出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構「自転車による製品事故の防止について(注意喚起)」)とされるデータもあり、「自転車そのものの安全性」は重要です。購入時には、耐久性や強度などの安全基準をクリアした「BAAマーク」を目印にしましょう。久しぶりに自転車を利用し始めた場合など、ブレーキの効きが悪くなるほか、走行中にチェーンが外れやすくなるなど大変危険です。自分でできる点検を率先して行うとともに、半年に1回は自転車店での点検を受けましょう。
●電動アシスト自転車の正しい乗り方、自転車の性能比較テスト(動画)
坂道での発進のポイントなど、電動アシスト自転車の乗り方を動画で確認できます。
http://jitensha-anzen.com/movie.html
BAAマーク
BAAマークは、一般社団法人自転車協会が定める自転車安全基準に適合した自転車に貼られています。自転車安全基準には全部で約90項目の検査項目があり、ブレーキ制動性能、フレーム・駆動部の強度、ライトの光度、リフレクターの反射性能などの検査に合格する必要があります。
自転車の安全利用促進委員会
自転車の安全利用促進委員会とは、一般社団法人自転車協会の協力を受け、安全安心な自転車利用のための啓発活動を行う団体です。自転車の利用者の方々に快適な自転車生活を送って頂くため、購入時に知っておくべき自転車の選び方から購入後のメンテナンス、正しいルール・マナーなどの情報発信を行っています。また、活動の一環として教職員や学生を対象とした、自転車通学指導セミナーも全国で開催しています。
http://jitensha-anzen.com/