飛沫を吸引する空間飛沫除菌装置を開発 医療現場の知見を生かし、新型コロナウイルスの感染リスクを軽減
近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)放射線医学教室(放射線腫瘍学部門)教授 門前 一を中心とした研究チームと、フジデノロ株式会社(本社:愛知県小牧市)は、人と人が対面する空間を除菌する空間飛沫除菌装置「eLENA Lin(エレナリン)」を共同開発しました。新型コロナウイルス感染防止対策として、呼気や会話、咳・くしゃみで発生する飛沫を吸引し、ウイルスを捕集、不活化させる装置で、令和4年(2022年)3月28日(月)から販売を開始します。
なお本件は、近畿大学が全学を挙げて取り組んでいる「"オール近大"新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」の一環として実施したものです。
【本件のポイント】
●飛沫を吸引する空間飛沫除菌装置「eLENA Lin」を開発
●医療での作業環境測定の知識を生かし、医学物理の専門家が空気の流れを検証
●空間飛沫除菌装置内部の捕集フィルタ周囲環境を生物学的に検証
【本件の内容】
空間飛沫除菌装置「eLENA Lin(エレナリン)」は、拡大する新型コロナウイルス感染症に対して、換気が十分になされている場所ではクラスターの発生が少ないことに着目し、対面空間において空気を吸入してウイルスを捕集できれば感染拡大を緩和できるのではないかという仮説の下、開発されました。対面空間内において呼気や会話、咳・くしゃみで発生する飛沫を吸引し、ウイルスを捕集して紫外線LEDで不活性化させる機能を搭載しています。
暗室のクリーンルーム内で、人の口からの細かな飛沫を模した煙を放出し、吸引テストを行いました。その結果、空間飛沫除菌装置がある場所では、煙を90%程度低減できることを確認しました(図1)。霧吹きを用いて、大きな飛沫を模したミストを放出した吸引テストでも、ミストを90%程度低減できました。また、紫外線LEDにより、フィルターに捕集されたウイルスが5分間で99%程度不活化することを検証しました(図2)。これによって、装置から排出される空気が安全であることも示し、新型コロナウイルス感染症拡大対策としての有用性を確認しました。人と人が対面するホテルや飲食店、会議室など、さまざまな場所での活用が期待されます。
【商品概要】
商品名 :空間飛沫除菌装置「eLENA Lin(エレナリン)」
販売開始:令和4年(2022年)3月28日(月)
販売方法:フジデノロ株式会社へ電話で問合せ
価 格:90,000円(税別)
サイズ :345mm×228mm×115mm
重 量:1.84kg
用 途:対面する空間の除菌、人から人への飛沫感染予防
お問合せ:フジデノロ株式会社 開発営業部 TEL(0568)73-7575
【開発者コメント】
<物理学的検証担当>
近畿大学医学部放射線医学教室
教授 門前 一(もんぜん はじめ)
学 位:博士(保健衛生学)
専門分野:医学物理、放射線防護
コロナ渦での食事の場面ではアクリル板が邪魔で会話しづらく、またマスクを付けての食事は難しい状況です。コロナで意気消沈されている方々の一助となるような方策はないのか?と門外漢ながら思いを馳せました。私は作業環境測定士の国家資格を持っており、有毒なガスや揮発した放射線の挙動や気流などのデータから汚染状況を把握、またそれらを捕集するノウハウを持っています。その知識と医学的見地、そして産学連携が融合して空間飛沫除菌装置「eLENA Lin」の開発・販売に至りました。特に難渋したことは、ウイルスを捕集するフィルタの開発・選択でした。可搬型装置にて、空気を吸引する力・量を担保したまま、吸引音を小さくする工夫が必要だったことです。本機がさまざまな場面で活躍し、日常、そして人々の笑顔が取り戻せる一助となることを切に願っております。
<生物学的検証担当>
近畿大学医学部教育センター
准教授 藤田 貢(ふじた みつぐ)
学 位:博士(医学)
専門分野:腫瘍免疫学、感染症学
ポストコロナ時代においては、病原性ウイルス存在下であっても安全に暮らせることへの需要が高まっています。特に新型コロナウイルスはたとえ飛沫が少量であっても感染しうるものであるため、ウイルス粒子を含む空気の制御は根本的な問題解決方法のひとつと言えます。周囲のヒアリングからも、本開発品のような高い抗ウイルス効果をもつ空気清浄機に対する潜在的需要が示されていた折、今回門前一先生率いる当該プロジェクト参画の機会を得ました。このプロジェクトを通じ、現代の量産可能な技術で実際にどの程度抗ウイルス効果を誘導可能であるのかを自身の目で確認できたのは大変僥倖でした。
【"オール近大"新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクトについて】
近畿大学は、令和2年(2020年)5月から「"オール近大"新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」を始動させました。これは、世界で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症について、医学から芸術までの研究分野を網羅する総合大学と附属学校等の力を結集し、全教職員から関連研究や支援活動の企画提案を募って実施する全学横断プロジェクトです。これまでに126件の企画提案が採択され、約2億3千万円の研究費をかけて実施しています。
【フジデノロ株式会社概要】
所在地 :愛知県小牧市多気南町361番地1
代表者 :代表取締役社長 渡邊 樹志
設 立:昭和45年(1970年)6月10日
事業内容:医療機器の製造販売およびヘルスケア製品の製造販売、精密プラスチック製品製造
従業員数:495人 ※ 令和3年(2021年)4月1日時点
資本金 :9,800万円
ホームページ:https://www.fujidenolo.co.jp/
【関連リンク】
医学部 近畿大学病院 教授 門前 一(モンゼン ハジメ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1301-monzen-hajime.html
医学部 医学科 准教授 藤田 貢(フジタ ミツグ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/658-fujita-mitsugu.html