「受けさせて終わり」になっていませんか?50人未満の職場で考えたいストレスチェックと集団分析

個人のストレス状態だけでなく、職場環境を考える材料へ。鈴木 枝里子医師が解説

2026-10-29 18:08
医療法人社団筑三会

ストレスチェックを実施したものの、

「結果を本人に渡して終わっている」

「会社として結果をどう活用すればいいのか分からない」

ということはないでしょうか。

ストレスチェック制度では、労働者個人のストレス状態を把握するだけでなく、一定の集団ごとに結果を集計・分析し、職場環境を考える材料として活用することもできます。

厚生労働省は、集団ごとの集計・分析および、その結果に基づく職場環境改善を事業者の努力義務としています。

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2027年4月から集団分析に関する省令が施行

2026年6月、厚生労働省はストレスチェックの集団分析について、労働安全衛生規則を改正しました。

改正省令は2027年4月1日から施行され、集団分析について、特定の個人を識別することができない方法で実施することが規定されています。

これは、特に従業員数が少ない職場にとって重要なポイントです。

少人数の集団分析では「個人が分からないこと」が重要

例えば、5人の部署で集団分析を行った場合、結果から個人を推測できてしまう可能性があります。

そのため、厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでは、10人未満の集団について、プライバシー保護の観点から原則として集団分析を実施しないことが示されています。

従業員数が少ない企業ほど、

「分析できるか」

だけでなく、

「個人が特定されないか」

という視点が重要になります。

集団分析で何が分かる?

集団分析は、個人を評価するためのものではありません。

職場単位でストレスの傾向を把握し、職場環境について考えるための材料として活用するものです。

厚生労働省は、集団分析の結果を、部署の業務内容や労働時間など他の情報と合わせて評価し、職場環境改善につなげることを示しています。

例えば、

業務量が偏っていないか

仕事の進め方に負担が生じていないか

周囲から十分な支援を受けられているか

職場内のコミュニケーションについて課題がないか

などを考えるきっかけになります。

ただし、ストレスチェックの結果だけから原因を断定することはできません。

業務内容や勤務時間、職場の状況など、複数の情報を合わせて考えることが必要です。

ハラスメントなどの問題を「個人の問題」にしない

厚生労働省の令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害の支給決定に関係した出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が222件で最多でした。

また、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」と「セクシュアルハラスメントを受けた」がそれぞれ127件でした。

もちろん、ストレスチェックだけでハラスメントの有無を判定することはできません。

しかし、職場のストレス状態を確認し、必要に応じて職場環境について考えるきっかけの一つとして活用することはできます。

2028年4月からは50人未満にも義務化

これまで50人未満の事業場では努力義務だったストレスチェックですが、2025年5月の改正労働安全衛生法により、2028年4月1日から義務化されます。

厚生労働省はすでに50人未満の事業場向けの実施マニュアルを公開しており、プライバシー保護や実施体制などについて具体的な考え方を示しています。

「実施→確認→職場環境を考える」という流れを

ストレスチェックを実施する際には、

① 個人が自分のストレス状態を知る

② 必要な場合は相談・面接指導につなげる

③ 集団分析が可能な場合は、職場全体の傾向を確認する

④ 業務内容や労働時間などの情報と合わせて職場環境を考える

という流れで捉えることができます。

一方で、少人数の職場では個人が特定されないよう、集団分析の方法や結果の共有範囲に十分配慮する必要があります。

ストレスチェックは「実施すること」自体が目的ではありません。

働く人のこころの健康状態を考え、必要な支援につなげ、職場環境を見直すための情報として、適切に活用することが大切です。

鈴木 枝里子医師は、精神科医療の視点から、働く人のメンタルヘルスについて考える情報を発信しています。


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【監修】
鈴木 枝里子医師
医療法人社団 ユーアイエメリー会 理事長
https://www.mentalcare.or.jp/
医療法人大壮会 久喜すずのき病院 理事
https://suzunoki.net/
東京女子医科大学 神経精神科 助教
うつ病、不安障害、発達障害、認知症まで、幅広い心の不調に寄り添う精神科医。埼玉県指定「認知症疾患医療センター」で地域の中核を担い、丁寧な診察と最新のエビデンスに基づく治療で、「もう少し楽に生きられる毎日」を一緒に目指している。医学博士、精神保健指定医、日本専門医機構認定 精神科専門医・指導医、日本精神神経学会 認知症診療医、認定産業医。