世界の胸腺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の胸腺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Thymus Cancer Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、胸腺癌・胸腺上皮性腫瘍(Thymus Cancer / Thymic Epithelial Tumors:TETs)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。胸腺に発生する腫瘍は極めてまれで、主として胸腺腫(thymoma)と胸腺癌(thymic carcinoma)に分類される。資料では胸腺上皮性腫瘍全体の年齢標準化発症率が年間人口10万人あたり約0.23~0.30例、すなわち人口100万人あたり約2~3例とされており、臨床経験や大規模試験を蓄積しにくい希少癌である。調査会社は、早期診断、病理学的分類、個別化治療、免疫療法・分子標的治療などの進歩が今後の治療成績改善に重要になるとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
胸腺は前縦隔に位置する免疫系臓器であり、胸腺癌・胸腺腫はいずれも胸腺由来の上皮性腫瘍である。ただし両者は同一の病態ではなく、一般に胸腺腫と胸腺癌では組織学的特徴、浸潤性、転移能、治療反応、予後が異なる。
今回の資料では「Thymus cancer」という広い名称の中に胸腺腫と胸腺癌がまとめて扱われているため、疫学数値を読む際には「胸腺上皮性腫瘍全体」「胸腺腫」「胸腺癌」を区別する必要がある。
胸腺腫は比較的緩徐な経過をとる場合がある一方、局所浸潤や再発を生じることもある。胸腺癌はより悪性度が高く、浸潤・転移性を示すことが多いとされる。
臨床症状は腫瘍の大きさや位置によって異なり、無症候のまま偶然画像検査で発見される患者もいる。一方、腫瘍が周囲構造を圧迫すると胸痛、咳、呼吸困難などが出現する。
前縦隔には心臓、大血管、気道など重要構造が集中しているため、進行した腫瘍では局所圧迫症状が臨床的に問題となる。
胸腺腫では自己免疫疾患との関連も重要であり、資料では特に重症筋無力症(myasthenia gravis)が代表的な併存疾患として挙げられている。
したがって、神経筋症状などを契機に精査され、胸腺腫が発見される場合もあり得る。
診断では画像検査によって前縦隔腫瘍を確認し、その後、病理組織学的評価によって腫瘍タイプを確定することが重要となる。
胸腺腫と胸腺癌では治療戦略や予後が異なるため、単に「胸腺に腫瘤がある」と診断するだけでは不十分で、病理学的分類と病期評価が必要になる。
疫学的には、胸腺上皮性腫瘍全体の年齢標準化発症率が年間0.23~0.30/10万人とされる。
人口100万人換算では約2.3~3.0例となり、冒頭の「年間2~3例/100万人」という記載とほぼ一致する。
したがって、胸腺腫瘍は年間発症率が人口100万人あたり数例程度の非常にまれな癌と理解できる。
一部地域では発症率が緩やかに増加しているともされる。
ただし、これが真の発症リスク上昇を意味するとは限らない。CTなどの画像検査利用増加によって、従来発見されなかった小型・無症候の前縦隔腫瘍が見つかるようになった可能性もある。
したがって、2026~2035年に診断患者数が増加するとしても、診断能力向上による症例捕捉率上昇を考慮する必要がある。
年齢では、Zhouらの報告として診断のピークが50~70歳、世界的な平均年齢が約59~61歳とされる。
このため、胸腺癌・胸腺腫は主として中年から高齢者に多い疾患である。
胸腺癌についても診断年齢中央値がおおむね54~65歳とされ、胸腺腫と同様に成人中高年層が主要な患者プールとなる。
したがって、2026~2035年の高齢化は患者数を押し上げる可能性がある。
一方、今回の資料では小児や若年成人における具体的な発症率は示されていないため、若年層の疾病負担を定量的に評価することはできない。
性別では、全体として男女ほぼ均衡、または男性にわずかに多いとされる。
一部コホートでは胸腺腫、胸腺癌とも軽度の男性優位を示すとされるが、大きな性差ではない。
したがって、胸腺癌を男性特有の癌とみなすべきではなく、男女とも発症し得る。
また、性差は病型や対象集団によって変動するため、全世界で固定した男性対女性比があるわけではない。
資料ではRufiniらによる胸腺癌の発症率が0.15~0.29/10万人とされ、胸腺腫より有意にまれと説明されている。
しかし、この数値を人口100万人換算すると約1.5~2.9例/100万人となる。
一方、胸腺上皮性腫瘍全体が2~3例/100万人とされているため、胸腺癌だけで1.5~2.9例/100万人という値は、「胸腺癌は胸腺腫よりかなりまれ」という説明と数値上やや整合しにくい。
さらにドイツでは胸腺癌が0.42/100万人とされており、上記1.5~2.9/100万人よりかなり低い。
したがって、Rufiniらの0.15~0.29/10万人については、対象疾患の定義、登録集団、地域、期間、あるいは単位表記の違いがある可能性を考慮すべきである。
この点は今回の資料における重要な内部不整合の一つであり、胸腺癌の世界発症率として単純に採用するのは慎重である。
むしろ、「胸腺上皮性腫瘍全体が2~3/100万人程度で、胸腺癌はその中でもさらに少ない」という定性的理解の方が、国別データとは整合しやすい。
米国では、American Cancer Societyの情報として胸腺腫瘍が年間約1.3/100万人発生し、年間新規患者数は約400例とされる。
この米国1.3/100万人は、世界推定2~3/100万人より低い。
ただし、この差をそのまま「米国では胸腺癌が世界平均の半分」と解釈するべきではない。
世界値と米国値で胸腺腫のみを含むのか、胸腺癌を含むTET全体なのか、登録期間、病理分類、年齢標準化の有無などが異なる可能性があるためである。
また、米国の約400例という値も「胸腺癌だけ」ではなく「thymic tumors」と表現されており、胸腺腫を含む可能性が高い。
したがって、米国で胸腺癌が年間400例という意味ではない。
ドイツでは、Gerberらの報告として胸腺腫発症率が約2.64/100万人、胸腺癌が0.42/100万人とされる。
両者を単純合算すると約3.06/100万人となり、世界の胸腺上皮性腫瘍全体2~3/100万人という規模に概ね近い。
このドイツデータでは、胸腺腫が胸腺癌より約6倍程度多く、資料の「胸腺癌は胸腺腫よりまれ」という説明と整合する。
したがって、病型別構成を理解するうえでは、ドイツの2.64対0.42/100万人という数値の方が説明として分かりやすい。
ただし、他国にもこの比率をそのまま適用できるとは限らない。
フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドについては、今回の抜粋では具体的な胸腺腫・胸腺癌発症率や患者数が示されていない。
そのため、8主要市場を対象とするレポートではあるものの、この資料から定量的な国際比較を行えるのは主として米国とドイツである。
胸腺腫瘍の疫学では、患者数が極めて少ないため、一国の症例数だけでは安定した推計が難しいという問題がある。
人口100万人あたり1~3例程度であれば、単一施設では年間症例数が非常に少なく、治療経験や臨床研究データが集まりにくい。
このため、国際レジストリや多施設共同研究の重要性が高い疾患領域である。
また、病理分類の見直しによって、過去に胸腺腫とされた症例が別病型に再分類される可能性もあり、長期間の疫学比較には診断基準の変化を考慮する必要がある。
治療は腫瘍の病期、組織型、切除可能性によって決定される。
限局性で完全切除可能な胸腺腫瘍では、外科的切除が治療の中心となる。
完全切除できるかどうかは長期予後にとって非常に重要であり、周囲臓器への浸潤が少ない早期段階で発見できれば根治を目指せる可能性が高まる。
そのため、早期診断と正確な病期評価が重要となる。
術後には、病期や切除断端、組織学的リスクなどに応じて放射線治療が検討される。
資料では、局所再発リスクを低下させる目的で手術後に放射線療法を追加することがあるとされる。
一方、進行・転移例では、手術のみでの根治が難しくなり、化学療法や分子標的治療などの全身療法が必要になる。
ただし、今回の資料では具体的な化学療法レジメンや分子標的薬の名称は示されていない。
免疫療法についても、難治・再発例を中心に新しい選択肢として研究されているとされる。
これは今後の胸腺癌治療における重要な研究領域だが、今回の抜粋では具体的な薬剤、奏効率、どの病型でどの程度確立しているかは示されていない。
したがって、「免疫療法が胸腺癌の標準治療として広く確立している」と解釈するのは不適切である。
また、胸腺腫は自己免疫疾患との関連があるため、免疫系を強く刺激する治療については、患者背景を慎重に評価する必要があるが、今回の資料では具体的な安全性データまでは示されていない。
精密医療については、腫瘍の病理学的・分子的特徴に基づいて治療を選択する方向性が強調されている。
希少癌では、全患者に同じ治療を適用するより、特定の分子異常や免疫学的特徴を持つ患者を選別して標的薬を使用する方が、新規治療開発上重要になる可能性がある。
ただし、今回の抜粋では具体的な分子バイオマーカーは提示されていないため、精密医療は将来的な治療開発の方向性として理解する必要がある。
長期フォローアップも重要である。
胸腺腫は比較的緩徐に進行する症例でも、治療後かなり時間が経過してから再発する可能性があるため、手術後に治癒と判断された患者でも継続的な画像評価が必要となる。
したがって、胸腺腫瘍の医療負担は初回治療だけでなく、長期監視まで含む。
市場の観点では、胸腺癌・胸腺腫は患者数が非常に少ない希少癌である一方、専門性の高い診断、手術、放射線治療、全身療法、長期モニタリングが必要になる。
患者数の少なさは、医薬品開発において特に臨床試験の患者登録を難しくする。
そのため、2026~2035年の治療開発では、多施設共同試験、国際共同研究、バイオマーカーに基づく患者選択などが重要になる可能性がある。
2026~2035年の診断患者数を押し上げる第一の要因は、画像診断技術と利用頻度の向上である。
胸部CTなどが他疾患の精査や健康診断目的で実施される機会が増えれば、無症候性の前縦隔腫瘍が偶然発見される可能性が高まる。
第二に、病理診断と分類精度の向上がある。
第三に、高齢化によって50~70歳という主要発症年齢層の人口が増加する可能性がある。
第四に、治療成績向上によって患者が長く生存すれば、ある時点でフォロー中の有病患者数が増加する可能性がある。
したがって、今後胸腺癌・胸腺腫の有病患者数が増加しても、それが必ずしも真の発症率上昇だけを意味するわけではない。
より多くの早期症例が診断され、より長期間生存・フォローされるようになることも有病患者数増加の要因となる。
全体として本レポートは、胸腺癌を含む胸腺上皮性腫瘍を「前縦隔の胸腺から発生し、胸腺腫と胸腺癌を主な病型とし、病理型によって悪性度・進行性が大きく異なる極めてまれな固形腫瘍」と位置づけている。
胸腺上皮性腫瘍全体の世界発症率は年間約0.23~0.30/10万人、すなわち約2~3/100万人とされる。診断年齢は主として50~70歳、平均約59~61歳で、性別は概ね均衡または軽度男性優位とされる。
米国では胸腺腫瘍が年間約1.3/100万人、約400新規例とされる。一方、ドイツでは胸腺腫2.64/100万人、胸腺癌0.42/100万人とされ、胸腺腫の方が明らかに多い。
一方で、資料中の胸腺癌発症率0.15~0.29/10万人、すなわち1.5~2.9/100万人という数値は、胸腺上皮性腫瘍全体2~3/100万人やドイツの胸腺癌0.42/100万人と比べると整合性に疑問が残る。対象定義、地域、単位などが異なる可能性があり、この数値を胸腺癌の普遍的世界発症率として用いる際には注意が必要である。
また、「thymus cancer」という名称の下に胸腺腫と胸腺癌が一括されているが、両者は同一の悪性度・予後を持つ病態ではないため、市場・疫学評価でも可能な限り病型別に分ける必要がある。
治療では、切除可能な限局例に外科手術を行い、必要に応じて術後放射線療法を追加する。進行・転移例では化学療法や分子標的治療を用い、再発・難治例では免疫療法を含む新規治療の研究が進められている。長期再発リスクがあるため、治療後の継続モニタリングも重要である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、高齢化、CTなどによる偶発的早期発見、病理診断精度向上、治療による生存期間延長が患者プールを押し上げる可能性がある。一方、早期段階で完全切除できる患者が増えれば、進行・再発症例の疾病負担を減らせる可能性がある。
したがって、今後の胸腺癌・胸腺腫管理における中心的課題は、希少性ゆえに一括して扱うのではなく、胸腺腫と胸腺癌を正確に病理分類し、病期と切除可能性を早期に評価すること、限局例では根治切除を目指し、進行例では化学療法・分子標的治療・免疫療法などを個別化して選択すること、そして長期再発を念頭に継続的にフォローすることである。2026~2035年は、年間人口100万人あたり数例という極めて小さな患者集団に対し、国際共同研究と精密医療を活用して臨床エビデンス不足を補い、より効果的な個別化治療を確立できるかが、臨床・疫学・研究開発・市場の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
胸腺がん市場概要(8主要市場)
3.1 胸腺がん市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 胸腺がん市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
胸腺がん疫学概要(8主要市場)
4.1 胸腺がん疫学状況(2019年~2025年)
4.2 胸腺がん疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 胸腺がんの種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 胸腺がんの診断済み有病患者数
7.4 種類別の胸腺がん患者数
7.5 性別別の胸腺がん患者数
7.6 年齢別の胸腺がん患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における胸腺がんの診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の胸腺がん患者数
8.4 米国における性別別の胸腺がん患者数
8.5 米国における年齢別の胸腺がん患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における胸腺がんの診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の胸腺がん患者数
9.4 英国における性別別の胸腺がん患者数
9.5 英国における年齢別の胸腺がん患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける胸腺がんの診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の胸腺がん患者数
10.4 ドイツにおける性別別の胸腺がん患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の胸腺がん患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける胸腺がんの診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の胸腺がん患者数
11.4 フランスにおける性別別の胸腺がん患者数
11.5 フランスにおける年齢別の胸腺がん患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける胸腺がんの診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の胸腺がん患者数
12.4 イタリアにおける性別別の胸腺がん患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の胸腺がん患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける胸腺がんの診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の胸腺がん患者数
13.4 スペインにおける性別別の胸腺がん患者数
13.5 スペインにおける年齢別の胸腺がん患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における胸腺がんの診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の胸腺がん患者数
14.4 日本における性別別の胸腺がん患者数
14.5 日本における年齢別の胸腺がん患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける胸腺がんの診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の胸腺がん患者数
15.4 インドにおける性別別の胸腺がん患者数
15.5 インドにおける年齢別の胸腺がん患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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