6月10日は「こどもの目の日」って知っていますか?

6月10日は、「こどもの目の日」です。
あまり知られていないかもしれませんが、これはとても大切な記念日です。
日本眼科啓発会議が、子どもたちの視力の成長を見守り、目の健康を守るために制定しました。
込められた願いは、
「はぐくもう 6歳で視力1.0」
というものです。
この言葉には、眼科医として非常に大切だと思う考え方が詰まっています。
それは、
子どもの視力は、ただ自然に完成するものではなく、育てるものだ
という考え方です。
健康や幸せな人生には「設計」が必要です
私は日々、眼科医として多くの患者さんを診ています。
その中で強く感じるのは、健康というものは、ただ願っていれば守られるものではないということです。
もちろん、すべてを思い通りにできるわけではありません。
病気には避けられないものもあります。
しかし一方で、
早く気づけば守れるもの。
早く介入すれば変えられるもの。
適切な時期に手をかければ、その後の人生が大きく変わるもの。
そういう領域も確かにあります。
だから私は、健康や幸せな人生には、ある程度の設計が必要だと思っています。
これは大人だけの話ではありません。
むしろ、子どもにこそ当てはまります。
子育てとは、心を育てることでもあり、体を育てることでもあります。
食事、睡眠、運動、歯のケア、予防接種。
どれも、子どもの未来を守るために、大人が手をかけて設計していくものです。
そして実は、
目の発達も、その一つです。
視力も「育つ」ものです
生まれたばかりの赤ちゃんは、大人のようには見えていません。
そこから、目で世界を見て、脳がその情報を学習し、少しずつ「見る力」が育っていきます。
つまり視力とは、単なる目の性能ではありません。
目と脳が一緒に発達して獲得していく、身体機能の一つです。
そして、この発達には大切な時期があります。
この時期に、強い遠視や乱視、斜視などがあると、脳がうまく視覚を学習できないことがあります。
その結果として起こるのが「弱視」です。
弱視についての細かい説明は、今回の記事では深入りしません。
ただ、一つだけ知っておいてほしいことがあります。
弱視には、治療の旬があります。
あとから気づいても、同じようには取り戻せない場合があります。
だからこそ、子どもの目は「様子を見る」だけではなく、必要な時期にきちんと確認し、必要があれば介入することが大切です。
3歳半健診が変わった意味
近年、3歳半健診で屈折検査機器が導入される自治体が増えました。
これは、子どもの目を守るうえで非常に大きな前進です。
従来の視力検査だけでは、小さな子どもの遠視や乱視、左右差などを十分に拾い上げることが難しい場合がありました。
しかし、屈折検査機器を使うことで、弱視につながるリスクをより早く見つけやすくなりました。
令和4年度から、自治体が屈折検査機器を購入する際に国の補助がつく仕組みができました。
これは、単なる医療機器の購入補助ではありません。
私はこれを、
子どもの未来に対する社会的投資
だと思っています。
子どもたちが、将来きちんと見える目を持って育つこと。
学び、遊び、人と関わり、自分の世界を広げていくこと。
その土台を、社会全体で守ろうとした政策です。
これは本当に大きな功績だと思います。
「かわいそう」より、「未来を守る」
小さな子どもに眼鏡が必要だと言われると、保護者の方は戸惑うことがあります。
「こんなに小さいのに眼鏡なんてかわいそう」
「本当に必要なのだろうか」
「もう少し様子を見てもいいのでは」
そう感じる気持ちは自然です。
しかし、眼鏡は単に見やすくするための道具ではありません。
子どもの場合、眼鏡は
視力を育てるための治療道具
になることがあります。
小児期の目は、まだ発達の途中です。
その時期に正しいピントで世界を見る経験を積むことで、視機能が育っていきます。
つまり、子どもの眼鏡は「不自由の象徴」ではありません。
むしろ、未来の見え方を守るための支援です。
未来へ投資できる社会へ
6月10日「こどもの目の日」は、単なる啓発の日ではありません。
私はこの日を、
子どもの未来をどう設計するかを考える日
だと思っています。
病気になってから治す医療も大切です。
しかしこれからの社会には、病気や障害が深刻になる前に、早く気づき、早く支え、未来を守る医療がもっと必要です。
子どもの目は、その象徴的な領域です。
見えることは、学ぶことにつながります。
学ぶことは、可能性を広げます。
可能性が広がることは、その子の人生そのものに関わります。
だから、子どもの目を守ることは、単なる視力の問題ではありません。
それは、
子どもの未来を守ること
です。
そして、未来へ投資できる社会は、きっと強い社会です。
6月10日「こどもの目の日」。
この機会に、ぜひ一度、お子さんの目について考えてみてください。
乱視や弱視について、より具体的な解説はこちらに書いています。

医療法人社団久視会 いわみ眼科
理事長:岩見 久司(医学博士・日本眼科学会認定 眼科専門医)
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