【名城大学】理工同窓会総会でノーベル賞受賞者の天野浩特別栄誉教授が講演

学校法人 名城大学
2025-06-20 18:00
講演した天野特別栄誉教授

講演した天野特別栄誉教授

理工同窓会総会記念講演会が6月15日、天白キャンパス名城ホールで開催され、青色LEDの発明で赤﨑勇特別栄誉教授と共に2014年ノーベル物理賞を受賞した名古屋大学特別教授で、本学の特別栄誉教授でもある天野浩教授が講演しました。
講演タイトルは「大学の研究の社会実装に一番必要なこと」で、同窓会員や在学生、一般の約200人が聴講しました。

天野教授は1992年に恩師の赤﨑教授と共に本学に着任。講師、助教授を経て2002年から教授となり、2010年に名古屋大学に移るまで18年間本学で教鞭を執りました。「名城大学特別栄誉教授という称号を頂いておきながら、なかなかお伝いできる機会がなく、こうしてお話しさせていただくことができ光栄です」と講演がはじまりました。

「原料を流し忘れてしまったと思ったほど、今まで見たこともないきれいな結晶」

青色LEDの省エネ効果を提示

青色LEDの省エネ効果を提示

会場の様子

会場の様子

ノーベル賞を受賞した青色LEDについては、2017年から2035年の18年間で約130兆円の省エネ効果の試算を紹介し、ここに至るまでの青色LEDの長い歴史として「スタートは1968年にグリマイ先生とモネマー先生からはじまり、1971年にパンコック先生がMIS型の青色LEDを最初に作られた。しかし効率は低いものだった」と説明。その後、青色LEDの開発ブームが起こり、世界中の研究者や企業が開発に乗り出したという。「赤﨑先生は1981年のため、実は後発だった」と明かしました。

青色LEDの開発には3つの要素が必要で、「きれいなGaN(窒化ガリウム)結晶」「P型GaN」「発光層」で、まずはきれいな結晶を作ることから研究を開始。しかし、資金難で企業から素材や中古の機器の提供を受け、実験装置も自作したといいます。「学部4年から修士の2年間、計3年間、正月以外は実験を続けて1,500回以上やりました。のめり込んで楽しくやりましたが、結果は得られませんでした」。ところが、修士課程が間もなく終える2月下旬、博士課程に進むことを決めていた天野教授は「博士課程では3本の論文を書かなければならいと焦っていた」と当時の心境を話し、温度が上がらない炉を調整せず、そのまま低温で実験したところ、「原料を流し忘れてしまったと思ったほど、今まで見たこともないきれいな結晶ができた。感動した」と振り返りました。

「社会実装には最後まで諦めないことが大切」

青色LEDだけが黄色の蛍光体を通して白色を作れることを紹介

青色LEDだけが黄色の蛍光体を通して白色を作れることを紹介

きれいな結晶ができ、外部資金や豊田合成株式会社との共同研究も始まり、「P型GaN」に取り組みましたが、これも困難を極めました。「当時の教科書にもP型はできないと書いてあり、これが常識」。年配の研究者からもP型はできないから、古いMIS型で論文を書いた方よいとアドバイスもあったそうですが、「古いMIS型LEDではモチベーションが上がらず、本当にストレスだった」と言います。博士論文を3本書ききれず、単位取得満期退学となった天野教授ですが、赤﨑先生の配慮で助手として研究を続けられ、使用する材料を変えることで「P型GaN」を実現。「発光層」も「できる訳がない」という周囲の意見があった中、原料を送り込むキャリアガスに原因があることが分かり、それを変えることで実現させました。

天野教授は「やっぱり自分の信念に従わないといけない。もう少しはっきり言うと、年寄りの言うことは聞いてはいけない」と述べ、「社会実装に一番大切なことは最後まで諦めないこと。当たり前ですけど、そう思っています」と締めくくりました。

質問する聴講学生

質問する聴講学生

天野教授と同じく赤﨑研究室門下生の本学理工学部の竹内哲也教授も質問

天野教授と同じく赤﨑研究室門下生の本学理工学部の竹内哲也教授も質問