「筋トレはストレッチングの代わりになるのか?」 筋肉を"柔らかく"・"強く"・"大きく"する一石三鳥の新たな筋トレ法

2026-07-16 10:00
同志社大学

【本研究のポイント】

・実践現場では、筋肉を柔らかくする方法としてストレッチングが広く用いられてきましたが、近年では筋力トレーニングでも筋肉が柔らかくなる可能性が示されています。

・本研究では、反動をつけずに筋肉を伸ばす「静的ストレッチング」と、筋肉が大きくかつ長時間伸ばされながら力を発揮する筋力トレーニング(筋トレッチングと命名)が、筋肉の硬さなどに及ぼす影響を比較しました。

・その結果、どちらの方法でもハムストリングスの一部の筋肉の硬さが同じ程度に低下し、筋トレッチングでは静的ストレッチングよりも筋力や筋肉のサイズが大きく増加しました。

・本研究の成果は、筋肉を「柔らかく・強く・大きく」する一石三鳥の新たな運動方法を提示し、"筋肉を柔らかくするためにはストレッチング"という実践現場での一部の理解を変えうるものです。

【概要】

本研究の知見は、筋肉が大きくかつ長時間伸ばされながら力を発揮する筋力トレーニング("筋トレッチング"と命名)が、反動をつけずに筋肉を伸ばす"静的ストレッチング"と同程度に筋肉を柔らかくすることを明らかにした初の介入研究です。これまで実践現場では、筋肉を柔らかくする代表的な方法として静的ストレッチングが行われてきました。このような長年の慣習に対して、本研究は、「筋肉を柔らかくするためにストレッチングを行う」という実践現場での一部の理解を広げ、筋肉を"柔らかく"しながら、同時に"強く"・"大きく"する新たな運動方法を提案するものです。

本研究は、早稲田大学スポーツ科学学術院 講師 川間 羅聖(研究当時 同志社大学 研究開発推進機構 特別任用助教)、西九州大学リハビリテーション学部 教授 中村 雅俊、同志社大学スポーツ健康科学部 教授 若原 卓らの研究グループによって実施されました。

【背景】

スポーツやリハビリテーションの現場では、筋肉を柔らかくするための代表的な方法として"静的ストレッチング"が多くの人々に使用されてきました。一方、我々のこれまでの研究では、筋肉が大きくかつ長時間伸ばされながら力を発揮する"筋トレッチング"によって、大腿部後面のハムストリングスの一部の筋肉が慢性的に柔らかくなることを示しました。しかし、この"筋トレッチング"の効果が、従来から行われてきた静的ストレッチングと比べてどの程度筋肉を柔らかくするのかについては明らかになっていませんでした。そこで本研究では、"筋トレッチング"と静的ストレッチングを同じ期間、同じ実施時間で行い、ハムストリングス各筋の硬さ、関節可動域、筋力、筋の大きさにどのような長期的影響を与えるのかを検討しました。

【研究手法】

本研究では、11名の健康な若年男性を対象に、10週間、週3回の介入を実施しました。対象者の片脚には、筋肉を大きく且つ1回あたり長時間伸ばす筋力トレーニングを行わせ、反対脚には、膝を伸ばした状態での静的ストレッチングを行わせました。両条件では、1回あたりの介入時間が同じになるように設定しました。介入期間の前後には、超音波せん断波エラストグラフィを用いてハムストリングス各筋の硬さ(剛性率)を、MRIを用いて筋のサイズ(筋体積)を、筋力計を用いて膝関節屈曲の最大筋力(関節トルク)と関節の柔軟性(関節可動域)も評価しました。

【研究成果】

その結果、筋力トレーニングと静的ストレッチングのいずれにおいても、ハムストリングスのうち大腿二頭筋長頭および半膜様筋の硬さが慢性的に低下しました。一方、半腱様筋の硬さには有意な変化は認められませんでした。また、関節の柔軟性は両条件で同程度に増加しました。さらに、筋力トレーニングを行った脚では、最大筋力が増加し、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の筋サイズも大きく増加しました。これに対して、静的ストレッチングでは、一部の筋サイズには変化がみられたものの、最大筋力の増加は認められませんでした。

我々の知る限り本研究は、筋力トレーニングでも静的ストレッチングと同等に筋肉が柔らかくなることを明らかにした初の介入研究です。本研究の結果は、筋肉を大きく且つ1回あたり長時間伸ばす"筋トレッチング"を長期間実施することで、静的ストレッチングよりも大きく筋サイズや筋量を増加させながら、特定の筋肉における硬さを同等に減少させることができることを示しています。

【今後の期待】

これまで実践現場では、筋肉を柔らかくするためには"ストレッチング"を行い、筋力や筋サイズを高めるためには"筋力トレーニング"を行うというように、目的ごとに別々の運動を行う必要がありました。しかし、本研究の知見は、"筋トレッチング"がそれらを同時に達成できる、時間効率の高い新たな運動方法となる可能性を示すものです。また、"筋肉を柔らかくするためにはストレッチング"という実践現場での一部の理解を変えうるものであり、筋力トレーニングに新たな価値を提供します。

本研究の内容と主な結果

【論文情報】

掲載誌 : Journal of Applied Physiology

掲載日 : 2026年7月9日

論文タイトル : Similar adaptation in shear moduli of the biarticular hamstring muscles after eccentric-only training and static stretching

著者 : Raki Kawama, Yuki Okuda, Katsuki Takahashi, Masatoshi Nakamura, Taku Wakahara

論文情報: https://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/japplphysiol.00026.2026

【研究内容に関する問い合わせ】

 早稲田大学スポーツ科学学術院 講師 川間 羅聖
  Tel:090-7545-7389
  e-mail:rkawama156413@gmail.com

【報道担当】

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