【専門医が解説】「胃が痛いのはストレスのせい」は本当?胃潰瘍の本当の原因

2026-08-20 08:26
日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック

日々の診療において、「仕事が忙しくて…胃が痛いのはストレスのせいですよね?」とご相談に来られる患者様は非常に多いです。

「最近胃がキリキリ痛む」「食後に胃が重い」といった不調が続くと、「胃潰瘍 ストレス」の関連性を疑う方は少なくありません。インターネットで検索窓に「胃潰瘍 ストレス」と入力して原因を調べる方も多いでしょう。たしかに、現代社会において「胃潰瘍 ストレス」はセットで語られやすい言葉です。しかし、医学的な観点から言うと、「胃潰瘍 ストレス」だけで直接的に発症するケースはそれほど多くありません。「胃潰瘍 ストレス」によるものだと自己判断して放置すると、思わぬ重症化を招く危険性があります。本記事では、消化器の専門医が本当の原因や正しい対処法について詳しく解説します。

胃の粘膜が深く傷つく「胃潰瘍」とは?

胃潰瘍とは、胃酸から胃を守る機能が低下し、自らの胃酸によって胃の壁が深くえぐられるように傷ついてしまう病気のことです。

胃潰瘍が起こるメカニズムは以下の通りです。

状態のバランス メカニズムの解説 影響
攻撃因子(胃酸) 食べ物を溶かす強い酸が過剰に分泌される。 胃の壁を刺激・攻撃する
防御因子(粘液) 胃の粘膜を守るバリア機能が低下する。 胃が自分自身を守れなくなる
結果(潰瘍の形成) バランスが崩れ、粘膜の下まで深く傷が達する。 痛みや出血を引き起こす

胃酸と粘膜のバランスが崩れる理由

人間の体の中にある胃は、食べ物を消化するために強力な胃酸を出します。通常は粘液が胃を保護していますが、何らかの原因でこのバリアが崩れると、胃そのものが傷ついてしまいます。この状態が進行し、粘膜が深くえぐれた状態(潰瘍化)になることで、強い痛みなどの症状が現れます。

胃潰瘍の本当の原因|ストレス以外の2大要因

胃潰瘍の主な原因はストレスだけではなく、「ピロリ菌の感染」と「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用」の2つが大部分を占めます。

胃潰瘍を引き起こす代表的な原因は以下の通りです。

ヘリコバクター・ピロリ菌への感染(慢性的な炎症の原因)

鎮痛薬(NSAIDs)の長期服用(胃を守る機能の阻害)

自律神経の乱れ(胃酸分泌の過剰など、間接的な要因)

ピロリ菌の感染による胃粘膜の炎症

最も多い原因の一つが、ヘリコバクター・ピロリ(菌)への感染です。この菌が胃の粘膜に棲みつくと、慢性的な炎症を引き起こし、胃の防御機能を低下させます。その結果として胃潰瘍ができやすくなり、放置すると将来的な胃がんのリスクにも繋がる性質があります。

痛み止め等の薬による影響

もう一つの大きな原因が、NSAIDsと呼ばれる痛み止め(ロキソプロフェンやアスピリンなど)の薬です。これらは痛みを抑える一方で、胃粘膜を保護する成分の働きを弱めてしまうため、副作用として急性の胃潰瘍を引き起こす場合があります。

なぜ「ストレス」が胃に影響すると言われるのか

「ストレスだけで潰瘍になる」とは考えられていませんが、強い精神的ストレスは自律神経を乱し、胃酸の分泌を過剰にしたり、胃の血流を悪くしたりします。これが引き金となり、既存の胃炎が悪化して潰瘍へと進行する要因の一つになることは事実です。

放置は危険!注意すべきサインと症状

みぞおちの痛みだけでなく、悪化すると吐血や下血(黒い便)を伴うことがあり、緊急の処置が必要になる場合があります。

注意すべき胃潰瘍の症状と危険なサインは以下の通りです。

症状の程度 具体的なサイン・症状 疑われる状態
初期〜中期 食後のみぞおちの痛み、胃もたれ、胸やけ 胃潰瘍、胃炎
進行(危険) 吐血、真っ黒な便(タール便)が出る 消化管からの出血
重症・緊急 激しい腹痛、意識が遠のく(貧血) 胃穿孔(胃に穴が開く)

みぞおちの痛みや吐き気などの不調

代表的な症状として、食後や空腹時にみぞおち(お腹の上部)が痛むことが多く見られます。また、胃の働きが落ちることで、吐き気や食欲不振を感じる方も少なくありません。

吐血や体重減少が見られる場合は要注意

潰瘍が深くなり血管が破れると、血を吐いたり(吐血)、便に血が混ざって黒くなったりします。さらに、食事量が減ることで体重減少が見られる場合は、胃がんなど他の病気が隠れている可能性もあるため非常に危険です。

胃潰瘍が疑われる場合の検査と治療法

診断には胃カメラによる直接の観察が不可欠です。原因に応じた胃酸分泌抑制薬の内服や、ピロリ菌の除菌治療が基本となります。

病院で行う主な検査と治療の流れは以下の通りです。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)による確定診断

ピロリ菌検査(呼気や組織による確認)

胃酸分泌抑制薬(PPI等)の処方・服薬

ピロリ菌の除菌治療(抗生物質の内服)

胃カメラ(上部消化管内視鏡)による正確なチェック

症状だけでは他の病気と見分けがつかないため、正確な診断には胃カメラ(内視鏡)を用いた検査が必要です。当院ではフジフイルム社製の先進的な内視鏡システム等を用い、粘膜の状態や潰瘍の深さ、出血の有無を細部までチェックし、専門の医師が的確な診断を行います。

原因に合わせた薬物治療や治し方

治療(治し方)としては、胃酸を抑える薬による内科的処置が基本となります。もしピロリ菌が陽性であれば除菌治療を行い、痛み止めが原因であれば休薬や薬の変更等の対処(法)を検討します。自己判断で市販薬を飲み続けるのではなく、専門の科(消化器内科)で正しい診断を受けることが大切です。

胃潰瘍の再発を防ぐ生活習慣のポイント

薬物治療と並行して、胃に負担をかけない食生活や、禁煙などの生活習慣の見直しが再発予防に繋がります。

日常生活で気をつけるべきポイントは以下の通りです。

暴飲暴食を避け、消化に良い食事を心がける

香辛料、過度なアルコール、カフェインを控える

禁煙に取り組む(喫煙は胃の血流を悪化させるため)

十分な睡眠をとり、過度なストレスを溜めない

暴飲暴食や喫煙を控えるなどの予防策

胃潰瘍を防ぐための重要なポイントは、日々の生活習慣の見直しです。脂っこい食事や暴飲暴食は避け、就寝の2〜3時間前には食事を済ませるようにしましょう。また、喫煙は胃粘膜の血流を低下させ治癒を遅らせるため、禁煙することが強く推奨されます。

胃潰瘍についてよくある質問(FAQ)

胃潰瘍はストレスだけで起こりますか?

ストレスは胃の不調に影響しますが、胃潰瘍の主な原因はピロリ菌感染やNSAIDsの使用です。症状が続く場合は原因を確認することが大切です。

胃潰瘍は自然に治りますか?

小さな傷で症状が改善する場合もありますが、原因が残っていると再発することがあります。自己判断で放置せず、必要に応じて検査を受けましょう。

胃潰瘍は胃がんになりますか?

胃潰瘍のすべてが胃がんになるわけではありません。
ただし、胃潰瘍のように見える病変の中に胃がんが隠れていることがあるため、胃カメラによる確認が重要です。

胃が痛い場合、胃カメラは必要ですか?

症状や年齢、リスクによって判断します。
特に、
● 痛みが続く
● 体重減少がある
● 黒い便が出る
● 貧血がある
● 40歳以上で症状がある
場合は、胃カメラによる確認をおすすめします。

まとめ|胃の不調は自己判断せず専門医へ

「胃潰瘍の原因=ストレス」と自己判断し、市販の胃薬だけで痛みをやり過ごしていると、症状が進行して思わぬ事態を招くことがあります。胃の不調が続く場合は、根本的な原因を見極めるための胃カメラ検査や専門的な解説を受けることが大切です。

日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックでは、豊富な検査実績に基づき、患者様お一人おひとりに寄り添った苦痛の少ない検査と丁寧な診察を提供しています。「病院へ行くべきか迷う」という段階でも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。

【参考・出典元】

日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン」

日本ヘリコバクター学会「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」

厚生労働省 e-ヘルスネット(消化器疾患に関する情報)

【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。激しい痛みや出血などの症状がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。

教えてくれた先生

石岡 充彬(いしおか みつあき)

日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック院長。医学博士。 1986年生まれ、秋田育ち。幼少期より内視鏡医である父の背中を見て育つ。地元・秋田大学で消化器内科全般を広く経験し、各種専門医資格および医学博士号を取得。2018年より国内随一の内視鏡治療件数を誇るがん研有明病院の内視鏡診療部にて、内視鏡診療に特化した知識と経験を積む。2019年には人工知能(AI)を活用した胃がんのリアルタイム診断システムを世界で初めて報告し、その後も最先端の内視鏡医療について全国的な講演活動を行う。2021年より同院健診センター・下部消化管内科の兼任副医長として予防医学の普及にも積極的に取り組む。2022年より都内大手内視鏡クリニック院長職を経て、自身が理想とする「初診から内視鏡検査・結果説明・治療に至るまでの一貫した診療」を行うため、2024年7月に日本橋人形町消化器・内視鏡クリニックを開院。

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日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック
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