世界の運動ニューロン疾患の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の運動ニューロン疾患の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Motor Neuron Disease Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、運動ニューロン病(Motor Neuron Disease:MND)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。MNDは、随意運動を担う上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが進行性に変性・脱落する神経変性疾患群であり、筋力低下、筋萎縮、痙縮、最終的には呼吸不全に至る可能性がある。最も代表的な病型は筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)で、ほかに原発性側索硬化症(Primary Lateral Sclerosis:PLS)や進行性筋萎縮症(Progressive Muscular Atrophy:PMA)などが含まれる。調査会社は、希少疾患でありながら急速な機能低下と高い介護・支持療法負担を伴う点を重視しており、2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間として、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場における有病率、発症率、年齢、性別、診断患者数などを分析している。
MNDの病態は、脳から脊髄へ運動指令を伝える上位運動ニューロンと、脊髄から筋肉へ直接信号を送る下位運動ニューロンが徐々に障害されることにある。障害部位と病型によって臨床像は異なるが、共通して進行性の筋力低下がみられる。
ALSでは上位・下位運動ニューロンの両方が障害されるため、筋萎縮や線維束性収縮に加えて、痙縮や腱反射亢進などが混在する。一方、PLSは主として上位運動ニューロン障害、PMAは主として下位運動ニューロン障害を中心とする。
進行に伴い、歩行、上肢機能、発話、嚥下、呼吸などが障害される可能性がある。特に呼吸筋が弱くなると換気不全が生じ、生命予後を大きく左右する。
資料では一部患者で認知機能障害も起こり得るとされており、MNDは単なる筋力低下の疾患ではなく、患者によっては認知・行動面の問題も含む複雑な神経変性疾患である。
疫学的には、2021年に世界で約27万2,732人がMNDとともに生存していたとされ、年齢標準化有病率は人口10万人あたり約3.31例である。
同年の新規患者数は約6万4,178例で、年齢標準化発症率は人口10万人・年あたり約0.77例とされる。
ここで、有病者約27.3万人と年間新規患者約6.4万人は異なる疫学指標である。有病率はある時点で生存している患者数、発症率は一定期間内に新たに発症した患者数を示す。
MNDは進行性で生命予後が短くなることがあるため、慢性疾患のように患者が長年大量に蓄積しにくい。このため、年間新規患者数に対して有病患者数が比較的限られる構造を持つ。
また、今回の世界27万2,732人、6万4,178人という数値はMND全体の推定であり、ALS単独の患者数ではない。
一方、国別セクションでは「MNDは最も一般的にはALSとして現れる」とされ、具体的な発症率や患者数の多くがALSのデータとして提示されている。このため、MND全体とALS単独の疫学が混在している点に注意が必要である。
年齢では、世界的に50~70歳で発症のピークを迎えるとされる。
これはMNDが主として中年後半から高齢者に多い疾患であることを示している。
米国では平均発症年齢が約58~63歳とされ、世界全体の50~70歳という範囲と概ね整合する。
ただし、MNDは若年成人にも発症し得るため、「50歳未満では起こらない」という意味ではない。今回の資料では若年発症例の具体的割合は示されていない。
高齢化は2026~2035年の患者数を押し上げる重要な要因となる可能性がある。MNDの年齢別発症率が一定でも、発症しやすい中高年・高齢人口が増えれば、絶対患者数は増加する可能性があるためである。
性別では、世界的に男性の疾病負担が女性より高く、年齢標準化有病率・発症率の双方で男性が高いとされる。
米国でも男性が女性よりわずかに多い。
ただし、今回の資料では世界全体の具体的な男女比は示されていないため、どの程度男性優位なのかを定量化することはできない。
また、病型や年齢によって性差が異なる可能性があるため、「MNDは明確な男性疾患」とみなすのは適切ではない。
米国では、年間人口10万人あたり約2~3人が新たに診断され、現在約3万人がMNDまたは主としてALSとともに生活しているとされる。
ここで重要なのは、世界年齢標準化発症率0.77/10万人・年と、米国2~3/10万人・年に差があることである。
この差は、米国データが主としてALSに関する臨床・登録ベース発症率である一方、世界データがMND全体のGBD等による年齢標準化推計である可能性や、診断率、登録精度、人口構成などの違いによって生じている可能性がある。
したがって、「米国では世界平均の3倍以上MNDが多い」と単純に結論づけるべきではない。
米国の約3万人という数値も、今回の文脈ではMND全体というよりALSを中心とする実患者数として理解する必要がある。
ヨーロッパでは、ドイツ、フランス、スペイン、英国で年間約2~3/10万人とされ、比較的一貫した西欧の疫学パターンが示されている。
これは米国の年間2~3/10万人と概ね同程度であり、欧米ではALS/MNDの報告発症率が比較的近いとする説明である。
ただし、今回の抜粋ではドイツ、フランス、スペイン、英国それぞれの具体的患者数や有病率は示されていない。
また、イタリア、日本、インドについても8主要市場の対象には含まれるが、この抜粋では具体的な国別MND発症率・患者数は提示されていない。
したがって、今回の資料だけで8市場すべてを定量的に比較することはできない。
MND疫学を解釈するうえで、ALSとMND全体を区別することは特に重要である。
ALSはMNDの主要サブタイプではあるが、PLSやPMAなどもMNDに含まれる。
そのため、ALS発症率2~3/10万人をMND全体の正確な発症率として扱う場合には注意が必要である。
また、病型によって進行速度や生存期間も異なるため、有病率にも影響する。進行が緩徐な病型では同じ発症率でも患者が長く生存し、有病患者数が増えやすい。
一方、急速に進行するALSでは、新規発症が一定数あっても、死亡によって患者が長期間蓄積しにくい。
このため、2026~2035年のMND患者プールは、新規発症だけでなく、治療進歩による生存期間延長によっても大きく変化し得る。
現在、MNDに確立した根治療法はないとされる。
治療の目的は、疾患進行を可能な範囲で遅らせ、症状を緩和し、呼吸・栄養・運動・コミュニケーション機能を維持してQOLを保つことである。
ALSに対する疾患修飾薬としては、リルゾールとエダラボンが挙げられている。
リルゾールは生存期間延長を、エダラボンは機能低下の遅延を目的として使用されるとされるが、資料では効果は「modestly」、すなわち限定的・緩やかな改善として位置づけられている。
したがって、これらはMNDを治癒させる薬ではなく、病勢進行をある程度遅らせる治療である。
この点が、MNDにおける大きなアンメットメディカルニーズである。
支持療法では、多職種チームによる管理が非常に重要である。
呼吸機能が低下した患者では非侵襲的換気(Noninvasive Ventilation:NIV)が使用され、資料では進行期の生存改善に寄与するとされる。
MNDでは呼吸筋力低下が生命予後を左右するため、呼吸機能を定期的にモニタリングし、適切な時期に換気補助を導入することが重要となる。
栄養管理も重要である。
嚥下筋や舌・咽頭の筋力が低下すると、食事摂取が困難になり、体重減少や誤嚥リスクが高くなる。
そのため、栄養状態を継続評価し、必要に応じて摂取方法を調整することが重要になる。
理学療法は、残存する運動機能を維持し、拘縮や疼痛、廃用を可能な範囲で減らすために行われる。
言語・コミュニケーション支援も重要である。構音筋が弱くなると発話が困難になるため、言語療法や代替コミュニケーション手段が必要となる場合がある。
さらに、患者と家族の心理的負担が大きいため、心理社会的カウンセリングも多職種ケアの一部として挙げられている。
このように、MNDの治療は薬物療法だけでは完結せず、神経内科、呼吸管理、栄養、リハビリテーション、言語療法、心理支援などを統合する必要がある。
研究開発では、遺伝子治療、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense Oligonucleotide:ASO)、新規神経保護薬などが注目されている。
これらは従来の非特異的な神経保護だけでなく、特定の遺伝子異常や病態機序を直接標的とする治療へ移行しつつあることを示す。
特に遺伝性・分子学的サブタイプが明確な患者では、遺伝子標的治療が将来の重要な治療戦略となる可能性がある。
ただし、今回の資料では具体的な遺伝子、薬剤名、臨床試験成績、承認状況までは示されていない。
したがって、「遺伝子治療がすでにMNDの標準治療になっている」と解釈するのは不適切であり、将来的な開発方向として理解する必要がある。
市場の観点では、MNDは患者数の少ない希少疾患だが、一人あたりの医療・介護負担が非常に大きい。
病勢進行に伴い、薬物療法、呼吸補助、栄養管理、歩行・移動補助、コミュニケーション支援、在宅介護など多岐にわたるサービスが必要となる。
したがって、市場規模は単純な患者数だけでなく、疾患進行段階ごとの医療資源利用によって大きく左右される。
2026~2035年の患者プールを押し上げる第一の要因は、高齢化である。MNDは50~70歳で発症が多いため、この年齢層の人口増加は新規患者数を押し上げる可能性がある。
第二に、診断能力向上がある。神経学的評価、電気生理検査、遺伝子検査などが改善すれば、従来診断が遅れていた患者をより正確に捕捉できる可能性がある。
第三に、疾患認知の向上がある。初期の筋力低下や構音障害を単なる加齢や整形外科疾患として扱わず、早期に神経専門医へ紹介することで診断患者数が増える可能性がある。
第四に、支持療法や疾患修飾治療の進歩によって生存期間が延長すれば、有病患者数が増える。
この点は重要であり、2026~2035年に有病率が上昇しても、それが必ずしもMNDの発症率悪化を意味するわけではない。
より長く生存できる患者が増えることで、ある時点で生活している患者数が増えるという構造もあり得る。
一方、根本的な疾患修飾治療が開発されれば、機能低下の速度や介護負担が低下する可能性がある。
したがって、将来的には「患者数」だけでなく、重度障害を抱えて生活する期間や呼吸補助を必要とする期間なども重要なアウトカムとなる。
全体として本レポートは、MNDを「上位・下位運動ニューロンが進行性に変性し、筋力低下、筋萎縮、痙縮、発話・嚥下障害、最終的には呼吸不全を引き起こし得る希少神経変性疾患群」と位置づけている。
2021年には世界で約27万2,732人がMNDとともに生存し、年齢標準化有病率は約3.31/10万人、年間新規患者は約6万4,178人、年齢標準化発症率は約0.77/10万人・年とされる。
年齢では50~70歳で発症が多く、米国では平均58~63歳とされる。性別では男性の疾病負担が女性より高い傾向がある。
米国では年間約2~3/10万人が診断され、約3万人が生活しているとされる。ドイツ、フランス、スペイン、英国でも発症率はおおむね2~3/10万人・年とされるが、これらの数値は主としてALSの疫学を反映している可能性が高く、世界MND全体の0.77/10万人・年とは定義・推計方法が異なる可能性がある。
したがって、世界0.77/10万人と欧米2~3/10万人の差を単純な地域差として解釈するのは慎重である。
また、レポート全体ではMNDという包括的概念とALS単独の疫学が混在しているため、「MND全体」と「ALS」を明確に区別して患者数を解釈する必要がある。
治療では、ALSに対するリルゾールやエダラボンなどの疾患修飾療法に加えて、非侵襲的換気、栄養管理、理学療法、言語療法、心理社会的支援などの包括的多職種ケアが重要となる。特にNIVは進行期患者の生存改善に寄与するとされる。
一方、現時点では根治療法がなく、遺伝子治療、ASO、神経保護薬などが将来の治療開発領域として注目されている。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、高齢化、診断精度向上、疾患認知改善、支持療法による長期生存が有病患者数を押し上げる可能性がある一方、分子標的・遺伝子標的治療の進歩によって疾患進行速度や重度障害負担を変えられる可能性がある。
したがって、今後のMND管理における中心的課題は、単に「進行性筋力低下」として経過を見るのではなく、初期症状から早期に診断し、ALS、PLS、PMAなどの病型を適切に評価すること、呼吸・嚥下・栄養・運動・コミュニケーション機能を定期的に監視すること、疾患修飾薬と多職種支持療法を早期から組み合わせること、そして遺伝学的・分子学的サブタイプに基づく新規治療へつなげることである。2026~2035年は、MNDを単なる「治療困難な希少神経疾患」としてではなく、遺伝子・分子標的治療の進展と高度な支持療法によって生存と機能維持の双方を改善する長期管理疾患として再構築できるかが、臨床・疫学・研究開発・市場の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
運動ニューロン疾患市場概要(8主要市場)
3.1 運動ニューロン疾患市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 運動ニューロン疾患市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
運動ニューロン疾患疫学概要(8主要市場)
4.1 運動ニューロン疾患疫学状況(2019年~2025年)
4.2 運動ニューロン疾患疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 運動ニューロン疾患の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
7.4 種類別の運動ニューロン疾患患者数
7.5 性別別の運動ニューロン疾患患者数
7.6 年齢別の運動ニューロン疾患患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の運動ニューロン疾患患者数
8.4 米国における性別別の運動ニューロン疾患患者数
8.5 米国における年齢別の運動ニューロン疾患患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の運動ニューロン疾患患者数
9.4 英国における性別別の運動ニューロン疾患患者数
9.5 英国における年齢別の運動ニューロン疾患患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の運動ニューロン疾患患者数
10.4 ドイツにおける性別別の運動ニューロン疾患患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の運動ニューロン疾患患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の運動ニューロン疾患患者数
11.4 フランスにおける性別別の運動ニューロン疾患患者数
11.5 フランスにおける年齢別の運動ニューロン疾患患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の運動ニューロン疾患患者数
12.4 イタリアにおける性別別の運動ニューロン疾患患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の運動ニューロン疾患患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の運動ニューロン疾患患者数
13.4 スペインにおける性別別の運動ニューロン疾患患者数
13.5 スペインにおける年齢別の運動ニューロン疾患患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の運動ニューロン疾患患者数
14.4 日本における性別別の運動ニューロン疾患患者数
14.5 日本における年齢別の運動ニューロン疾患患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける運動ニューロン疾患の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の運動ニューロン疾患患者数
15.4 インドにおける性別別の運動ニューロン疾患患者数
15.5 インドにおける年齢別の運動ニューロン疾患患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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