フィジカルAI × IOWN(R) APN × 60GHz帯無線LANによる、コンビナート設備点検の高度化を国内で初めて実証

2026-06-01 14:00
NTT東日本株式会社 NTTドコモビジネス株式会社 NTTドコモソリューションズ株式会社 株式会社NTTデータグループ 1FINITY株式会社 三菱ケミカル株式会社

 NTT東日本株式会社、NTTドコモビジネス株式会社、NTTドコモソリューションズ株式会社、株式会社NTTデータグループの4社 (以下、NTTグループ)、富士通グループの1Finity株式会社 (以下、1Finity)、および三菱ケミカルグループの三菱ケミカル株式会社 (以下、三菱ケミカル) は、IOWN(R) APN 注1 およびAIの活用によるスマートメンテナンスの実現を通じて、屋外の工場設備を点検する作業員の負担軽減に取り組んでいます。
 NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3者は、2026年2月、岡山県の水島臨海工業地帯 (水島コンビナート) において、IOWN(R) APNと60GHz帯無線LANを組み合わせた大容量・低遅延通信環境を構築し、リアルタイムで大量のデータ収集が可能であることを確認しました。注2
 今回、当該通信環境を用いて、自律型ロボットやデジタルツインなどのフィジカルAI技術を活用した屋外設備点検の高度化に関する検証を実施しました。
具体的には、以下の内容について検証を行い、実用化を見据えた有効な結果を得ました。
(1) 屋外環境において、ロボットの遠隔操作および自律走行を実現
(2) ロボットに搭載したカメラおよびマイクを用いて取得したデータを、低遅延で送信
(3) 取得したデータをリアルタイムにAIで解析して、振動と音に関する異常を検知
(4) 取得したデータをAIで解析してから、デジタルツイン環境へ反映させて、ひび割れを検知
 今後、映像、音響、臭気、温度などの多様なデータを統合することで、人に代わる高度な認知機能を実現し、現場作業員の負担軽減を推進していきます。

図1. 本検証のイメージ図

図1. 本検証のイメージ図

図1. 本検証のイメージ図

 

図2. 三菱ケミカル岡山事業所におけるロボットを用いた検証

図2. 三菱ケミカル岡山事業所におけるロボットを用いた検証

図2. 三菱ケミカル岡山事業所におけるロボットを用いた検証
四足歩行ロボット: 振動と音に関する異常検知などを実施
四輪駆動ロボット: デジタルツイン環境を用いたひび割れ点検などを実施

背景

 NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3者は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、IOWN Global Forum(TM) (以下、IOWN GF) の活動に参画 注3 しています。これまで3者は、IOWN GFパートナー企業と連携し、ロボットを遠隔操作して、設備点検を代行する機能や要件を含む 「Remote Controlled Robotic Inspection (遠隔操作型ロボット点検)」ユースケースのリファレンス実装モデルの開発を進めてきました。2024年には、IOWN(R) APNを活用した遠隔操作型ロボットと、AIによる映像解析を組み合わせた工場点検のモデル実証実験を実施しています。注4 また、2026年2月には、IOWN(R) APNと60GHz帯無線LAN (WiGig) 注5 による大容量・低遅延通信環境の検証を実施しました。

検証の概要

 大規模な工場設備が集積するコンビナートでは、安全・安定稼働を維持するため、設備の定期的な屋外点検が不可欠です。一方で、施設規模が大きい場合には点検作業に多くの工数を要し、現場作業員の負担軽減は長年の課題となっていました。こうした課題に対し、今回、IOWN(R) APNとWiGigによる大容量・低遅延通信環境を用いて、自律型ロボットやデジタルツインなどのフィジカルAI技術を活用した屋外設備点検の高度化に関する検証を実施しました。
 具体的には、以下の内容について検証を実施しました。

1.前回 注2 同様に、三菱ケミカル岡山事業所からNTTグループ東京都内ビル間 (約700km) に、IOWN(R) APNとWiGigを組み合わせて大容量・低遅延な通信環境を構築
2.当該通信環境下で、異なるロボット2台の遠隔操作および自律走行を実現
3.ロボットに搭載したカメラおよびマイクを用いて取得したデータを、低遅延で送信
4.取得した映像データと音響データをリアルタイムにAIで解析して、振動と音に関する異常を検知
5.取得した映像データをAIで解析してから、デジタルツイン環境へ反映させて、ひび割れを検知

検証内容と結果

1.大容量・低遅延な通信環境の構築
 三菱ケミカル岡山事業所からNTTグループ東京都内ビル間 (約700km) に、NTTドコモビジネスが提供する 「docomo business APN Plus powered by IOWN(R)」 を活用して、IOWN(R) APN環境を構築しました。
 また、岡山事業所構内に、複数のWiGigアクセスポイントを配置し、約150m×150mのエリアで広域無線通信環境を構築しました。
 さらに、端末主導動的サイトダイバーシティ制御技術 注6 を採用して、WiGig装置を搭載したロボットがエリア外周を走行する際、最適なアクセスポイントを瞬時に選択・切り替えることで、ロボットが動き続けられる安定した環境を実現しました。

図3. 本検証で用いた通信環境

図3. 本検証で用いた通信環境

図3. 本検証で用いた通信環境

2.ロボットの遠隔操作および自律走行
 当該通信環境を用いて、東京都内ビルにいるオペレーターが、岡山事業所にある四足歩行ロボットの遠隔操作を行いました。ロボットは、人の補助なく150m×150mの外周を一周できました。
 また、通信が遮断された場合に、ロボットが安全に停止することも確認しました。
さらに、四足歩行ロボットが自律走行できるかも確認しました。ロボットは、センサーのみで地図を生成しながら、自己位置を見失うことなく外周を走行できました。その際、ロボットが障害物 (人や物) を認識して、回避できることもわかりました。
 四輪駆動ロボットも、当該通信環境で自律走行できることを確認しました。

図4左. 走行中の四足歩行ロボット 右. ロボットが取得した映像

図4左. 走行中の四足歩行ロボット 右. ロボットが取得した映像

図4左. 走行中の四足歩行ロボット
右. ロボットが取得した映像

3.ロボットに搭載したデバイスを用いて取得したデータの送信
 無線通信環境下でロボットが取得した映像データは、岡山事業所から東京都内ビルまで約700KmのIOWN(R) APNを介して送信しました。ロボットが走行中であっても、映像遅延時間は、目標の500ms以内を達成しました。

 以上の結果より、映像ストリーミングを維持した状態においてもロボットの安定的な自律走行が可能であることを確認するとともに、ロボットの遠隔監視および制御を支える大容量・低遅延通信環境の有効性を実証いたしました。

4.ロボットによる振動と音に関する異常検知の検証
 四足歩行ロボットに搭載した非接触のカメラとマイクを用いて、映像データと音響データを同時に取得し、データをAI解析することで、異常を検知できるのか、を確認しました。
 今回、異音 (水撃音) のするポンプ機と配管を対象にしました。ロボットが、ポンプ機と配管の近くで撮影・集音したデータをAI解析することで、普段とは異なる何らかの異常が発生していることを検知しました。これは、配管に取り付けられたセンサーからの数値と目立った差はありませんでした。
 以上の結果は、ロボットを用いることでも、ポンプ機に何らかの異常が発生していることを判断するに十分な精度が得られることを示しています。

図5. データ収集中の四足歩行ロボット

図5. データ収集中の四足歩行ロボット

図5. データ収集中の四足歩行ロボット

図6. 映像データからの振動解析の結果 (一例)

図6. 映像データからの振動解析の結果 (一例)

図6. 映像データからの振動解析の結果 (一例)

図7. 音響解析の結果 (一例)

図7. 音響解析の結果 (一例)

図7. 音響解析の結果 (一例)

5.自律型ロボットとデジタルツイン環境を用いたひび割れ点検
 自律型の四輪駆動ロボットを150m×150mの外周を一周させることで、3D空間マップを作成し、デジタルツイン環境の基礎をつくりました。
 次に、ロボットが取得した高精細なストリーミング映像データをIOWN(R) APN経由で岡山事業所から東京都内ビルへ送信し、画像認識AIで解析した後に、デジタルツイン環境へ反映しました。
 検証では、コンクリートのひび割れ情報が、デジタルツイン環境に即時可視化され、当該画像を押下することでひび割れ状況の詳細を確認することができました。
 その際、映像データ取得からAI解析、デジタルツイン環境への反映まで一連の流れは500ms以下で実現でき、さらに映像伝送におけるパケット損失についても0.1%以下という高い安定性でした。また、将来的にはひび割れに進展する可能性のある微細なひび割れを検出できることを確認しました。

 以上の結果より、自律型ロボットやデジタルツインなどのフィジカルAI技術を活用した遠隔地からのリアルタイム設備点検および予兆監視の実現可能性を示しました。

図8. デジタルツイン環境とひび割れ検知

図8. デジタルツイン環境とひび割れ検知

図8. デジタルツイン環境とひび割れ検知

6.今回の検証結果
 大容量・低遅延環境の構築を通じ、以下の事項について実証を行いました。
(1)データ取得と並行したロボットの安定的な自律走行の実現
(2)自律型ロボットおよびデジタルツイン等のフィジカルAI技術の活用による、遠隔地からのリアルタイム設備点検および予兆監視の実現可能性
 これらの技術は、点検人員の拠点集約や、複数拠点の点検の並行実施を可能とし、コンビナート等の工場設備を点検する作業員の負担軽減に貢献します。

今後に向けて

 現場作業員の負担軽減に対する本格的な推進に向けては、映像、音響、臭気、温度などの多様なデータを統合した「人に代わる認知機能」をさらに高める必要があります。今後、マルチモーダルAI 注7 処理に対応したコンピューティング基盤の高度化に向けて、さらなる実証を行っていきます。

【検証における3者の役割】

【検証における3者の役割】

[各社のコメント]
NTTドコモソリューションズ株式会社 
執行役員 ネットワーククラウド事業本部 IOWN推進部長 北田 祥規
「本実証は、IOWN(R)構想がめざす次世代通信基盤とロボット・AI・デジタルツインの融合により、産業インフラの在り方を変革する可能性を示すものです。
リアルタイムでのデータ収集・解析・可視化を一体的に実現することで、遠隔からの高度な設備点検や予兆監視による「現場の安全性向上および作業負担の軽減の実現」に向けた大きな一歩となりました。
今後、本技術がさまざまな産業分野へ展開され、持続可能な社会の実現に貢献することを期待しています。」

株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部Innovation技術部長  稲葉 陽子
「NTTデータグループは、中期経営計画において掲げる技術戦略にて、技術の成熟度に応じたEmerging、Growth、Mainstreamの3つの領域における活動を推進しており、イノベーションセンタではお客様との共創による新たなビジネス創出に取り組んでいます。注8
本実証により、フィジカルAIと次世代の通信技術を掛け合わせ、遠隔・自律型ロボットによる設備点検の自動化に向けた可能性を確認しました。
今後、現場データとフィジカルAIを統合した価値創出を通じて、設備保全の高度化と現場の変革を実現し、産業分野における持続可能なスマートメンテナンスの実現と現場の課題解決に貢献してまいります。」

[注1] IOWN(R) APNは、NTTが提唱するAll-Photonics Network (APN) の一環で、従来の電気信号ではなく光信号を用いて超低遅延かつ高速な通信を実現する次世代のネットワーク技術です。「IOWN(R)」はNTT株式会社の商標または登録商標です。
[注2] IOWN(R) APNと60GHz帯無線LANにより、コンビナートの高度化を支える大容量・低遅延通信環境を実証
https://www.nttcom.co.jp/news/pr26040601.html
[注3] IOWN Global Forum(TM)は、IOWN構想を実現することをめざして設立された国際団体です。現在、170を超える企業・団体が参画しています。
https://iowngf.org/
[注4] IOWN(R) APNを活用した遠隔操作型ロボットによる工場設備点検を検証
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2024/122000/
[注5] WiGigは、Wireless Gigabitの略です。これは、IEEE 802.11ad規格に基づいた60GHz帯を用いる無線LAN規格です。
[注6] 端末主導動的サイトダイバーシティ制御技術は、NTTアクセスサービスシステム研究所にて開発を進めている、高速移動体に対して無瞬断で大容量伝送を行うことを可能とする無線通信技術です。
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/02/25/220225a.html
[注7] マルチモーダルAIは、実現したい内容に応じて、さまざまな種類の入力データを利用して統合的に判断ができるAIです。モーダルとは、AIに対する入力データの種類 (映像、音、テキストなど) を指します。
[注8] NTT DATAのテクノロジー
https://www.nttdata.com/jp/ja/technology/