文部科学大臣賞受賞のアニメ教材、公開1周年 子ども向け教材を大人の学びにも活用し 「難聴への理解」を幅広い世代へ
一般社団法人手話エンターテイメント発信団oioi(大阪市東淀川区、代表理事:岡崎 伸彦※)が2025年9月23日(火・祝)「手話の日」に合わせ無償公開した、難聴理解を目的としたアニメ教材「難聴者のきこえ方なんなん?」「難聴者の困りごとなんなん?」が、公開から1周年を迎えました。
子どもたちが難聴について知り、困りごとを想像し、自分にできる対応を考えるために制作したもので、2026年6月に第42回学習デジタル教材コンクールにおいて文部科学大臣賞を受賞しました。公開後は、学校の授業だけでなく、教職員研修、企業研修、人権講座など大人の学びにも広がり、2026年8月現在、全国170か所以上で活用されています。難聴は、誰にとっても身近になり得る問題です。こうした状況を踏まえ、公開1周年を機に、企業や地域などで大人に向けた本教材の活用方法を検討し、難聴への理解をより幅広い世代に広げることを目指します。
※「崎」は正しくは「たつさき」です。

教材情報
1本約2分・全7本。動画・活用マニュアル・ワークシートを無償提供。
https://www.oioi-sign.com/hoh-edu-video/
YouTubeでも無償公開
難聴者のきこえ方なんなん?: https://www.youtube.com/watch?v=kRPw6Kfp_bM
難聴者の困りごとなんなん?: https://www.youtube.com/watch?v=qdQaFV2O-cQ
世界で10億人以上の若者にリスク――難聴は他人事ではない
世界保健機関(WHO)は、2050年までに、世界のおよそ4人に1人が何らかの難聴を抱えると予測しています。また、大きな音による難聴は若い世代にも関わる問題であり、イヤホンなどで大きな音を聞き続けたり、ライブ会場などで大きな音にさらされたりすることで、世界で10億人以上の若者(12~35歳)が難聴になるリスクにさらされていると警鐘を鳴らしています。日本でも、イヤホン難聴の実態を把握するため、中高生約3万人を対象とした大規模調査が予定されています。大きな音を長時間聞くことが難聴につながるのは、音の振動を電気信号に変える内耳の有毛細胞が傷つくためで、大きく傷ついた有毛細胞は、現在の医療では再生できません。また、イヤホン難聴は、自分では気づきにくいまま進行することがあります。一度低下した聴力を元に戻すことが難しいからこそ、早い段階から耳を守る方法を知り、音量や使用時間に注意することが重要です。
予防とともに必要な「難聴への理解」
イヤホン難聴の予防は重要です。しかし、すべての難聴を予防できるわけではありません。難聴には、生まれつきのもののほか、病気、加齢、騒音など、さまざまな要因があります。また、難聴者の聞こえ方や困りごとは、一人ひとり異なります。補聴器は聞こえを補う機器ですが、すべての音や言葉を明瞭に聞き取れるとは限りません。難聴が誰にとっても身近になり得る中、必要なのは予防だけではありません。難聴者の聞こえ方や困りごとを知ることも必要です。その理解をもとに、本人と周囲の人が困りごとについて話をしたり、できる工夫について考えたりして、共に過ごしやすい環境を整えていく。それは将来、自分や身近な人が難聴になったときにも過ごしやすい社会につながります。
難聴者の聞こえ方や困りごとを、アニメーションで学ぶ
こうした難聴への理解を広げるために制作したのが、アニメ教材「難聴者のきこえ方なんなん?」と「難聴者の困りごとなんなん?」です。「難聴者のきこえ方なんなん?」は、難聴者の聞こえ方の例を、音とアニメーション(イラストや文字など)で表現した動画です。聞こえ方を音だけでなく視覚的な情報と組み合わせることで、一人ひとり異なる聞こえ方を具体的にイメージできるよう工夫しています。「難聴者の困りごとなんなん?」は、授業中や給食、体育、休み時間、移動、会社など、日常生活のさまざまな場面を題材に、難聴者がどのようなことで困るのかを想像し、その困りごとへの対応を考えるための動画です。本教材は、1本約2分の短編アニメ全7本で構成され、YouTubeで無償公開しています。動画に加え、活用マニュアルやワークシートも無償で提供しており、難聴について専門的な知識がない人でも活用しやすい設計です。
難聴者のきこえ方なんなん?: https://www.youtube.com/watch?v=kRPw6Kfp_bM
難聴者の困りごとなんなん?: https://www.youtube.com/watch?v=qdQaFV2O-cQ

子ども向け教材が、大人の学びにも広がる
子ども向けに制作した本教材は、公開後、学校の授業だけではなく、大学生や教職員、企業の従業員、一般の方を対象とした講座・研修でも活用されています。また、手話サークルや要約筆記サークルが学校などで行う、難聴への理解を深めるための学習にも使われています。難聴者から直接話を聞く機会を設けることが難しい現場でも、動画を通して聞こえ方や困りごとを学び、自分たちにできる対応を考えられることが、本教材の特長です。
※教材を活用した現場で生まれた変化については、参考「教材の活用によって生まれた変化」をご覧ください。

授業体験の実施について
教材を活用した授業体験を、以下日程にて実施します。
日時 : 2026年10月11日(日) 13:00~14:50 (受付12:30)
15:10~15:55で手話ワークショップも開催されます
会場 : 淑徳大学千葉キャンパス(千葉県千葉市中央区)
詳細・参加案内: https://www.oioi-sign.com/event_20261011/
今後の展望
今後は、小学校における障害理解授業の現状や課題を調査するとともに、映像教材を取り入れた授業前後の子どもたちの変化を観察・分析し、教材の効果を検証します。また、授業体験会や事例共有会を継続し、活用事例を蓄積していきます。さらに、企業や地域での活用を広げる方法を検討していきます。知るだけで終わるのではなく、困りごとを想像し、自分にできることを考え行動に移す。本教材を通して、聴覚障害の有無にかかわらず、互いに歩み寄り、過ごしやすい社会を目指します。
参考情報
・NHK「気付いた時には戻らない イヤホン難聴から耳を守る方法」(2026年7月14日)
https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015176411000
・WHO「World report on hearing」
https://www.who.int/publications/i/item/9789240020481
・WHO「Deafness and hearing loss: Safe listening」
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/deafness-and-hearing-loss-safe-listening
制作体制
協力:一般社団法人言葉のかけはし https://www.kotoba-bridge.org/
難聴の子を持つ家族会そらいろ https://sorairofukuoka.jimdofree.com/
両団体の企画作品「なんちょうなんなん」のイラストを引き継ぎ制作
制作:KOO-KI(空気株式会社) https://koo-ki.co.jp/
アニメやCM、映画で国内外から高く評価されるクリエイティブスタジオ。
社会的テーマを伝える映像制作にも定評がある。
団体概要
一般社団法人手話エンターテイメント発信団oioi (2016年法人設立)
聴者と聴覚障害者の間にある心のバリアを壊すためにエンターテイメントの力を使って手話および聴覚障害理解の普及活動を行う。
ホームページ: https://www.oioi-sign.com/
代表者 : 代表理事 岡崎 伸彦 ※「崎」は正しくは「たつさき」
所在地 : 〒533-0033 大阪市東淀川区東中島1-19-14 ドムール新大阪204
設立 : 2016年4月
事業内容: 手話エンターテイメント及び手話の普及活動を通し、
「聞こえる人と聞こえない人の間に存在するバリア(誤解・偏見等)」
を壊すことを目的としたワークショップ・パフォーマンス事業を行う
URL : https://www.oioi-sign.com/
《参考:教材の活用によって生まれた変化》
本教材は、学校の授業や講座・研修など、さまざまな場で活用されています。ここでは、学校や団体からの報告をもとに、学びが行動や自己理解につながった事例と、講座・研修の参加者などから寄せられた声をご紹介します。
<事例1:聴覚障害のない生徒>学びが配慮ある行動へ
ある中学校では、1年生の授業で本教材が使用されました。生徒たちは当初、「補聴器をつければ普通に聞こえる」と考えていましたが、教材を通して、補聴器をつけたときの聞こえ方にも一人ひとり違いがあることを知りました。その後、当法人の聴覚障害のあるメンバーが学校を訪れた際には、日常的にマスクを着用していた生徒に対し、周囲の生徒が「口元が見えた方が伝わりやすいのではないか」と声をかけ、マスクを外すことを提案する場面がありました。難聴について「知る」ことが、目の前の相手にとってどのような伝え方が良いのかを、自分たちで考え、行動に移すきっかけになった事例です。
<事例2:難聴のある児童>教材が自己理解とセルフアドボカシーのきっかけに
別の小学校では、難聴学級に通う子どもが、自分の聞こえにくさや困っていることをクラスメイトに伝えるためのツールとして教材が活用されました。動画を見て「自分にも同じ困りごとがある」と気づき、その困りごとや、どのように対応してほしいかを、クラスメイトに分かりやすく伝えることができました。また、先生方からは、難聴の子どもたちの話を聞く中で、「同じ難聴でも困りごとは一人ひとり異なることに気づいた」という声も寄せられています。
<事例3:大人>子ども向け教材が、大人の難聴理解にもつながる
大学生や教職員、企業を対象に当法人が行った講座・研修の参加者や、教材を活用した方々からは、「聞こえ方に個人差があることを知らなかった」「感音難聴を初めて知った」「子どもだけでなく、大人にも必要な学びだった」といった声が寄せられました。また、学校で難聴への理解を深める活動を行っている手話サークルからは、教材を使用した際に、「聞こえないことが分かりやすく伝わり、子どもたちが想像以上に多くの困りごとを見つけてくれたことに驚いた」という声もいただきました。

