農業を起点に、食料・エネルギー・資源の好循環を生む 社会実装プロジェクト「AGRI-4X(アグリ・フォーエックス)」に 関する基本合意を締結

東京製鐵、エレクトロルートジャパンとの3社連携により、 気候変動適応型の農業基盤と脱炭素社会を同時構築

2026-02-26 17:15
ファーボ研究所株式会社
写真左より、ファーボ研究所の高橋社長、エレクトロルートジャパンの谷取締役、東京製鐵の奈良社長

写真左より、ファーボ研究所の高橋社長、エレクトロルートジャパンの谷取締役、東京製鐵の奈良社長

農業生産およびスマート農業システムの設計を行うファーボ研究所株式会社(本社:鳥取県日南町、代表取締役社長:高橋 隆造、以下「FRC」)は、アグリゲーターであるエレクトロルートジャパン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:アラン ミュレーン、以下「ERJ」)および日本最大の電炉メーカーである東京製鐵株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:奈良 暢明、以下「東京製鐵」)とともに、日本の食料安全保障の確立ならびにエネルギー・資源安全保障の強化を目的とした社会実装プロジェクト「AGRI-4X(仮)」(アグリ・フォーエックス)の推進に関し、3社間で基本合意を締結いたしました。

本プロジェクトは、農業・食料・エネルギー・資源に関わる産業が接続するサーキュラーエコノミーの構築を目指す取り組みです。FRCが開発・提供するスマート農業設備であるアグリテックシステム「FARBO-ATS(仮)」(ファーボ・エーティーエス、以下「FARBO」)に太陽光パネルを組み合わせた仕組みを、第三者(農業法人、地域企業、新規就農者等)が農地へ実装することから始まります。これにより、第三者はハイテク農業による生産性向上と省力化を実現するとともに、同時に創出される電力を需要家主導型のV-PPAスキーム「farmFIT(仮)」(ファームフィット)を通じて売電し、その収益をスマート農業設備の投資回収等に充てることで、持続可能な農業経営を成立させます。ERJは、「farmFIT」で集約した当該電力由来の環境価値を東京製鐵へ供給し、東京製鐵は、当該スキームで調達した地域社会と共生する環境負荷の低い再生可能エネルギー由来の環境価値を活用して、低CO2鋼材「ほぼゼロ」を製造します。さらに、FRCがこの低CO2鋼材「ほぼゼロ」をFARBOの原材料として活用することで、川上から川下へ、そして再び川上へと価値が循環する社会インフラの実現を図ります。

背景と構想の目的

昨今の国際情勢を背景に、日本社会は食料・エネルギー・資源を海外に大きく依存する供給構造という複合的なリスクを抱えています。とりわけ食料安全保障の中核を担う日本の農業は、従事者の超高齢化や担い手不足の進行により、耕作放棄地の増加という構造的課題に直面しています。農林水産省は2025年4月17日の自民党部会において、全国農地のうち32.8%で後継者がいないことを明らかにしており、農業は産業としての持続可能性が大きく揺らぐ局面にあります。

一方、三菱総合研究所による2024年12月の報告( https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20241204.html )では、日本の太陽光発電導入ポテンシャルの半分強を営農型が占めるとの試算が示されています。営農型太陽光発電は、農業再生と脱炭素化を同時に実現し得る有力な選択肢として位置付けられています。

こうした状況を踏まえ、東京製鐵は自社の脱炭素化のみならず、日本の食料安全保障の観点からも営農型太陽光発電の活用を検討開始しました。その後、FRCが加わり、農業を主体とした新たな社会実装モデルの可能性について意見交換を重ねてきました。また、東京製鐵は24時間体制で工場を稼働していることから、再生可能エネルギーへの転換には安定的かつ継続的に環境価値を確保できるV-PPAスキームの活用が不可欠であり、その実装を担うパートナーとしてERJが参画するに至りました。

本プロジェクトは、農業を起点かつ中核に据え、3社がそれぞれの強みとニーズを持ち寄ることで、食料・エネルギー・資源という分断されてきた領域を再接続し、産業構造そのものの転換(トランスフォーメーション)を実現することを目的としています。また、本プロジェクトを後に続く企業の参画を誘発する開かれた社会実装モデルとして推進してまいります。

さらに、鉄スクラップを原料とし、本V-PPAスキームを通じて製造される低CO2鋼材「ほぼゼロ」をFARBOの架台フレームへ段階的に採用拡大することで、資源循環を構造的に組み込んだサーキュラーエコノミーの実現も目指します。

「AGRI-4X」プロジェクトの概要

AGRI-4Xは、Agriculture(農業) × Food(食料) × Energy(エネルギー) × Resource(資源)
を一体で設計・実装する社会モデルであり、以下の4つのトランスフォーメーション(4X)の同時実現を目指します。

・AGRI-X:スマート農業による省力化と担い手不足の解消
・FOOD-X:食料生産の持続性および供給レジリエンスの強化
・ENERGY-X:非FIT・非FIP型再生可能エネルギーの拡大と脱炭素化
・RESOURCE-X:資源循環の促進および輸入依存構造の低減

技術とスキームの特徴

  1. 気候変動に適応する「可動式日射・降雨調整システム」の実装
    本プロジェクトの中核に、FRCが設計・開発したFARBOを採用します。FARBOは、常に自然環境に晒される露地栽培を対象に、農地の上空に設置した可動式の屋根構造を開閉制御することによって、農地への日射量や降雨量を物理的に調整することを主たる目的としています。近年深刻化する猛暑や豪雨等の異常気象から作物を守り、露地栽培における生育環境の最適化を図ることで、作物の品質向上および収量増加に貢献します。
図1. 路地栽培環境を制御するFARBO

図1. 路地栽培環境を制御するFARBO

FARBOには、生育状況にばらつきのあるエリアをアプリケーション上で可視化し、重点的に日射を当てる、降雨量を調整するなど、作物生育を均等化する環境制御プログラム「V-mode」(国際特許出願中)が搭載されています。あわせて、環境複合センサーや土壌センサーを用いた日々のデータ管理により、経験や勘に依存しない、再現性の高いスマート農業の実装を可能にします。これにより、これまで露地栽培では実現が難しかった環境制御を可能とし、作物の品質向上および収量増加に貢献します。

図2. 作物生育を均等化する環境制御プログラム「V-mode」

図2. 作物生育を均等化する環境制御プログラム「V-mode」

  1. 太陽光発電機能の付加とエネルギー循環
    FARBOの導入により農業基盤を強化した上で、事業主体となる第三者がその可動構造部に太陽光パネルを搭載(以下「FARBO+ソーラー」)することで、農業の脱炭素経営に必要な電力を自立的に確保すると同時に、農閑期を中心に創出される余剰電力を売電し、スマート農業の導入・運用にかかる費用へ充当することで、農業経営の安定化を図ります。
    ※なお、太陽光パネルを設置する場合には、農地法に基づく一時転用許可が必要となります。

創出された電力由来の環境価値は、FRCとERJが連携して組成するFARBO+ソーラー専用の需要家主導型のV-PPAスキーム「farmFIT」を通じて集約され、東京製鐵へ供給されます。これにより、再エネ供給の出口が確保され、発電事業者は固定価格で売電することが可能となり、追加性を有し、かつ農業・地域社会と共生する環境負荷の低い再生可能エネルギーの導入により、東京製鐵の脱炭素化の推進に貢献します。

図3. 需要家主導型V-PPAスキーム「farmFIT」

図3. 需要家主導型V-PPAスキーム「farmFIT」

  1. 低CO2鋼材によるサーキュラーエコノミーの構築
    プロジェクトの進展に応じて、FARBOの構造部材に使用する鋼材は、東京製鐵が製造するリサイクル材の活用等により低炭素化を図った鋼材へ、段階的に切り替える計画です。最終的には、FARBO+ソーラー由来の環境価値で製造された低CO2鋼材「ほぼゼロ」をFARBOの原材料として採用します。さらに、新たに設置されるFARBO+ソーラーが創出する電力由来の環境価値を東京製鐵が活用し、低CO2鋼材「ほぼゼロ」の生産や製造時のCO2排出量削減につなげることで、環境負荷の低減に向けた好循環を実現し、サーキュラーエコノミーの構築を目指します。
図4. AGRI-4Xのサーキュラーエコノミー

図4. AGRI-4Xのサーキュラーエコノミー

今後の展望

本プロジェクトは、FARBO+ソーラーを前提とし、第三者による事業実装を通じて、初期フェーズでは東京製鐵向けに合計3MW規模の実証から開始し、技術的および事業的成立性の検証を行います。その後、段階的に導入規模を拡大し、中期的には全体で500MW~2,000MW規模への展開を目指します。これにより、東京製鐵のScope2排出量削減を実行するとともに、他の電力需要家への供給も通じて、社会全体におけるCO2排出量削減を実装していく体制を構築します。あわせて、この拡大プロセスと並行して、FARBOのフレーム製造において低CO2鋼材「ほぼゼロ」の採用比率を段階的に引き上げ、将来的には100%化を目指します。これにより、資源循環と脱炭素を構造的に組み込んだ農業インフラの実装を進めます。さらに長期的には、日本の農地約1%規模(約20,000MW)への実装を視野に入れ、農業・食料・エネルギー・資源が接続するサーキュラーエコノミーとして、全国展開を進めてまいります。

AGRI-4Xでは、農業を単なる一次産業としてではなく、食料・エネルギー・資源安全保障の起点となる基盤産業として再定義し、関係各社と連携しながら持続可能な社会構造への転換に貢献してまいります。

各社について

【ファーボ研究所株式会社】 https://farboresearchcenter.co.jp/
ファーボ研究所株式会社(農地所有適格法人|旧社名:ノータス研究所)は、鳥取県の山間部において約27ヘクタールの農地を管理し、無農薬・特別栽培米を中心とした持続可能な農業に取り組んでおります。2009年の創業以来、全国規模の米品評会において多数の表彰を受けてまいりました。また、日本最大級の田んぼオーナー制度「水田オーナーズクラブ」の運営を行っております。近年は、超高齢化が進む露地栽培分野において、専用のスマート農業設備の研究開発にも取り組み、次世代農業モデルの社会実装を推進しております。

【エレクトロルートジャパン株式会社】 https://electroroute.co.jp/
エレクトロルートジャパン株式会社(三菱商事の100%子会社ElectroRoute Holdingsの日本法人)は、再生可能エネルギーを中心とする様々なリソースのアグリゲーションを強みとするエネルギー事業者です。近年はアグリゲーションリソースを活用したPPAスキーム構築による環境価値の提供を通して企業の脱炭素経営やScope2削減に注力しており、本プロジェクトにおいては、需要家主導型V-PPAスキーム「farmFIT」において、変動する太陽光発電由来の電力を高度な予測技術及びトレーディング機能によってバランシングリスクを最小化し、需要家へ環境価値を届ける役割を担っております。

【東京製鐵株式会社】 https://www.tokyosteel.co.jp/
東京製鐵株式会社は、電気炉を用いた鉄鋼製品の製造・販売を行う日本最大の電炉メーカーです。鉄スクラップを主原料とする電炉鋼材の供給を通じて、資源循環型のものづくりと脱炭素社会の実現に向けた取り組みを積極的に進めております。近年は、再生可能エネルギーの活用やデマンド・レスポンス(上げDR)の実施などを通じ、製造工程におけるCO2排出量を大幅に低減した低CO2鋼材「ほぼゼロ」の製造および供給体制の構築に注力しており、サプライチェーン全体における環境負荷の低減にも貢献しています。