世界の中等症から重症のアトピー性皮膚炎の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表

2026-08-29 09:30
株式会社マーケットリサーチセンター

株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の中等症から重症のアトピー性皮膚炎の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Moderate to Severe Atopic Dermatitis Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。

■主な掲載内容

本レポートは、中等度~重度アトピー性皮膚炎(Moderate to Severe Atopic Dermatitis:中等度~重度AD)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。アトピー性皮膚炎は慢性・再発性の炎症性皮膚疾患であり、とくに中等度~重度では強いそう痒、紅斑、浮腫、苔癬化などが持続し、外用療法だけでは十分にコントロールできない患者が多い。Heng Chaiらの2025年の報告では、アトピー性皮膚炎全体の世界有病率は約2.6%、患者数は約2億405万人と推定されている。調査会社は、その中でも症状が持続し全身治療を必要とする中等度~重度患者の治療需要が今後も大きいとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、年齢、性別、重症度、診断患者数などの疫学動向を分析している。

中等度~重度アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能障害、免疫調節異常、遺伝的素因が複合的に関与して発症する。皮膚のバリア機能が低下すると、外部刺激物やアレルゲン、微生物などが皮膚内へ侵入しやすくなり、それに対して過剰な免疫反応が生じる。とくに2型免疫反応の亢進が重要な病態要素とされ、持続的な炎症と強いそう痒につながる。

遺伝的背景としては、皮膚の構造維持に関わる遺伝子異常などが関与するとされる。これに環境因子が加わることで症状が増悪する。アレルゲン、刺激物、気候変化、微生物曝露などが増悪因子となり得るため、患者ごとに症状の誘因が異なるのも特徴である。

重症度は一般に軽度、中等度、重度に分類され、病変範囲、炎症の強さ、そう痒、睡眠障害、日常生活への影響などを踏まえて評価される。中等度~重度では皮疹が広範囲に及び、炎症が長期間持続し、強いそう痒や疼痛を伴うことが多い。そのため、単なる皮膚症状ではなく、睡眠、仕事、学業、精神心理面まで含めて生活の質を大きく低下させる。

National Eczema Associationによると、中等度~重度アトピー性皮膚炎の成人の55%超が十分な疾患コントロールを得られていないと回答している。また、86%が毎日のそう痒を経験し、63%では症状が1日12時間以上持続するとされる。これは、中等度~重度患者では症状が断続的ではなく、一日の大部分にわたって患者の生活に影響していることを示している。

同じくNational Eczema Associationによると、中等度~重度患者の約61%が皮膚痛を訴える。疼痛は灼熱感や刺すような感覚として表現されることが多く、そう痒とは別に大きな苦痛をもたらす。したがって、疾患負担を評価する際には皮疹の面積や見た目だけでなく、そう痒と疼痛の強さも重要である。

アトピー性皮膚炎そのものによる直接的死亡率は低いが、罹病負担は大きい。長期にわたるそう痒と疼痛、睡眠障害、皮膚感染、社会生活への影響などが患者のQOLを大きく損なう。特に中等度~重度では治療を継続していても症状が十分に抑えられない患者が一定数存在するため、治療アンメットニーズが高い。

疫学的には、Pulmonology Advisorによると、アトピー性皮膚炎全体の世界ポイント有病率は小児・青年で約11.1%、成人で約6.3%とされる。したがって、全年齢を通じて大きな患者集団が存在するが、年齢によって有病率や重症度の構成は異なる。

小児では発症年齢が早いことが特徴である。Amy S. Pallerらによると、小児アトピー性皮膚炎の多くは5歳未満で診断され、世界の小児有病率は約3~20%と非常に幅広い。地域、年齢、診断基準によって差があるものの、幼少期から発症する代表的な慢性炎症性皮膚疾患であることがわかる。

また、小児アトピー性皮膚炎では喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどのアトピー性疾患を併存することが多い。したがって、アトピー性皮膚炎は単独の皮膚疾患としてだけでなく、全身的なアレルギー素因の一部として捉える必要がある。

Patient Care Onlineのデータでは、対象患者のうち中等度が57.1%、重度が32.5%を占めたとされる。この数値は一般人口全体の分布というより、特定の臨床集団における重症度構成とみるべきであるが、診療対象患者の中に中等度~重度が大きな割合で存在することを示している。

年齢別では、青年層で重症例が比較的多いことが示されている。同データでは、重症例の割合は青年で36.9%、より低年齢の小児では28.2%であった。このことから、思春期以降に症状が強く残る患者群では、より重い疾患負担を持つ可能性がある。

一方、小児期に発症した患者すべてが成人まで重症を維持するわけではない。一部では年齢とともに症状が軽快するが、一定割合では成人期まで持続・再発する。この持続性患者が成人の中等度~重度AD市場を形成する重要な集団となる。

成人では、慢性的な皮疹に加えて、職業上の刺激物曝露、ストレス、睡眠不足などが症状悪化に関与する場合がある。成人中等度~重度患者では、外用薬だけで症状を抑えきれず、全身性の免疫調節治療や分子標的治療が必要になることが多い。

米国では、National Eczema Associationによると、成人約1,650万人がアトピー性皮膚炎に罹患し、そのうち約660万人が中等度~重度とされる。これは米国成人AD患者の相当な割合が全身治療候補になり得ることを示している。

さらに米国では、小児約960万人がアトピー性皮膚炎を有し、その約3分の1が中等度~重度とされる。したがって、成人だけでなく小児にも大きな治療対象集団が存在する。

この米国データをみると、中等度~重度患者の絶対数は数百万人規模に達する。慢性疾患であるため、単年度の新規患者だけでなく、長期間治療を継続する有病患者が蓄積し、市場規模を形成する。

欧州では、C Elise Kleynらの2022年の報告によると、英国、フランス、イタリアの同定患者において、中等度が78~84%、重度が16~22%を占めるとされる。ここでも対象は一般人口ではなく診療・同定された患者集団と考える必要があるが、中等度患者が非常に大きな割合を占めることがわかる。

ドイツやスペインについては提示資料で具体的な重症度割合は示されていないものの、欧州全体として中等度~重度ADは大きな疾患負担を形成している。先進国では診断率が比較的高く、新規生物学的製剤やJAK阻害薬へのアクセスも進んでいるため、治療患者数が今後さらに可視化される可能性がある。

日本についても、提示資料では具体的な中等度~重度患者数は示されていない。しかし、慢性AD患者の一定割合が外用療法で十分に管理できず、全身治療を必要とする。新規標的治療の普及により、これまで全身性免疫抑制薬を避けていた患者が治療対象として顕在化する可能性もある。

インドでもアトピー性皮膚炎の認知や診断が進んでおり、都市化、環境曝露、生活様式の変化などが疫学に影響している可能性がある。提示資料では地域別患者数の詳細はないが、人口規模が大きいため、有病率が欧米より低くても中等度~重度患者の絶対数は大きくなり得る。

ここで注意すべきなのは、世界2.6%、約2億405万人という数値はアトピー性皮膚炎全体の患者数であり、そのすべてが中等度~重度ではない点である。同様に、小児11.1%、成人6.3%というポイント有病率もAD全体を示している。中等度~重度市場を評価するには、その中から重症度別に患者を抽出する必要がある。

また、Patient Care Onlineの「中等度57.1%、重度32.5%」という割合も、全世界のAD患者にそのまま適用できるとは限らない。特定の診療集団は一般人口より重症患者が多く集まりやすいためである。したがって、一般人口有病率と専門医療機関での重症度分布は分けて解釈する必要がある。

市場・疫学上で特に重要なのは、「診断患者」と「十分に治療されている患者」が一致しないことである。中等度~重度と診断されていても、アクセス、費用、安全性への懸念、治療選好などから十分な全身治療を受けていない患者が存在する。成人の55%超が不十分な疾患コントロールを報告しているというデータは、この治療ギャップの大きさを示している。

治療の基本は、炎症を抑えること、皮膚バリアを回復・維持すること、増悪頻度を減らすことである。軽症から中等症ではまず保湿剤と外用抗炎症薬が中心となり、皮膚乾燥やバリア機能障害を改善しながら炎症を抑える。

外用治療としては、ステロイド外用薬とカルシニューリン阻害薬が主要な選択肢となる。病変部位、年齢、皮膚の厚さ、症状の強さなどに応じて使い分けられる。

しかし、中等度~重度で外用治療だけでは十分な効果が得られない患者では、全身療法が必要となる。従来から使用されてきた全身性免疫抑制薬として、シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリンなどが挙げられる。

これらは免疫反応を広く抑制して炎症を低下させるが、長期使用では安全性やモニタリングが課題となる。そのため、近年は特定の免疫経路を狙う標的治療への移行が進んでいる。

代表的な生物学的製剤がデュピルマブである。2型炎症に関与する特定のサイトカインシグナルを阻害することで、皮膚炎やそう痒を改善することを目的とする。中等度~重度AD治療において、従来の広範な免疫抑制とは異なる標的型治療の代表例となっている。

さらにJAK阻害薬も重要な治療選択肢となっている。JAK経路は複数の炎症性サイトカインのシグナル伝達に関与しており、この経路を抑制することで比較的迅速な炎症・そう痒改善が期待される。

こうした生物学的製剤やJAK阻害薬の登場により、中等度~重度ADでは治療目標そのものが変化している。従来は「症状をある程度抑える」ことが中心だったのに対し、現在は皮疹の大幅改善、そう痒の低減、睡眠や生活の質の改善、長期的な疾患安定化まで目指す方向に進んでいる。

補助療法としては光線療法も用いられる。全身薬をすぐに導入しない患者や特定の状況では、紫外線療法によって皮膚炎症を抑えることが検討される。

また、中等度~重度ADでは皮膚バリア障害を背景に細菌感染などを合併しやすいため、感染管理も重要である。感染徴候がある場合には適切な治療を行い、皮膚状態の悪化を防ぐ必要がある。

誘因回避も長期管理の重要な部分である。患者ごとに増悪させるアレルゲン、刺激物、乾燥、発汗などを把握し、可能な範囲で避けることでフレア頻度を減らす。

市場の観点では、中等度~重度ADは非常に大きな慢性疾患市場である。患者数が多く、長期治療を必要とするうえ、生物学的製剤やJAK阻害薬などの高付加価値治療が普及しているため、治療市場の拡大余地が大きい。

特に、成人中等度~重度患者の55%超が十分にコントロールされていないという点は、新規治療への潜在需要が大きいことを示す。また、毎日のそう痒86%、12時間以上続く症状63%、皮膚痛61%というデータから、単なる皮疹改善以上の包括的治療ニーズが存在する。

小児・青年患者も重要な市場である。5歳未満で発症する例が多く、青年層では重症例の割合が36.9%と、若年小児の28.2%より高いとされる。小児期から長期間治療が必要になる患者では、安全性と長期有効性を両立する治療が特に重要となる。

2026~2035年の患者数や治療需要を考えるうえでは、単純なAD有病率の増加だけでなく、重症度評価の標準化、専門医受診率の上昇、新規治療へのアクセス改善なども重要となる。これまで外用治療だけで不十分に管理されていた患者が、中等度~重度として正式に評価され、全身治療へ移行するケースが増える可能性がある。

全体として本レポートは、中等度~重度アトピー性皮膚炎を「世界に約2億人規模の患者が存在するアトピー性皮膚炎の中で、持続する炎症、強いそう痒、疼痛、広範な皮疹により、特に大きな生活の質低下をもたらす患者群」と位置づけている。アトピー性皮膚炎全体の世界有病率は約2.6%とされ、小児・青年では11.1%、成人では6.3%というデータも示されており、幅広い年齢層に大きな疾患負担が存在する。

米国では成人約1,650万人がADを有し、そのうち約660万人が中等度~重度とされる。小児でも約960万人が罹患し、約3分の1が中等度~重度である。欧州の英国、フランス、イタリアでは、同定された患者のうち中等度が78~84%、重度が16~22%を占めるとされ、地域を問わず治療負担の大きい患者群が存在する。

一方で、資料中にはAD全体の有病率と、中等度~重度に限定した臨床集団の重症度分布が混在しているため、数字を直接合算して患者数を算出することには注意が必要である。世界2億405万人という数値は中等度~重度患者数そのものではなく、AD全体の推定患者数である。

2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、診断率の向上、疾患重症度のより正確な評価、成人まで持続する慢性患者の蓄積、そして全身療法の対象拡大が治療患者数を押し上げる主要因になると考えられる。また、新しい治療により疾患コントロール目標が高まることで、従来「ある程度症状が残っていても管理可能」とされていた患者も、新規治療の対象になる可能性がある。

したがって、今後の中等度~重度AD管理における中心的課題は、症状の重さとQOLへの影響を適切に評価すること、外用治療で不十分な患者を早期に全身治療へつなげること、シクロスポリンなどの従来型免疫抑制薬と、デュピルマブやJAK阻害薬などの標的治療を患者ごとに使い分けること、そしてそう痒、皮膚痛、睡眠障害、感染、アレルギー性併存疾患まで含めて長期的に管理することである。2026~2035年は、中等度~重度ADを単に「重い湿疹」として扱うのではなく、2型炎症を中心とする慢性全身性疾患として評価し、より精密で持続的な疾患コントロールを目指すことが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。

※目次構成

01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件

02
エグゼクティブサマリー

03
中等度~重度アトピー性皮膚炎市場概要(8主要市場)
3.1 中等度~重度アトピー性皮膚炎市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 中等度~重度アトピー性皮膚炎市場の予測市場規模(2026年~2035年)

04
中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学概要(8主要市場)
4.1 中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2025年)
4.2 中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学予測(2026年~2035年)

05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断

06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因

07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 8主要市場における中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける中等度~重度アトピー性皮膚炎疫学状況(2019年~2035年)

16
患者経路

17
治療課題および未充足ニーズ

18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察

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