ダイカスト金型用鋼の競争環境分析:シェア、市場拡大要因、年平均成長率5.8%見通し
ダイカスト金型用鋼とは
ダイカスト金型用鋼とは、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの非鉄金属合金を高圧鋳造する際に使用する金型のキャビティ、コア、主要支持部品に用いられる高性能工具鋼である。溶融金属による高温・高圧負荷や高速衝突、加熱と冷却の反復に耐える必要があり、高温強度、耐熱疲労性、耐摩耗性、靭性、耐ヒートチェック性、被削性が重要となる。熱間工具鋼の一分野に位置付けられるが、鍛造や熱間押出しなどに使われる鋼種全般とは用途が異なる。

図. ダイカスト金型用鋼の世界市場規模

QYResearch調査チームの最新レポート「ダイカスト金型用鋼―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」によると、世界市場は2025年に25億7,100万米ドルと推定され、2026年には27億3,200万米ドルに達する見通しである。2026~2032年の年平均成長率(CAGR)は5.8%で、2032年には38億3,300万米ドルへの拡大が予測される。2025年の世界販売量は47万9,000トン、平均販売価格は原文記載値に不明瞭な箇所があるため、ここでは確定値として扱わない。なお、2026年の市場規模と2032年の予測値は、CAGR 5.8%とおおむね整合している。
高品質H13と再溶解技術が支える製品高度化
代表的な鋼種にはAISI H13、H11、DIN 1.2344、1.2343があり、高純度H13、エレクトロスラグ再溶解(ESR)鋼、Dievar、DAC、DH31、Thermodurなどの高性能鋼も採用されている。2025年にはH13および同等鋼種が市場売上高の42.32%を占め、主要な製品群となった。一方、金型の大型化や長寿命化に伴い、標準H13から改良型・高品質H13、さらに高性能熱間工具鋼へ需要が移ると見込まれる。
ESRなどの再溶解技術は、鋼中の介在物や成分の偏りを抑え、清浄度と品質の安定性を高める手段である。大型金型では断面内部まで均一な靭性や熱処理特性を確保することが難しく、鋼材の製造品質に加え、鍛造・熱処理条件や加工工程との適合性も金型寿命を左右する。
自動車の大型一体鋳造が需要を牽引
最大の用途分野は自動車であり、2025年には世界市場の売上高の66%を占めると予測されている。電気自動車を含む新エネルギー車の生産拡大、大型構造部品の一体鋳造、大型ダイカスト設備の導入は、高い靭性、耐熱強度、耐熱疲労性を備えた金型用鋼への需要を押し上げる要因となる。消費者向け電子機器や産業機械も主要な需要先であり、製品の薄肉化・複雑形状化に伴って金型への要求水準が高まっている。
供給面では、近年、世界の有効生産能力の伸びが需要の伸びを上回り、需給が一時的に緩和した。中国企業による高品質工具鋼の増産に加え、2023~2025年には欧州の自動車、産業設備、金型分野で投資が弱含みとなり、供給過剰感が生じた。2024~2025年の販売量は高水準ながら横ばいで推移し、エネルギー・原材料コストの低下や競争激化も販売価格を押し下げたとされる。今後は在庫調整の進展と大型鋳造案件の拡大により、販売量の緩やかな回復が期待される一方、一定の余剰能力が残る可能性がある。
中国の生産拡大と主要メーカーの競争戦略
中国はダイカスト金型用鋼の主要な生産・消費市場であり、2025年には世界生産量の43%、販売量の39%を占めると予測されている。中国メーカーは高純度化、熱処理特性の改善、ESR鋼や大型鋼材の開発を進め、中高級品市場への参入を加速している。今後の成長は需要量の増加に加え、高付加価値鋼種への転換による平均販売単価の上昇にも左右される。
主要企業にはVoestalpine、Daido Steel、Proterial、Aubert & Duval、Kind & Co.、Sanyo Special Steel、Nippon Koshuha Steel、Swiss Steel Group、Carpenter Technology、Fushun Special Steel、Tiangong International、Dongbei Special Steel、Baosteel Special Steel、CITIC Special Steel、Jiangsu Yonggangが挙げられる。欧州、日本、北米のメーカーは高級鋼種、独自合金、再溶解技術で強みを持つ。競争の焦点は生産能力や価格から、鋼材の清浄度、断面全体の靭性、耐熱疲労性、熱処理適合性、顧客との共同開発へ移りつつある。
大型金型の実用化と今後の市場機会
2026年9月、BühlerはVolvo EX60向けの大型一体鋳造技術が欧州で量産段階に入ったと発表した。車体後部の構造部品をアルミニウム合金で一体成形し、従来約100点の部品を置き換える事例である。こうした大型鋳造の進展は、金型の大型化と長寿命化を促し、鋼材の焼入性や内部品質への要求を高める。
製品形態では鍛造ブロック、圧延棒鋼、プレート、前加工済みブロックなどがあり、用途は自動車、電子機器、産業機械に広がる。アルミニウム合金向け金型を中心に、マグネシウム、亜鉛、銅合金の鋳造条件に適した鋼種選定も重要となる。今後は標準H13の価格競争に加え、大型断面での割れ抑制、熱疲労によるヒートチェックの低減、加工・熱処理の安定性を総合的に評価することが、ダイカスト金型用鋼の差別化につながる。
本記事は、QY Research発行のレポート「ダイカスト金型用鋼―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」に基づき、市場動向および競合分析の概要を解説します。
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