世界の後天性血友病Aの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の後天性血友病Aの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Acquired Hemophilia A Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、後天性血友病A(Acquired Hemophilia A:AHA)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。AHAは、凝固第VIII因子(factor VIII:FVIII)に対する自己抗体が後天的に産生され、その活性が中和されることで出血傾向をきたす非常にまれな自己免疫性出血性疾患である。Yanhui Liuらの2023年の報告では、適切な治療が行われない場合には致死的出血につながる可能性があり、死亡率は9~41%と幅広く報告されている。調査会社は、AHAが極めて希少である一方、診断遅延や見逃しによって重篤化し得るため、疾患認知の向上、迅速な診断、専門的な止血・免疫抑制治療が重要であるとしている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病・発症状況、年齢、性別、診断患者数などの疫学動向を分析している。
AHAの本質は、もともと先天的な凝固因子欠乏を持たない人に、FVIIIを阻害する自己抗体、いわゆるインヒビターが出現することである。この自己抗体によって内因系凝固反応が阻害されると、血液を十分に凝固させることができなくなり、自然出血や外傷後出血が起こりやすくなる。
先天性血友病Aとは病態が明確に異なる。先天性血友病Aは遺伝性のFVIII欠乏症で、主として男性にみられ、幼少期から出血歴を持つことが多い。一方AHAでは、これまで出血歴のなかった成人や高齢者、あるいは産後女性に突然出血が出現する。したがって、「既往に出血傾向がないのに新たに重度出血が生じた」という点が診断上重要な手掛かりになる。
出血部位も先天性血友病とはやや異なる。AHAでは皮下、筋肉、消化管、軟部組織などで出血することが多く、広範な皮下出血や大きな血腫として発見されることがある。出血量が多い場合には貧血や循環動態悪化につながり、緊急治療が必要となる。
基礎疾患としては、自己免疫疾患、悪性腫瘍、妊娠・分娩関連の免疫変化などが関係する場合がある。一方、明確な誘因を特定できない特発性症例も存在する。このため、AHAと診断した後には単に出血を止めるだけでなく、背景疾患の検索も重要になる。
疫学的には極めてまれである。Andrea Lehoczkiらの2024年の報告では、世界的な年間発症率は人口100万人あたり約1~1.78例とされる。Dandan Yuらの2023年の報告でも年間約1.5例/100万人とされ、複数研究がおおむね同程度の希少性を示している。
したがって、AHAは一般臨床で頻繁に遭遇する疾患ではない。しかし、患者数の少なさとは対照的に、見逃した場合の出血リスクと死亡リスクが高いため、希少疾患であっても臨床的インパクトは大きい。
年齢との関連は明確である。60歳以上では年間発症率が人口100万人あたり約3~4例に上昇するとされ、一般人口より明らかに高い。つまりAHAは高齢者に強く偏る疾患であり、人口高齢化は2026~2035年の患者数を押し上げる可能性がある。
この年齢依存性は、加齢に伴う免疫調節異常、自己免疫疾患、悪性腫瘍などの増加と関連している可能性がある。高齢者では複数の併存疾患や抗血栓薬使用も多いため、出血が起きた際にAHA以外の原因と混同されやすいという診断上の問題もある。
性別では、先天性血友病Aと異なり、男女の両方に発症する。Andrea Lehoczkiらの2024年の報告では、男性対女性比は約1.2:1とわずかな男性優位である。ただし、若年女性では妊娠・分娩関連の免疫反応を背景とする産後AHAが重要な患者群となる。
このため、AHAの年齢・性別分布は二峰性の特徴を示すことがある。すなわち、高齢男女の患者群と、妊娠・分娩に関連した若年女性患者群である。とはいえ、全体の患者数では高齢者が大きな割合を占める。
Dandan Yuらの2023年の報告では、約10%の患者が無症候性である可能性が示されている。つまり、凝固検査異常やインヒビターが存在しても明らかな出血を示さない患者が一部存在する。一方、多くの患者では軽度から生命を脅かす重度まで幅広い出血が起こる。
この症状の多様性も診断を難しくする要因である。典型的な大出血患者では疑いやすいが、軽度の皮下出血や原因不明の貧血だけの場合には、抗凝固薬の影響、血小板異常、肝疾患など別の原因と考えられることがある。
診断では凝固検査が極めて重要である。とくに、既往に出血傾向がない患者で活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)が延長している場合にはAHAを疑う必要がある。その後、FVIII活性やFVIIIインヒビターの測定などによって診断を確定する。
早期診断が重要なのは、出血の進行を防ぐだけでなく、通常の凝固因子補充だけでは十分な効果が得られない場合があるためである。FVIIIに対する自己抗体が存在する以上、その自己抗体を回避した止血戦略が必要になる。
国別では、米国の年間発症率はHemophilia Federation of Americaによると人口100万人あたり約0.2~1.0例と推定されている。これは世界平均の1~1.78例/100万人よりやや低い範囲も含むが、希少性という点では一致している。
英国では、Chantal Tianらの2023年の報告で、年間発症率は100万人あたり約1.48例とされる。これは世界推定の中心付近に位置する値であり、比較的整備された医療システムにおけるAHAの実際の疾患負担を示すデータといえる。
ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、日本、インドについては、提示資料では具体的な国別発症率は示されていない。ただし、AHAは高齢者に多いため、人口高齢化が進む欧州や日本では絶対患者数が増える可能性がある。
一方、インドのように人口規模が大きい国では、発症率自体が低くても絶対数として一定の患者が存在すると考えられる。ただし、希少疾患に対する診断設備や専門医療へのアクセスが限られる地域では、実際の患者数が過小評価されている可能性がある。
市場・疫学上の大きな課題は、AHAが「まれすぎるため疑われにくい」ことである。高齢者の出血では、抗凝固薬・抗血小板薬による出血、消化管疾患、血小板減少、肝障害など、より一般的な原因が先に考えられる。そのためAHAの診断が遅れる可能性がある。
産後女性でも同様に、分娩後出血が産科的原因と判断され、AHAという自己免疫性凝固障害がすぐに認識されない場合がある。したがって、通常の処置で説明できない持続性出血や凝固異常がある場合には、AHAを鑑別診断に含めることが重要となる。
死亡率は研究によって9~41%と非常に幅広い。この差には、患者年齢、基礎疾患、出血の重症度、診断までの時間、治療アクセス、研究年代などが影響している可能性がある。とくに過去の研究では治療選択肢が限られていたため、現在より死亡率が高かった可能性も考えられる。
したがって、9~41%という範囲を単一の現在の死亡率として解釈するのではなく、AHAが状況によっては高い致死性を持つ疾患であることを示す指標として理解するのが適切である。
治療には大きく二つの目的がある。一つは現在起きている出血を止めること、もう一つはFVIIIインヒビターを産生する自己免疫反応そのものを抑えてインヒビターを消失させることである。
急性出血の止血には、バイパス製剤が重要となる。代表的には遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)や活性化プロトロンビン複合体製剤(aPCC)が用いられる。これらはFVIIIに依存する凝固経路を「迂回」し、インヒビターが存在していても血栓形成を促進することを目的とする。
つまり、通常のFVIII補充とは異なり、自己抗体に阻害されるFVIIIそのものを補うのではなく、その下流または別経路から凝固反応を成立させるという考え方である。
一方、インヒビターを根本的に減らすためには免疫抑制療法が必要となる。代表的にはコルチコステロイド単独、またはシクロホスファミドとの併用が用いられる。また、リツキシマブが使用されることもある。
免疫抑制療法の目的は、FVIIIに対する自己抗体産生を抑え、最終的にFVIII活性を回復させることである。出血が止まってもインヒビターが残っていれば再出血リスクがあるため、止血療法と免疫抑制療法は別々の目的を持ちつつ、並行して重要となる。
治療選択は、出血の重症度、インヒビター力価、FVIII活性、年齢、基礎疾患、感染リスクなどによって異なる。特に高齢患者では、強力な免疫抑制による感染症などの副作用が大きな問題となるため、出血コントロールと治療毒性のバランスを慎重に評価する必要がある。
支持療法としては、出血による高度貧血に対する輸血などが行われる。また、重度出血患者では循環管理、画像検査による出血部位評価なども必要になる。
AHAでは専門的な多職種管理が重要である。血液内科を中心に、出血部位によっては救急科、外科、産婦人科、集中治療、輸血部門などが連携する必要がある。特に産後症例では産科と血液内科の早期連携が重要となる。
治療後も再発リスクがあるため、FVIII活性やインヒビター値などを定期的にモニタリングする必要がある。免疫抑制治療によって寛解しても、その後再びインヒビターが出現する患者が存在するためである。
市場の観点では、AHAは患者数の非常に少ない超希少疾患である一方、一人の患者に対する治療強度や医療資源投入が大きい。急性期には高額な止血薬、入院管理、輸血などが必要となり、その後も免疫抑制療法と長期モニタリングが続く。
また、高齢者での発症が多いため、人口高齢化は今後の市場拡大要因となる可能性がある。特に日本や欧州などでは60歳以上、さらに75歳以上の人口が増えるため、発症率が一定でも絶対症例数が増える可能性がある。
一方、AHAは診断率の影響を強く受ける疾患でもある。医療者の認知が向上し、原因不明のaPTT延長や出血に対してFVIIIインヒビター検査がより積極的に行われるようになれば、従来未診断だった患者が新たに把握される可能性がある。
したがって、2026~2035年に診断患者数が増加した場合、それは真の発症率増加だけでなく、高齢化と診断精度向上の両方を反映する可能性が高い。
全体として本レポートは、AHAを「年間発症率が人口100万人あたり約1~1.78例という超希少疾患である一方、FVIIIに対する自己抗体によって重篤な自然出血を起こし、適切に治療されなければ致死的となり得る自己免疫性凝固障害」と位置づけている。
年齢では60歳以上で発症率が約3~4例/100万人年まで上昇し、高齢者での負担が特に大きい。男女とも発症し、男性対女性比は約1.2:1とわずかな男性優位だが、若年女性では妊娠・産後関連症例が重要なサブグループとなる。また、約10%は明確な症状を示さない可能性がある一方、重症例では生命を脅かす出血を起こす。
米国では年間0.2~1.0例/100万人、英国では約1.48例/100万人とされ、いずれも希少性を示している。他の主要市場については詳細な数値が限定的であり、特に診断体制の違いによる過少報告に注意が必要である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、人口高齢化、高齢者での自己免疫・悪性腫瘍関連症例の増加、医療者の疾患認知向上、凝固検査・インヒビター検査の普及などが診断患者数を押し上げる主要因になると考えられる。
したがって、今後のAHA管理における中心的課題は、過去に出血歴のない患者に突然出現した重度出血とaPTT延長から早期に疾患を疑うこと、FVIII活性とインヒビター検査によって迅速に診断すること、rFVIIaやaPCCなどで出血を速やかに制御すること、そしてコルチコステロイド、シクロホスファミド、リツキシマブなどによって自己抗体産生を抑え、再発まで含めて長期管理することである。2026~2035年は、AHAを「極めてまれなため見逃されやすい出血性疾患」としてではなく、「早期診断と専門治療によって予後を改善し得る高リスク自己免疫性血液疾患」として認識し、診断遅延を減らすことが臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
後天性血友病A市場概要(8主要市場)
3.1 後天性血友病A市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 後天性血友病A市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
後天性血友病A疫学概要(8主要市場)
4.1 後天性血友病A疫学状況(2019年~2025年)
4.2 後天性血友病A疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 8主要市場における後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける後天性血友病A疫学状況(2019年~2035年)
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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