保育者の“見えない判断”を語る全国大会 HOIKU CREATIVE BATTLE 2026、4名それぞれに賞
保育を学ぶ学生・若手保育者4名が、自身の「判断のプロセス」を発表。高校生審査員は、技術だけでなくその背後にある価値観を見ていた
保育みらいフォーラム実行委員会(事務局:信州子育てみらいネット・長野県)は、2026年9月5日(土)・6日(日)の2日間、「保育みらいフォーラム2026/HOIKU CREATIVE BATTLE 2026」を長野市内で開催しました。保育を学ぶ学生・若手保育者が、自身の実践における「判断のプロセス」や「葛藤」を語るステージ型の発表大会です。全国から選出された4名のファイナリストが決勝に登壇。専門審査員、特別ゲスト、高校生審査員12名、実行委員会が、それぞれ異なる価値軸から各賞を選定し、4名全員にそれぞれの賞が贈られました。
「見えない教育」を、見える言葉に
保育の現場では、子ども同士のいさかいに「いつ介入し、いつ見守るか」といった判断が日常的に積み重ねられています。しかしその判断の根拠も、その裏側にある葛藤も、日々の業務に埋もれて外からはほとんど見えません。結果として保育士の専門性は社会的に評価されにくく、進路を考える高校生にとっても、この仕事の奥行きが伝わりにくい状況が続いてきました。
HOIKU CREATIVE BATTLE は、この見えにくさそのものを主題に据えた大会です。発表者に求められたのは、うまくいった実践の披露ではなく、「なぜその判断をしたのか」を自分の言葉で語ることでした。
大会の冒頭、学生実行委員として運営を担った長野県立大学健康発達学部こども学科2年生の前阪美都さんは、「保育にはいつでも一つの答えがあるわけではありません。同じ場面を見ても、何に気づき、何を大切にし、どのような行動を選ぶのかは一人ひとり違います」とあいさつ。高校生審査員に向けては、「自分の憧れの先輩を見つけるような気持ちで」参加してほしいと呼びかけました。

開催概要
名 称: 保育みらいフォーラム2026/HOIKU CREATIVE BATTLE 2026
日 程: 2026年9月5日(土)・6日(日)
会 場
DAY1 権堂イーストプラザ市民交流センター(長野市)
DAY2 長野県立大学 三輪キャンパス(長野市)
主 催: 保育みらいフォーラム実行委員会
事務局: 一般社団法人信州子育てみらいネット
後 援: こども家庭庁、長野市、長野県教育委員会、長野市教育委員会、長野県立大学
メディアパートナー: 株式会社長野放送(NBS)
受賞者と選定理由
本大会は保育の専門性や奥深さ、ロールモデル性、子どもとの関係性・表現、新しい保育の可能性など、異なる価値軸を設け、ファイナリスト全員がそれぞれの軸で評価される設計としました。
■ HOIKU CREATIVE大賞 鎌倉 心琴(かまくら みこと)さん 横浜保育教育専門学校/20歳(神奈川県)
保育の専門性や奥深さを最も広く伝えた発表に贈られる賞。実習などで「当たり前」とされている関わりを、もう一度「これでいいのか」と捉え直す視点と、まず子どもの姿を見守ろうとする姿勢が評価されました。高校生の記録にも「1のリスクより99の経験」「見守る勇気を、私も持ちたい」といった言葉が残っています。
■ 高校生ロールモデル賞 仲谷 美奈穂(なかたに みなほ)さん 関西女子短期大学 保育学科/18歳(大阪府)
高校生審査員が「この人みたいになりたい」という視点から選出。表彰の場では「話し方がとても魅力的で、あなたにしかできないことだと思っています」との言葉が贈られました。子どもに分かりにくいことを道具を使って“見える化”する工夫、また一方的に順番を伝えるのではなく、子どもとの約束を大切にしながら新しい約束をつくっていく発想も評価されました。
■ 上原りさ賞 吉村 仁南(よしむら にいな)さん 長野県保育園 勤務/20歳(長野県)
特別審査委員の上原 りささんによる選出。子どもの意見を尊重し、一人ひとりの状況に合わせて話し方や対応を変えようとする姿勢が評価されました。上原さんは、日々試行錯誤しながらも「1対1の関わりを大切にしたい」とする姿に共感したと選定理由を語っています。
■ あなたに届いたで賞 秋山 翔太(あきやま しょうた)さん 横浜保育教育専門学校/20歳(神奈川県)
困っている子どもに対して大人がすぐに解決するのではなく、その感覚に丁寧に寄り添いながら一緒に解決策を探そうとする姿勢が評価されました。子ども自身に「ここなら大丈夫だった」「こうしたらできた」という安心と喜びが残る関わりとして選出されています。
なお、ファイナリスト全員および高校生審査員には参加証明書を発行し、結果だけでなく、参加し挑戦したことそのものを称えました。

審査委員長総評
審査委員長を務めた長野県立大学 健康発達学部長の太田 光洋さんは、幼児教育・保育は「見えない教育」と言われており、保育者がどのような専門的知識や技術を持ち、何を考えて判断しているのかは外から見えにくいと説明。そのうえで、こうした機会を通じて「保育者がどんなことを考え、どんな専門的な知識や技術を持ちながら判断しているのか」が広く知られてほしいと述べました。
高校生は、『何をしたか』ではなく、『なぜそうしたのか』を見ていた。
本大会の大きな特徴の一つが、高校生が審査員として参加していることです。高校生に求めたのは、専門家のように技術を評価することではありません。「この人みたいになりたい」と思えるかどうか。将来のロールモデルを見つけるような視点で、発表に向き合ってもらいました。
今回は12名の高校生審査員が参加しました。大会後、実行委員会が確認できた11名分のワークシートを振り返ると、いくつかの共通する気づきが見えてきました。「保育士=保育園で働く人」というイメージが、発達支援や療育、特別支援との出会いによって広がっていたこと。「待つのか、動くのか」「見守るのか、介入するのか」といった保育者の判断を、自分なりの言葉で捉えようとしていたこと。そして、DAY1で生まれた疑問や気づきが、DAY2の発表を見る視点へとつながっていたことです。
高校生ロールモデル賞の選定理由にも、その視点は表れていました。評価されたのは、発表の上手さや目立つ技術だけではなく、「見守る勇気」「当たり前だと思わない」「一貫させる」といった、判断の根底にある考え方や姿勢でした。
高校生は、その人が何をしたかだけでなく、なぜそうしたのか、何を大切にしているのかを見ていた。
それは、今回の大会を通じて見えてきた大きな発見の一つでした。
審査委員総評
審査委員を務めた株式会社チャイルド社の代表取締役社長 柴田 洋平さんは、少子化や事故、不適切保育など保育をめぐる報道には暗い話題が目立つ一方で、ニュースにならないだけで全国の保育園・幼稚園では日々、価値ある子どもの成長が積み重ねられていると述べました。そのうえで、第1回となる今回の取り組みが外へ広がり、より多くの人が保育への関心や熱意を持つきっかけになれば大きな意味を持つ、と総括しています。
主催者コメント
保育みらいフォーラム実行委員会 事務局長/一般社団法人信州子育てみらいネット 代表理事 山岸 裕始
「この大会で見たかったのは、保育者が迷いながら何を大切にし、なぜその判断をしたのかという部分です。実際、高校生の記録には『見守る勇気』『当たり前だと思わない』といった言葉が残りました。保育の専門性は技術だけでなく、その一つひとつの判断にも宿っています。それが高校生自身の言葉によって見える形になったことに、大きな意味を感じています。
この取り組みを一度きりで終わらせるのではなく、10年後にも続いている大会にしていきたいと考えています。来年は引き続き長野で開催し、その次の年には東京での全国大会開催も視野に入れながら、保育の仕事の奥深さや魅力が、社会や次の世代へ届いていく機会を育てていきたいと思います。」