夏フェスで体験した、ネッククーラーの可能性

フェスは、予定どおりに回れないから楽しい。
夏フェスに行く前の晩は、タイムテーブルのスクリーンショットに何本も線を引く。朝いちばんのステージから、夕方の本命まで。移動時間も食事の時間も考えて、自分なりの完璧な一日をつくる。
でも、会場に着くと、その予定はだいたい崩れる。知らないアーティストの一曲に足を止め、友人の「次、こっち行こう」で進路を変え、フードの列で前後になった人とさっきのステージの話をする。僕は、その予定外まで含めてフェスが好きだ。
ある夏の朝。駅のホームには、好きなバンドのTシャツを着た人が増えていく。改札を出ると、同じ方向へ歩く人の波ができている。まだ音は聞こえないのに、会場へ近づくほど、身体だけが少し先に浮き足立っていく。
ゲートでリストバンドを巻いてもらい、会場へ入る。遠くで鳴った低音に、周りの人がいっせいに顔を上げる。あの瞬間、「今年も来た」と思う。
一曲で、予定は簡単に変わる。
次のステージへ急いでいる途中、遠くから知らない曲のイントロが聞こえてくる。ほんの一曲だけ、と立ち止まる。曲が終わるころにはアーティスト名を検索し、その次の曲まで聴いている。こうして、昨夜つくった予定に最初の余白ができる。
ステージを離れると、肉を焼く煙とスパイスの匂いが流れてくる。冷たいドリンクを受け取って、日陰を探しながら次の出演者を確認する。少し離れたステージから知っているサビが聞こえ、食べかけのまま立ち上がりそうになる。
昼は白く見えたステージが、日が傾くにつれて金色に変わる。逆光の中で鳴るイントロに歓声が上がり、知らない人たちの手が同じタイミングで上がる。日が落ちると照明の輪郭が急に濃くなる。朝からずっと同じ場所にいるのに、時間ごとに別の景色へ連れていかれる。
暑さは、最後の一曲より先に体力を終わらせる。
夏フェスでは、観ている時間と同じくらい歩いている。ステージからステージへ移動し、フードやトイレの列に並び、また立ったまま音を待つ。日差しの下では、首元に汗がたまり、冷たかったドリンクもすぐにぬるくなる。
本当はもう一組観たいのに、日陰から出る気力が戻らない。「最後に一曲だけ」ができず、遠くの音を聞きながら出口へ向かう。暑さのつらさは、汗の量より、楽しみにしていた一曲を自分から諦める瞬間に出る。
昼を過ぎたころ、次のステージへ向かう前にバッグから取り出したのが、ネッククーラー「Chill Hold(チルホールド)」だった。休憩中と移動中だけでも首元を冷やせればと思い、この日の荷物に加えていた。
首元に巻いた瞬間、「あ、これ違う」。
モバイルバッテリーにつないでスイッチを入れる。冷却プレートが首に触れた瞬間、思わず「あ、これ違う」と声が出た。冷風が当たるというより、熱を持った首元に冷たい面が置かれる感覚だった。
Chill Holdは、首の左右と中央にある3つのペルチェ式冷却プレートで、首元へ直接冷たさを伝える。風を当てるタイプではないから、装着した瞬間に変化が分かりやすい。会場で見えたのは、まずその速さだった。
ステージの音が鳴っている間、排熱ファンの音はほとんど意識に入らなかった。一方、音が途切れた休憩中や帰りの電車では、音もケーブルも存在感を取り戻す。フェス会場で気にならないことと、どこでも気にならないことは同じではない。
今回は、休憩中とステージ間の移動を中心に使った。朝の入場から夜の終演までつけ続けたわけではないし、熱中症を防げると確かめたわけでもない。「これがあれば一日平気」とは言えない。
それでも、首元が冷えたとき、「次のステージまで歩こう」と思えた。ネッククーラーの可能性は、夏の暑さを消すことではなく、「あと一曲、聴いていこう」と思える余白をつくることなのかもしれない。
フェス道具は、存在を忘れられるほうがいい。
フェスでは、目も手も忙しい。スマートフォンでタイムテーブルを確認し、ドリンクを持ち、汗を拭き、買ったTシャツをバッグへ押し込む。イントロが鳴れば、全部そのままにしてステージを見たい。そんな日に使う道具は、役に立つだけでなく、意識を奪わないことが大事だ。
Chill Holdは約185g。マジックテープとスナップボタンで首元に固定し、10分冷却・2分停止を繰り返す「ゆらぎモード」を備えている。位置を直す回数や、冷たさを確かめる回数が減れば、そのぶん目の前のステージに集中できる。
もちろん、モバイルバッテリーとケーブルは必要になる。ポケットがひとつ埋まり、スマートフォン用の電力も気にしなければならない。荷物を減らしたい日なら、濡らしたタオルのほうが気楽だ。フェスへ持っていくかは、性能の高さより、「次のステージへ向かう自分を邪魔しないか」で決めたい。
帰りの電車で思い出したいのは、暑さではない。
帰りの電車で思い出したいのは、朝いちばんに鳴ったイントロ、夕日に透けたステージ、知らない人と同時に上げた手、最後の曲が終わったあとの少し寂しい拍手だ。暑かったことだけで一日が上書きされるのは、もったいない。
ネッククーラーがフェスの主役になる必要はない。首にかけていたことを忘れたまま、次のステージまで歩き、もう一曲だけ聴ける。それくらいの脇役でいてくれたらいい。
もちろん、水分と塩分をとり、日陰で休むことが大前提だ。体調に異変を感じたら、道具に頼って歩き続けず、活動をやめて救護スタッフや周囲の人に助けを求めてほしい。
PowerArQ Chill Holdの詳しい仕様は、製品ページで確認できる。道具が主役になる必要はない。帰りたくない一日と、まだ聴きたい一曲を、少しだけ後押ししてくれれば、それで十分だ。
■ 製品概要・仕様
PowerArQ Chill Hold

販売価格:¥12,474(税込)
■ ブランド概要
『PowerArQ』(パワーアーク)/ アウトドアギアブランド

冒険に、あなたらしさを
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