栃木県塩谷町の私有林を集約しJ-クレジット創出・販売で連携協定締結
~個人の森林所有者にクレジット収益を還元~
栃木県塩谷町(町長:見形 和久)、たかはら森林組合(代表理事組合長:佐野 幸隆、栃木県矢板市)、住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎、本社:東京都千代田区)、NTTドコモビジネス株式会社(旧 NTTコミュニケーションズ株式会社、代表取締役社長:小島 克重、本社:東京都千代田区)の4者は10月17日、「森林資源を活用した環境価値創出に関する連携協定」を締結しました。
町内の私有林(個人所有の森林)※1約2,000haの所有者約380人を対象にJ-クレジット※2創出に参加するか意向を調査し2027年のJ-クレジット販売を目指します。収益の一部は個人の所有者に還元します。町有林約160haでも同様にクレジットを創出し、町有林だけで見込める年間200万円程度の収益は森林整備や環境対策事業に充てる予定です。地方自治体が公有林と私有林を対象にJ-クレジットを共同創出・販売し、所有者に収益を直接還元する先駆的な取り組みです。4者が連携して零細な個人所有者の森林資源を維持できる仕組みをつくり、持続可能な森林経営を実現します。
※1. 森林は国が所有する「国有林」とそれ以外の「民有林」に区分されます。「民有林」には個人や会社が所有する「私有林」と自治体等が所有する「公有林」があります。
※2. 適切な森林管理や植林によるCO2等の吸収量、省エネ設備導入や再エネ利用によるCO2等の排出削減量を「クレジット」として国が認証し、取引可能とする制度です。クレジットの購入により、クレジット創出者の吸収・排出削減活動を資金面で支援することができるため、社会全体でのCO2等の排出削減・吸収活動が効果的に推進されます。
参考:J-クレジット制度Webサイト https://japancredit.go.jp/faq/
各者の役割

森林価値創造プラットフォーム(森かち)
森林由来J-クレジットの創出・審査・取引を包括的に支援するプラットフォームで住友林業とNTTドコモビジネスが提供しています。森林クレジットの創出者・審査機関・購入者それぞれに対して地理情報システム(GIS)の機能を提供し発行プロセスの効率化とクレジットの信頼性向上を実現。森林由来J-クレジットの創出・流通活性化を目指しています。本プロジェクトは所有者ごとに森林情報の効率的な管理が不可欠です。新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型)※3も活用しながら「森かち」の機能をフル活用して取り組みます。
(参考)2024年8月27日発表リリース:「日本初、GISで森林由来J-クレジットの創出者・審査機関・購入者の3者を支援する『森林価値創造プラットフォーム』提供開始」
(https://sfc.jp/information/news/2024/2024-08-27.html)
「森かち」WEBサイト(https://morikati.com/)
※3. デジタルを活用し地方の活性化や行政・公的サービスの高度化・効率化を推進する国の支援制度。
プロジェクトのスキーム
- 塩谷町は住友林業にクレジット創出事業の運営を委託。住友林業は町内の森林所有者にJ-クレジット創出に参加するかどうかの意向を調査します。
- 町は同意が得られた森林所有者からJ-クレジット発行の権利を譲り受けます。住友林業はクレジット創出に必要な資料の整備や申請書類の作成などを支援するコンサルティングサービスを町に提供します。
- 町内の森林を管理するたかはら森林組合が森林所有者から受託し森林経営計画に沿った施業(伐採・再造林・保育等)をします。
- 町が「森かち」を通じてクレジットを販売し収益の一部を直接、森林所有者に還元します。
- クレジット創出の過程で得られた様々な森林情報をデジタル化し、「森かち」を通じてたかはら森林組合へ提供します。

背景
塩谷町は人口9,593人(2025年10月1日現在)で町内約6,500haに及ぶ民有林(町有林と私有林)のほぼ全域でJ-クレジットの制度を活用できていません。個人の森林所有者がJ-クレジットを創出するには手続きの煩雑さや継続的なデータ管理などの課題があります。森林が細分化された地域では森林所有者との合意形成、対象森林の位置関係や境界の把握、施業履歴データや森林経営計画などの整備、関係者間の情報共有が困難になっています。
こうした課題を解決するため4者は連携協定を締結しました。塩谷町がプロジェクト管理者として多数の所有者にまたがる小規模森林を一つのプロジェクトにまとめ、クレジットを創出します。「森かち」のプラットフォームと住友林業のコンサルティングサービスで合意形成の負担軽減、データ管理の効率化、クレジット発行に係る手続きを支援します。
一般的に森林組合主体のクレジット創出事業の収益は森林施業費用や設備投資に充てられ、直接、個人所有者の利益として還元されにくい傾向があります。「森かち」は個人所有者ごとにCO2吸収量に関するデータを位置情報と紐づけて管理できるため、個人所有者が多数でもクレジット創出事業の収益管理を効率的に支援できます。森林所有者の収益源を多様化して所得向上を目指し、遊休化した森林資源の活用を促進します。
協定の概要
- J-クレジット創出に関する地域の森林所有者の同意取得に関する事項
- J-クレジットの創出・販売に関する事項
- 森林情報のデジタル化と活用に関する事項
- その他、本協定の目的に資すると当事者が認める事項
今後のスケジュール
2025年度
・森林所有者約380人の意向調査
・対象となる森林の施業履歴、森林経営計画情報の整理。森林計画図や航空レーザー計測など森林情報の収集
2026年度
・対象となる森林をゾーニング(木材生産に適した森林とCO2吸収機能を発揮させる森林を設定)
・「森かち」を活用しプロジェクト登録
2027年度
・クレジットの認証・発行手続きをし「森かち」で販売
「NTTコミュニケーションズ株式会社」は2025年7月1日に社名を「NTTドコモビジネス株式会社」に変更しました。私たちは、企業と地域が持続的に成長できる自律・分散・協調型社会を支える「産業・地域DXのプラットフォーマー」として、新たな価値を生み出し、豊かな社会の実現をめざします。
