【名城大学】CT画像×AI対話で所見自動生成 肺がん診断を支援する新技術を開発
肺がんはがんによる死亡原因の第一位であり、早期かつ正確な診断の実現が強く求められています。しかし、診断にはCT画像など大量の医用画像を用いる必要があり、作業が煩雑であるうえ、医師の経験や知識によって診断精度にばらつきが生じることが課題となっています。
名城大学情報工学部/大学院理工学研究科の寺本篤司教授(医用画像情報解析)と同研究科修士課程2年の長尾茉衣子大学院生らの研究グループは、画像と文章を同時に扱うAI(視覚言語モデル)を応用し、CT画像を見ながら医師が対話形式で所見を生成できる新たな診断支援技術を開発しました。
本技術により、医師間のばらつきを抑えた安定した診断と精度向上が期待されます。
本研究成果は、2026年3月27日にSpringer社の国際学術誌「International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery」に掲載されました。
【ポイント】
・視覚言語モデルを用いて胸部CT画像から肺結節の特徴を文章として自動生成する技術を開発した。
・医師の関心に応じた質問に答えることで、対話的に所見を提示できる新しい診断支援の仕組みである視覚的質問応答技術(Visual Question Answering: VQA)注1)を提案した。
・肺結節の形状や内部構造などの専門的な情報を活用し、画像・質問・所見文を対応づけた新しい学習データを構築した。

【詳細な説明】
1.背景
肺がんは死亡率の高い疾患であり、胸部CT画像を用いた早期診断が重要です。しかし、肺結節の診断では、形状や内部構造など複数の特徴を総合的に評価する必要があり、診断には専門的な知識と経験が求められます。そのため、診断作業は煩雑であり、医師間で判断にばらつきが生じることが課題となっています。近年では深層学習を用いた自動診断技術の研究が進められていますが、多くは良悪性の分類にとどまり、診断の根拠となる所見を説明することが難しいという課題がありました。
2.研究内容及び本成果の意義
本研究では、胸部CT画像と肺結節の形態的特徴に関する構造化情報を活用し、画像・質問・所見文を対応づけたデータセット(VQAデータセット)を構築しました。このデータセットを用いて視覚言語モデルを学習することで、CT画像に対して「形状は?」「内部構造は?」といった質問に応じて、肺結節の特徴を文章として生成する視覚的質問応答技術(Visual Question Answering: VQA)を実現しました(図2)。
従来のAIが単一の診断結果を出力するのに対し、本手法は医師の関心に応じて所見を提示できるため、診断プロセスを支援する新しい枠組みとなります。本技術により、診断のばらつきを低減し、より一貫性のある診断支援が可能となることが期待されます。

【用語説明】
注1) 視覚的質問応答技術(Visual Question Answering: VQA):
画像とそれに関する質問を入力として受け取り、適切な回答を生成するAIタスク。画像認識と自然言語処理を組み合わせたもので、医療・ロボティクス・視覚支援などの分野で注目されている。
【掲載論文】
雑誌名:International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery
タイトル:Visual question answering-based image-finding generation for pulmonary nodules on chest CT from structured annotations(構造化アノテーションを用いた視覚的質問応答による胸部CT肺結節の画像所見生成)
著者名:Maiko Nagao, Kaito Urata, Atsushi Teramoto, Kazuyoshi Imaizumi, Masashi Kondo & Hiroshi Fujita (長尾茉衣子, 浦田海翔, 寺本篤司, 今泉和良, 近藤征史, 藤田広志)
掲載日時: 2026年3月27日
DOI: 10.1007/s11548-026-03608-0
【著者のコメント】
医師が日常的に執筆する診断レポートは自由記載であり、医師による記載方法のばらつきがあります。それらをそのままAIにて学習させても良好な結果が得られないため、本研究ではCT画像の病変を分析した結果を定型化し、それをもとに文章を作成しAIに学習させました。その結果、自由記載の文章を学習させるよりも良好な結果が得られました。このアプローチは正確かつ簡潔に診断結果を記載する手法として、広い応用が期待されます。(寺本篤司 教授)
これまでの画像診断支援AIは判定結果のみが示されることが多く、その判断根拠が分かりにくいことが課題でした。本研究ではこの点に着目し、結節の形状や内部性状、辺縁などの所見を質問ごとに答えさせる手法(VQA)を用いて、診断過程の可視化を目指しました。一方で、各質問への回答が個別には適切でも、全体として整合した説明になるとは限らず、その点に難しさを感じました。さらに、生成された所見文を臨床的な観点から適切に評価することにも苦労しました。(長尾茉衣子 大学院生)
【研究助成金】
本研究は、科学研究費助成事業 基盤研究(C)(2 3 K 0 7 1 1 7)の助成を受けて実施されました。
【本件に関するお問い合わせ先】
・研究内容に関すること
名城大学 情報工学部
教授 寺本 篤司(てらもと あつし)
Tel : 052-832-1151
Email : teramoto@meijo-u.ac.jp
・広報担当
名城大学渉外部広報課
Tel : 052-838-2006
Email : koho@ccml.meijo-u.ac.jp



