特定技能長崎県波佐見町初！株式会社新栄の社員として活躍する外国人大型トラックドライバー誕生　評価試験に合格し、入社したばかりの新戦力

フクオカ―ナゴヤ800キロハンドルに託す「夢の道」インドネシア人運転手の挑戦

2025-12-04 09:30

福岡―名古屋間、約800キロを「希望の道」との思いを込めて走る外国人の大型トラック運転手を紹介します。
大型トラックで走る外国人はまだまだ珍しい存在で、業界のパイオニアとなるべく、活躍を誓う姿とは―。

長崎県波佐見町の運送業、株式会社新栄の社員として、乗務するトラックで真剣な表情を見せているのはインドネシア人シギット・プルワント氏(30)。2025年9月1日に入社したばかりの新戦力です。
同社代表取締役の山脇慎太郎氏(41)は「運転の筋もいいし、真面目で一生懸命。明るいし、ほかの社員も彼を応援する気持ちで一致し、社内の雰囲気も柔らかく明るくなりました」とうれしそうです。

助手席勤務から運転手へ

シギット氏は入社直後から福岡―名古屋の往復コースで、先輩運転手の助手席に座り、荷積み、荷降ろしの仕事を覚えました。特に「帰り車」では、「北九州降ろし」「南九州降ろし」に分かれる荷物を素早く判断して、要領よく積み込むことが求められます。伝票など、もちろん日本語です。正確な読解力も必要です。

そして10月下旬、いよいよハンドルを握ることになりました。今度は先輩が助手席に座ります。通常は、運転手一人で行う乗務ですが、シギット氏は、往路復路で、岡山が先か広島が先にくるかなどがまだ不安定です。また、市街地を通行する際は、カーナビゲーションだけに頼っていたら、狭い道に迷い込むこともあり、安全第一を考えての配慮です。

シギット氏は「でも、だいぶ慣れましたよ。4時間運転後の休憩はどこでとるか、どこのパーキングエリアの駐車場が空いているのか、などが分かってきました」と自信ものぞかせます。大型トラックの駐車は、左右前後、数センチレベルで動かせるかなどの技術が必要です。
山脇氏も、実際の運転や先輩社員の評価を聞いて、その成長ぶりを実感しています。シギット氏が、事務所に立ち寄ったある日、「よーし、11月中旬から、一本立ちだ。頑張れよ、シギット」と、シギット氏を「一人前」と認めることにしました。

外国人労働を取り巻く制度

ここで技能実習生と特定技能についての制度を整理しておきます。技能実習生制度は1993(平成5)年に開始されました。発展途上国支援を目的にしており、技能実習生は労働力ではなく、技術・技能習得を目的にして、帰国後に役立ててもらうものです。

特定技能制度は2019年に始まりました。人材、労働者不足の企業が、外国人を即戦力として雇用するもので、一定レベルの技術・技能、日本語能力などが認められることなどが条件としています。特定技能1号は、滞在5年が認められ、特定技能2号では、滞在期限がなく、配偶者や家族の同居もできるようになります。
技能実習生は、日本人と賃金格差などがありますが、特定技能は、日本人と同等です。技能実習生が、日本語能力、技術・技能の試験を受けて特定技能に移ることもできます。
2024年に法改正により、特定技能の就業可能職種に、運送業、バス・タクシー運転手が加えられました。シギット氏は、その特定技能として新栄に雇用されました。
ある大手運送業福岡支店は「特定技能のトラック運転手は、まだ珍しいです。各運送業社は、運転手不足があり、外国人運転手の採用には興味を持っているようです」と話しています。
シギット氏はまだ全国的にも珍しい外国人トラック運転手のようです。これからのシギット氏の活躍は、技能実習生や特定技能の人たちの就職機会の幅を広げる広告塔になりそうで、大いに期待されています。

技能実習生として来日

シギット氏は、インドネシアでの高校時代、日本の漫画、アニメ映画などに触れ、日本の自然、文化などに触れたいと日本に行くことを希望しました。農業をする父(50)、飲食業を営む母(47)に楽をさせ、弟に大学の道を、との思いを持って技能実習生として長崎市内の造船所で研修しました。休みを利用して、あこがれの富士山山頂まで登るなど、日本での暮らしを満喫しました。
インドネシアでも、もともと自動車の運転が好きで、日本でも運転できるように日本の免許証に切り替え「できれば、トラック運転手になって全国を走りたい」という希望を強くしていました。

新栄とシギット氏の出会い

一方「新栄」の山脇氏は、近くの建設業の会社が、技能実習生を受け入れているのを知ります。「その社長たちが、実習生たちが日本人の社員たちの『クッション』のようになって、社内の人間関係がとても円滑になった、と喜んでいました。それなら、わが社でも外国人を雇えないだろうか」と思いを持つようになりました。
2025年初め、技能実習生導入支援・特定技能受入事業を展開する福岡市の株式会社RPJ(アールピージェイ)にその希望を伝えました。これを受けたRPJの野口氏(営業部長)が、日常業務でシギット氏と知り合っていて、運転手として引き合いがあることを伝えました。

こうして新栄とシギット氏の「出会い」が実現しました。山脇氏は、面会したシギット氏を気に入り、採用を前提に大型運転免許証の取得の費用面を含めて支援を約束しました。
「仮免を5回落ちました」と照れ笑いを見せるシギット氏ですが、無事、免許証を取得しました。
シギット氏は、「将来は特定技能2号になって、家族を日本に呼び寄せたいし、結婚も考えなければ」と話します。176センチで細めの体格ながら、大型トラックにかける意気込みは大きい。今日も、福岡―名古屋を走るシギット氏です。