ABF基板市場規模、2032年に95億~121億米ドルへ――AI半導体需要と日本の先端パッケージ基板投資を分析
2025年の世界市場規模は約58億米ドル、年平均成長率は約10.5%。高多層基板の需要、国内約5,000億円の設備投資計画、絶縁材料の供給体制をレポートプライムが調査
市場調査会社のレポートプライムは、ABF基板市場規模に関する調査結果を公表しました。加工済みABF基板の世界市場規模は2025年に約58億米ドル(推計レンジ53億~59億米ドル)とされ、2032年には95億~121億米ドルに拡大する見通しです。2025年から2032年までの年平均成長率は約10.5%と予測されており、人工知能(AI)向け半導体の高性能化と基板の高多層化が成長を支えるとみられます。
ABF基板は、画像処理半導体や中央演算処理装置などを電子機器の回路基板に接続する先端半導体パッケージ基板です。生成AIを支える計算設備の拡大に伴い、微細な配線、大型化、電力供給の安定性に対する要求が高まっています。日本では2026年、高機能半導体基板の大規模な設備投資計画と絶縁材料の新たな生産拠点計画が発表され、材料と完成基板の双方で供給能力を確保する動きが注目されています。
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レポートプライムの分析対象は、外部販売される加工済みのABF基板です。2025年の市場規模は約58億米ドル、2032年の予測レンジは95億~121億米ドルで、確定した基本シナリオの金額は調査レポート本編で扱います。年平均成長率約10.5%は基本シナリオに基づく予測値であり、予測レンジの上下限が同じ成長率を示すものではありません。
市場価値を押し上げるのは、半導体の出荷数量だけではありません。高性能計算に使用される基板では配線層数や面積が増え、材料費、加工工程、品質管理の負担が変化します。このため、従来のパソコン向け製品と人工知能向け高性能製品を分けて評価することが、ABF基板市場の実態を捉えるうえで重要です。
ABF基板と味の素ビルドアップフィルムの違い
ABF(味の素ビルドアップフィルム)は、半導体パッケージ基板の配線層間に使用される絶縁材料です。一方、ABF基板は、その絶縁材料と銅配線層などを積層し、半導体を実装できる形に加工した完成基板を指します。両者は同じ供給網に属しますが、別の製品市場です。
今回の約58億米ドルという市場規模は加工済み基板の売上高を対象としており、絶縁フィルムそのものの売上高を合算した数値ではありません。市場シェアを比較する場合にも、材料市場と完成基板市場を混同しないことが必要です。
日本のABF基板市場――先端半導体パッケージ基板への設備投資
日本は、高機能半導体パッケージ基板の製造技術と重要な絶縁材料の供給基盤を持っています。先端半導体の性能向上が進むほど、完成基板を安定して量産する能力と、材料を途切れなく供給する体制が競争力に直結します。2026年に発表された国内の投資計画は、その両面を示す動きです。
イビデンのABF基板関連投資――2026~2028年度に約5,000億円を計画
イビデンは2026年2月、人工知能向けおよび高性能サーバー向けの高機能半導体パッケージ基板について、2026年度から2028年度までの3年間に電子事業へ総額約5,000億円を投資する計画を発表しました。岐阜県の河間事業場、大野事業場などが対象となり、2027年度から順次稼働・量産を始める計画が示されています。
投資計画の拡大は将来の供給能力を高める動きですが、設備投資額がそのまま市場売上高や完成基板の出荷量になるわけではありません。新設備の立ち上げ、顧客の品質認定、製造歩留まり、実際の稼働率を分けて確認する必要があります。
味の素ビルドアップフィルムの新生産拠点――2032年稼働を計画
味の素と味の素ファインテクノは2026年5月、岐阜県可児市でABF絶縁材料の新工場用地を取得する計画を公表しました。2028年の着工、2032年の稼働開始を予定しており、神奈川県と群馬県に続く第三の生産拠点となる計画です。
新拠点は将来の材料供給を支えるとともに、製造拠点の分散による事業継続性の向上にもつながると期待されます。ただし、稼働開始までは時間が必要であり、当面の需給は既存設備の生産能力と材料の安定調達に左右されます。
AI半導体向けABF基板の需要――高多層化と大型化が進展
生成AIの学習や推論に用いられる画像処理半導体や専用演算半導体では、多数の信号を高速にやり取りし、電力を安定して供給することが求められます。そのため、半導体を接続する基板でも微細配線、高密度接続、大面積化への対応が重要になっています。
高多層ABF基板の成長分野――8~16層とその上位製品
一般的な計算機向けでは4~8層の製品が大きな需要基盤となる一方、人工知能向け半導体や高性能計算向けでは8~16層、さらに多層の製品への需要が注目されています。層数と基板面積が増えるほど、微細な穴の形成、積層の位置合わせ、熱による反りの抑制などの難易度が高まります。
生産能力の拡大だけでなく、良品率を維持できるかが供給量と採算性を左右します。高多層基板を継続的に量産できるメーカーは、先端半導体分野で重要な競争優位性を持つと考えられます。
次世代半導体パッケージ基板とガラス芯材の開発
将来の基板技術として、平坦性や寸法安定性の改善を目指すガラス芯材を用いた基板の研究開発も進んでいます。ただし、新しい材料や製造方式には設備対応、加工精度、量産歩留まり、費用などの課題があります。
そのため、ガラス芯材の研究開発が進むことと、現行のABFを用いた有機基板が直ちに置き換わることは同義ではありません。レポートプライムは既存基板の需要と次世代技術の動向を区別して分析しています。
ABF基板市場シェアと主要メーカー――世界の競争環境
加工済みABF基板の市場では、台湾のユニマイクロン、ナンヤ・プリント回路板、日本のイビデン、新光電気工業、オーストリアのエーティーアンドエスなどが主要な供給企業です。韓国や日本のその他の電子部品メーカーも、用途に応じた基板技術の開発に取り組んでいます。
ABF基板市場シェアは出荷数量と売上高を区別
同じ基板でも、層数、面積、配線精度、顧客要求によって価格は異なります。したがって、出荷枚数の多いメーカーが必ずしも金額ベースで最大の市場シェアを持つとは限りません。競争環境を評価する際は、数量、売上高、生産能力、製品構成を分けて確認する必要があります。
高性能基板は設備投資と顧客認定に時間を要するため、既存メーカーの技術力が参入障壁となります。一方、国内外で進む新たな投資は、数年先の供給能力と競争構造を変える可能性があります。
地域別ABF基板市場――アジア太平洋の生産集中と日本の役割
レポートプライムの推計では、世界の加工済みABF基板の生産能力の70%超がアジア太平洋地域に集中し、台湾が世界生産の45%超を占めています。日本は高性能基板と絶縁材料の供給に強みを持ち、韓国も半導体関連の製造基盤を形成しています。
一方、北米では人工知能向け計算設備の需要が大きく、欧州でも先端半導体の製造と実装技術に関する投資が注目されています。半導体の設計地、基板の製造地、最終製品の組立地は異なることがあるため、地域別の需要と生産能力を同じ市場シェアとして扱うことは適切ではありません。
ABF基板市場の課題――絶縁材料の供給集中と製造歩留まり
加工済みABF基板の供給を左右する主な課題は、絶縁材料の調達、高多層製品の製造歩留まり、設備投資の回収です。レポートプライムの分析では、味の素ファインテクノがABF絶縁フィルムの世界供給の95%超を占めると推計されています。ただし、これは材料市場における供給比率であり、完成したABF基板の世界市場シェアではありません。
材料が不足したり、生産拠点の稼働に支障が生じたりすれば、複数の基板メーカーに影響が広がるおそれがあります。また、高多層製品では良品率が安定するまでに時間を要する場合があり、生産設備が増えても出荷量が計画どおりに増えるとは限りません。
さらに、人工知能向け設備投資が減速した場合には、増強した設備の稼働率や収益性が課題となります。市場の成長性を判断する際は、需要予測に加えて材料供給、納期、製造費用、設備償却負担を総合的に評価することが重要です。
レポートプライムの見解――ABF基板市場の成長と供給能力
今回の市場見通しについて、レポートプライムは次のような見解を示しています。
「人工知能向け半導体の高性能化は、ABF基板の需要だけでなく、求められる製造技術や材料調達の条件を変えています。今後は高多層化に対応する技術力、安定した良品率、絶縁材料の確保が、基板メーカーの競争力を左右します。
日本では高機能半導体パッケージ基板の生産能力強化と絶縁材料の供給拠点拡大が計画されています。こうした投資が実際の出荷能力と供給の安定性につながるかを見極めるには、需要動向と設備の稼働状況の双方を継続的に確認することが重要です。」
―― レポートプライム
ABF基板市場調査の対象範囲と主な分析項目
レポートプライムの「ABF基板市場の規模とシェア:2032年までの予測」は、加工済みABF/FC-BGA基板市場を対象に、2025年を基準とした市場規模、2032年までの成長見通し、用途別需要を分析しています。2020~2024年の市場動向を踏まえ、基板の層数、地域別の生産体制、主要企業の競争環境、価格形成、材料供給、製造上の制約などを整理しています。
本調査は半導体関連企業、材料メーカー、調達担当者、投資家などが、市場参入、設備投資、安定調達、事業拡大を検討する際の参考情報として活用することを想定しています。
ABF基板市場規模と市場シェアに関するよくある質問
2025年のABF基板市場規模はいくらですか?
加工済みABF基板の世界市場規模は約58億米ドルで、推計レンジは53億~59億米ドルです。ABF絶縁フィルム単体の市場規模とは異なります。
2032年のABF基板市場規模と成長率は?
2032年の予測レンジは95億~121億米ドルです。2025~2032年の年平均成長率は基本シナリオで約10.5%とされています。
AI半導体向けABF基板の需要が増える理由は?
高性能半導体の大型化、高密度な電気接続、高多層化により、先端パッケージ基板の性能と製造精度に対する要求が高まっているためです。
日本企業がABF基板市場で重要な理由は?
高機能パッケージ基板の製造技術と、ABF絶縁材料の供給基盤の双方を持つためです。2026年に発表された設備投資計画も供給体制の変化を示しています。
ABF基板と味の素ビルドアップフィルムは同じ製品ですか?
同じではありません。味の素ビルドアップフィルムは絶縁材料であり、ABF基板はその材料などを使って加工された完成基板です。市場規模や市場シェアも区別して評価します。
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