世界の高リン血症の疫学規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の高リン血症の疫学規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Hyperphosphatemia Epidemiology Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、高リン血症(Hyperphosphatemia)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。高リン血症は血中リン濃度が異常に上昇する代謝異常で、特に慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全患者で高頻度にみられる。Zhongcheng Fanらの2024年の報告では、CKD患者において高リン血症は一般的な合併症であり、とくに透析患者では死亡リスク上昇との関連が認められている。一方、非透析CKD患者における予後への影響については、まだ明確でない部分が残る。CKD自体は世界人口の約8~16%に影響するとされるため、高リン血症の潜在的なリスク人口は非常に大きい。調査会社は、CKDや末期腎不全患者の増加に伴い、今後も高リン血症の疾患負担が拡大するとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、患者背景、診断患者数などの疫学動向を分析している。
高リン血症は、成人では一般に血清リン濃度が4.5 mg/dLを超える状態とされる。最も一般的な原因は腎臓からのリン排泄能力低下であり、特にCKDが進行するとリンを十分に尿中へ排泄できなくなる。その他の原因としては、食事からのリン過剰摂取、副甲状腺機能低下症、腫瘍崩壊症候群などによる大量の細胞破壊が挙げられる。原因によって急性または慢性に発症し得るが、CKDに伴う高リン血症は慢性的に持続することが多い。
慢性的なリン上昇は単なる検査値異常にとどまらず、カルシウム・リン代謝全体を乱す。血中リンが高い状態が続くと、血管や軟部組織への石灰化、骨代謝異常、二次性副甲状腺機能亢進症などが生じる可能性がある。とくにCKD患者では、こうした骨・ミネラル代謝異常が心血管リスクや骨折リスクにも関係するため、高リン血症は腎疾患管理の重要な治療標的となる。
疫学的には、Zheng WHらの2022年のメタ解析で、60,358人を対象とした高リン血症の世界的な有病率中央値は約30%と報告されている。ただし、研究間のばらつきは大きく、5.6%から45%まで幅があった。この大きな差は、対象集団が一般人口なのか、CKD患者なのか、重症患者なのか、透析患者なのかによって高リン血症の頻度が大きく変わるためである。したがって、高リン血症の有病率は単一の数字で捉えるよりも、背景疾患別に見る必要がある。
Cernaro Vらの2024年の報告では、一般人口における発生割合は約12%、重症患者では約21%、末期腎不全患者では50~74%とされる。つまり、腎機能が悪化するほど高リン血症の頻度が大きく上昇し、透析や末期腎不全の段階では半数以上の患者が影響を受ける可能性がある。これは、高リン血症の疫学がCKDの重症度と極めて密接に連動していることを示している。
年齢別では、中年から高齢者で多い。Arbab Muhammad Aliらの2025年の報告では、50~59歳が29.4%、60歳以上が26.4%を占め、年齢が上がるほど発症が増える傾向が示されている。この背景には、加齢に伴ってCKDや糖尿病、高血圧などの基礎疾患が増え、腎機能が低下しやすくなることがあると考えられる。したがって、高齢化の進行は2026~2035年の高リン血症患者数を押し上げる重要な要因となる。
性別では、Arbab Muhammad Aliらの同研究で女性が58.1%、男性が41.9%で、女性にやや多い傾向がみられた。ただし、この性差は研究対象となったCKD集団の構成を反映している可能性があり、高リン血症そのものに一貫した強い女性優位があると断定できるわけではない。それでも、少なくとも一部のCKD集団では女性患者の割合が高いことが示されている。
予後との関連では、Zheng WHらの2022年の報告で、高リン血症を有する患者の全死亡リスクはオッズ比2.85とされ、死亡リスクの有意な上昇と関連していた。特にこの関係は、重症患者や腎機能障害患者で重要とされる。つまり、高リン血症は単なるCKDの付随的な生化学異常ではなく、患者転帰を悪化させる可能性のある重要なリスクマーカー、あるいは治療対象と位置づけられている。
国別では、米国の透析患者で高い有病率が報告されている。Malki Waldmanらの2026年の報告によると、米国では血液透析患者の42%、腹膜透析患者の46%に高リン血症が認められる。これは、透析を受けていてもリン管理が十分に達成されていない患者が相当数存在することを示している。
この点は治療市場の観点でも重要である。透析によって一定量のリンは除去されるものの、食事からの摂取や体内からのリン移動によって、透析のみで血清リンを十分にコントロールできない患者が多い。そのため、食事療法やリン吸着薬などを組み合わせた継続的な管理が必要となる。
インドでは、Umesh B. Khannaらの2025年の報告で、高リン血症有病率が32.8~83.6%と非常に幅広く報告されている。これは、対象となる患者集団の腎機能ステージや透析状況、地域差、医療アクセス、食事内容などによって大きく変動するためと考えられる。インドはCKD患者の絶対数が大きいことから、高リン血症の潜在患者集団も相当規模に達する可能性がある。
世界全体では、一般人口で約12%、末期腎不全患者で50~74%という大きな差があることから、高リン血症市場は「一般人口向け」よりも「進行CKD・透析患者向け」の疾患領域として理解する方が適切である。特に透析患者では高リン血症が非常に一般的であり、長期的な薬物治療を必要とする患者が多い。
市場・疫学上の重要な成長要因は、CKD患者数そのものの増加である。CKDは世界人口の約8~16%に影響するとされ、糖尿病、高血圧、高齢化、肥満などの増加によって今後も患者数が拡大する可能性がある。CKDが進行して末期腎不全に至る患者が増えれば、高リン血症の患者数も連動して増加すると考えられる。
一方で、高リン血症はCKDの比較的早い段階では必ずしも明確に出現しないことがある。腎臓はある程度までリン排泄を補償できるため、血清リンが明確に上昇するのは腎機能がかなり低下してからの場合も多い。そのため、診断患者数はCKDの重症度分布や検査頻度にも左右される。
治療の基本は、血清リンを低下させながら背景疾患を管理することである。まず重要なのが食事からのリン摂取制限であり、特にCKD患者では高リン食品や食品添加物由来のリン摂取を抑えることが推奨される。ただし、過度な食事制限は栄養状態の悪化につながる可能性もあるため、腎機能や栄養状態を考慮して個別に調整する必要がある。
薬物療法では、リン吸着薬が中心となる。リン吸着薬は腸管内で食事中のリンと結合し、その吸収を抑えることで血清リンを低下させる。代表的な薬剤として、カルシウム含有リン吸着薬、セベラマー、炭酸ランタンなどが挙げられる。
カルシウム含有リン吸着薬は有効である一方、カルシウム負荷が増えることで血管石灰化などのリスクが問題となる場合がある。そのため、患者の血清カルシウム値や石灰化リスクに応じて、非カルシウム系リン吸着薬であるセベラマーや炭酸ランタンなどが選択されることがある。
重症の高リン血症や腎不全患者では、透析によって体内の余剰リンを除去することが必要になる。血液透析や腹膜透析はリン除去に寄与するが、通常の透析だけでは十分なリンコントロールが難しい患者も多いため、リン吸着薬や食事療法を併用する必要がある。
また、CKD患者では高リン血症と二次性副甲状腺機能亢進症が併存することが多いため、ビタミンD製剤やカルシミメティクスが使用される場合がある。これらは直接的なリン低下薬ではないが、副甲状腺ホルモンを制御し、カルシウム・リン・骨代謝のバランスを改善する目的で用いられる。
したがって、高リン血症治療は単一の検査値を下げるだけではなく、CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常全体を管理する必要がある。血清リン、カルシウム、副甲状腺ホルモン、ビタミンD状態などを総合的に評価し、食事、薬剤、透析条件を組み合わせて治療することが重要となる。
全体として本レポートは、高リン血症を「CKD、とりわけ末期腎不全や透析患者で非常に頻度が高く、死亡リスクや血管・骨合併症と関連する重要な代謝異常」と位置づけている。世界的な有病率中央値は約30%とされるが、実際には一般人口で約12%、末期腎不全で50~74%と、患者背景による差が非常に大きい。年齢では50歳以上で多く、CKD進行とともにリスクが上昇する。
米国では血液透析患者の42%、腹膜透析患者の46%が高リン血症を有するとされ、インドでも32.8~83.6%という高い有病率が報告されている。したがって、透析患者のリン管理には依然として大きなアンメットニーズが存在する。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、CKD患者数の増加、糖尿病・高血圧の拡大、高齢化、末期腎不全・透析患者の増加が主要な患者数押し上げ要因になると考えられる。加えて、CKD患者に対する定期的なリン測定や骨・ミネラル代謝管理が普及することで、これまで見逃されていた患者が診断される可能性もある。
したがって、今後の高リン血症管理における中心的課題は、進行CKD患者を早期に把握すること、血清リンを定期的にモニタリングすること、食事性リンを適切に制限すること、リン吸着薬を患者ごとに最適化すること、さらに二次性副甲状腺機能亢進症や血管石灰化を含むCKD-MBD全体を包括的に管理することにある。2026~2035年は、CKD患者数の増加に伴って高リン血症の絶対患者数が増えるだけでなく、透析患者におけるコントロール不良例への治療最適化が臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
高リン血症市場概要(8主要市場)
3.1 高リン血症市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 高リン血症市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
高リン血症疫学概要(8主要市場)
4.1 高リン血症疫学状況(2019年~2025年)
4.2 高リン血症疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 高リン血症の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 高リン血症の診断済み有病患者数
7.4 種類別の高リン血症患者数
7.5 性別別の高リン血症患者数
7.6 年齢別の高リン血症患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における高リン血症の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の高リン血症患者数
8.4 米国における性別別の高リン血症患者数
8.5 米国における年齢別の高リン血症患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における高リン血症の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の高リン血症患者数
9.4 英国における性別別の高リン血症患者数
9.5 英国における年齢別の高リン血症患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける高リン血症の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の高リン血症患者数
10.4 ドイツにおける性別別の高リン血症患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の高リン血症患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける高リン血症の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の高リン血症患者数
11.4 フランスにおける性別別の高リン血症患者数
11.5 フランスにおける年齢別の高リン血症患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける高リン血症の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の高リン血症患者数
12.4 イタリアにおける性別別の高リン血症患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の高リン血症患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける高リン血症の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の高リン血症患者数
13.4 スペインにおける性別別の高リン血症患者数
13.5 スペインにおける年齢別の高リン血症患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における高リン血症の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の高リン血症患者数
14.4 日本における性別別の高リン血症患者数
14.5 日本における年齢別の高リン血症患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける高リン血症の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の高リン血症患者数
15.4 インドにおける性別別の高リン血症患者数
15.5 インドにおける年齢別の高リン血症患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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