北海道にゆかりのある作家による特集プログラム「北海道現代アニメーション 2025 + 『轍を越えてゆけ』特別上映」:開催レポート|第12回新千歳空港国際アニメーション映画祭
新千歳空港ターミナルビルを舞台に11月21日より開催している「第12回新千歳空港国際アニメーション映画祭」では、北海道にゆかりのある作家たちによる最新短編作品を集めた特集「北海道現代アニメーション 2025 + 『轍を越えてゆけ』特別上映」と題した上映・トークプログラムを企画。4作品の上映と作家インタビュー、さらにスタジオDOTによる『轍を越えてゆけ』の特別上映・監督トークが行われました。
第一部:北海道から広がるアニメーションの可能性
プログラムの冒頭では、北海道在住・出身のアニメーション作家4名による新作が上映され、上映後には、3名の作家によるトークが行われました。

『ほしのはなし』の阿部静さんは、幼少期から好きだったドヴォルザーク「ユーモレスク第7番」をモチーフに、「命をテーマにしながらも、悲しみではなく前向きさを描きたかった」と語りました。
『One Last Wish』の黒島亜夢さんは、DADA GAUGUIN氏の楽曲をもとに制作し、「好きなものを貫く気持ちを映像で表現した」とコメント。映像と音楽が響き合う作品に仕上げました。
『アイランド(The Island)』のSoraさんは、北海道 利尻島を舞台に取材を重ねて制作したことに触れ、音や自然の描写へのこだわりを語りました。それぞれの作家が、自身の感情や経験をもとに作品を形づくる姿が印象的なトークとなりました。
第二部:『轍を越えてゆけ』特別上映と監督トーク
第二部では、札幌市立大学出身のVab.png監督が手がけた『轍を越えてゆけ』が特別上映されました。本作は昨年の本映画祭プログラム「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH 2024」でプレゼンテーション発表した作品で、クラウドファンディングを通じて制作され今年10月にテアトル新宿で公開されたばかりです。スタジオDOTのVab.png監督と、プロデューサーのふたもく氏が登壇し、作品完成までの道のりや制作に込めた想いを語りました。

監督は「子どもの頃に祖母と訪れたこの映画館で自分の作品を上映できたのは感慨深い」と語り、昨年のプレゼン発表から1年を経て完成を迎えた喜びを述べました。
本作はコロナ禍で孤独な大学生活のなか、「青春を取り戻すような気持ちで始めた」というオンライン制作プロジェクト。「アニメを作るために集まったというより、集まるためにアニメを作った」と約100人が制作に参加したことについて監督は振り返りました。タイトルには「悲しみを抱えながらも笑って前へ進む」という想いが込められていると語るその熱量は、観客に強い余韻を残しました。
会場には多くの観客が訪れ、北海道から世界へと発信するアニメーションの可能性を感じる時間となりました。

新千歳空港国際アニメーション映画祭
国内外の話題作など招待作品の上映はもちろん、多様な未来につながるアニメーションの体験を提供する70以上のプログラムを展開します。今年もゲストと観客が密接に交流できる独自の場を活かし、アニメーションの意義を拡張するような新しい価値を生み出す「遊び場」として、エネルギーを持ち帰ることができる文化交流拠点の創造を目指します。
開催日時:2025年11月21日(金)〜25日(火) 5日間
場所:新千歳空港ターミナルビル(新千歳空港シアターほか)




