「パパ活で渡したお金を全部返せ」家族・職場への暴露をちらつかされたら?返金請求と脅迫の境界を弁護士が解説

パパ活をきっかけに知り合った相手と関係が切れた後、「今まで渡したお金を全部返して」「返さないなら家族や勤務先にバラす」などと迫られ、困っていませんか。
パパ活をめぐる金銭トラブルでは、これまでに渡されたお金が「贈与」なのか「貸したお金」なのかによって、返還義務の有無が変わる可能性があります。一方で、返還を求める権利がある場合でも、家族や職場への暴露を持ち出すなど、方法によっては脅迫や恐喝などの刑事上の問題につながることがあります。実際、裁判例でも、何らかの請求権があったとしても、暴力や脅迫を用いて支払いを求める行為が正当な権利行使とは認められないと判断された例があります。
では、「今まで渡したお金を全部返せ」と言われた場合、本当に全額を返さなければならないのでしょうか。また、「返さないなら家族に言う」「職場にバラす」「写真やメッセージを公開する」などと言われた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
本記事では、パパ活をめぐる金銭トラブルについて、返還義務が生じるケースと生じないケース、返金請求が脅迫・恐喝などの問題になり得るケース、証拠の残し方や避けたい対応について、弁護士が解説します。
「全部返せ」は、ひとつの請求ではない
まず押さえておきたいのは、「今まで渡した全部」という言い方の中に、性質の異なる支出が混ざっているという点です。
食事や外出のたびに渡していた金銭、誕生日などに渡した品物、生活費や学費の援助、一時的に立て替えた支払い、そして「貸す」と言って渡した金銭。これらは同じ相手との間のやり取りであっても、法律上の扱いは同じではありません。
総額を一本の債権のように示されると、全体が争いの対象であるかのように見えます。しかし実際には、名目ごとに結論が分かれます。まず、いつ・いくら・どういう名目で渡されたのかを自分の側で整理することが出発点になります。
渡し切ったお金は、原則として戻らない
相手が見返りを求めずに渡した金銭は、法律上は贈与にあたります。贈与は、書面によらないものであれば当事者が解除できるとされていますが、すでに引き渡しが済んだ部分についてはこの解除ができません。民法にそう定められています。
つまり、援助や小遣いとして渡され、受け取る側もそう理解していたお金は、後から気持ちが変わったという理由だけでは戻らないのが原則です。「あのときは好意だったが、今は貸したものだと考えている」という説明は、その気持ちの変化を法律上の返還義務に変える力を持ちません。
対価性がはっきりしている場合、法は返還請求を助けない
性的な関係を条件とした金銭のやり取りは、公の秩序に反する内容として法律上の効力が認められません。そして、そうした不法な原因にもとづいて渡された給付については、渡した側からの返還請求が認められないと定められています。
この点は、請求を受けた側にとって守りの材料になります。一方で、同じ理屈が反対側にも働くことは知っておく必要があります。関係の中で自分が支払ったお金を後から取り戻したい場合にも、同じ壁が立ちはだかるからです。だからこそ、その場の勢いで支払ってしまうことの重さは、実務上かなり大きいと言えます。
なお、食事や外出に同行することの対価であって性的な関係を伴わない場合は、この枠組みではなく、役務に対する支払いや贈与として整理されるのが通常です。
それでも返す義務が生じ得る場面
「返さなくてよい」と一律に言えるわけではありません。次のような場合には、返還や支払いの義務が認められる余地があります。
返すことを前提に受け取った場合。金額と返す約束が確認できれば、貸し借りとして扱われます
相手が本来支払うべき費用を立て替えた場合。相手の債務を消滅させる支出は、立替金として請求される余地があります
受け取った後に、自分から「返す」と伝えて金額や期限まで話がまとまった場合。新たな合意として扱われることがあります
事実を偽って金銭を受け取ったと評価される場合。取り消しや損害賠償の問題になり得ます
ここで重要なのは、これらを主張して立証する責任が、請求する側にあるという点です。振込の記録は、お金が渡ったことを示すにとどまり、それだけでは貸し借りの合意まで示すものではありません。自作の集計表も同様です。
ここからは「やり方」の話
返す義務があるかどうかと、どう求めているかは、別々に評価されます。ここからが、返金請求と脅迫の境界にあたる部分です。
出発点として、相手が支払いを求めること自体は自由です。請求が結果的に通らない内容であったとしても、求めたこと自体が直ちに犯罪になるわけではありません。境界を分けるのは、「返さなければどうする」と告げた内容と、その求め方です。
「訴える」「被害届を出す」と言われた場合
裁判を起こす、弁護士に依頼する、被害届を出すといった予告は、いずれも法律上認められた手続を使うという内容です。手続を選ぶこと自体は権利の範囲にあるため、こうした告知が直ちに脅迫にあたるとは限りません。
もっとも、常に問題がないわけでもありません。実際には手続をとる意思がないのに、相手を怖がらせる目的でだけ告げた場合や、根拠がないことが明らかな内容について告げた場合には、権利の行使として認められる範囲を超えると評価されることがあります。
言われた側の実務対応としては、慌てて支払うより、どの手続で、何を根拠に、いくらを求めるのかを書面で示してもらうほうが結果的に見通しが立ちます。
「返さないなら知らせる」と言われた場合
線を越えやすいのは、手続とは無関係な内容が持ち出されたときです。家族や勤務先、学校に知らせる、インターネットに投稿する、撮影した画像を広めるといった告知は、名誉や生活そのものへの害を告げるものとして、脅迫にあたり得ます。それによって支払わせた場合には、恐喝の問題になります。義務のないことを求める内容であれば、強要が問題になることもあります。
ここで見落とされがちなのが、実際に返す義務がある場合でも同じ評価が働くという点です。判例は、権利を持つ人がそれを実現しようとすること自体は違法ではないとしつつ、その方法が社会通念上一般に受け入れられる程度を超えたときには違法になるとしています。しかも、その手段で受け取った金銭については、債権の額がいくらであったかにかかわらず、交付を受けた全額について犯罪の成否が問題になるとされています。
「自分には請求できる権利があるのだから、多少強く言っても構わない」という考え方は、この枠組みの中では通用しにくいということです。
しつこい連絡は、どの枠組みで見るか
繰り返しの連絡や待ち伏せがある場合、ストーカー規制法が挙げられることがあります。ただし同法は、好意の感情や、それが満たされなかったことによる恨みを満たす目的であることを前提としています。金銭の回収だけが目的である場合には、この要件に乗りにくい面があります。
もっとも、その場合でも打つ手がなくなるわけではありません。各都道府県の迷惑行為防止条例、住居への立ち入りや業務の妨害に関する規定、民事上の損害賠償や差止めなど、別の枠組みが残ります。どの枠組みで見るかによって、相談先も手順も変わります。
立場は入れ替わることがある
請求を受けた側が、反撃のつもりで「こちらこそ職場に知らせる」「投稿する」と言い返してしまう例があります。この場合、今度は言い返した側の言動が同じ物差しで評価されます。第三者を呼び寄せて相手を取り囲むような形になれば、さらに評価は厳しくなります。
不当な請求を受けているという意識があっても、対応の仕方によって立場が変わり得ることは、意識しておく必要があります。
言われたときの対応と、避けたい対応
まず、その場で支払わないこと、書面に署名しないことです。前述のとおり、いったん渡したお金を取り戻すのは容易ではありません。
次に、やり取りを保存します。メッセージ、通話の着信履歴、振込の記録は、後で名目を説明する材料にも、求め方を示す材料にもなります。
そのうえで、名目と時期を自分で整理し、相手には内訳の提示を求めます。内訳を尋ねることは、支払いに応じるという意味にはなりません。
会う場合は、時間と場所を選ぶこと、一人で対応しないことです。身の危険を感じる内容が含まれるときは、警察相談専用電話の#9110を含め、早い段階で相談先を確保しておくほうが安全です。
避けたいのは、感情的な言い返し、内訳を確かめないままの一部支払い、そして届いた書面をすべて放置することです。一部を支払うと、残りの支払義務を認めたと評価されることがあります。また、内容証明郵便それ自体に強制力はありませんが、支払督促や訴状は別で、期限内に対応しないと相手の言い分を前提に手続が進みます。
よくある質問
「一円も返す必要はない」と言い切れますか。
名目によります。援助や対価として渡し切られたお金と、返す約束のもとで受け取ったお金は区別されます。総額の中に後者が混ざっていることもあるため、一律に判断しないほうが安全です。
相手が弁護士に依頼したと言ってきました。
代理人からの通知が届いたら、まず内容を確認します。窓口が代理人に一本化されること自体は、直接のやり取りが減るという点で、対応しやすくなる面もあります。
警察は取り合ってくれますか。
貸し借りの争いそのものは民事の問題として扱われます。一方で、告げられた内容や連絡の態様に刑事の問題が含まれる場合は別です。記録を持参して相談すると、話が具体的になります。
まとめ
「全部返せ」という請求には、性質の異なる支出が混ざっている
渡し切られたお金は、気持ちが変わったという理由では戻らないのが原則
対価性がはっきりしている金銭は、渡した側からの返還請求が認められにくい
一方で、貸し借り、立替え、後からの返還合意などがあれば義務が生じ得る
請求すること自体は自由だが、「返さなければどうする」の内容が境界を分ける
返す義務がある場合でも、方法が度を超えれば別の問題になる
言い返し方によっては、立場が入れ替わることがある
この記事の監修者
若井 亮(わかい りょう)
代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。
弁護士法人若井綜合法律事務所
https://wakailaw.com/
まずは、お気軽にご相談を。
当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。
全国どこからでもご利用いただける無料相談を、メール・電話・LINEで24時間受け付けております。まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が、解決へとつながります。
問い合わせ先: https://wakailaw.com/contact/
TEL: 03-5924-6845
LINE:@wakailaw
https://page.line.me/aab4127f?openQrModal=true

