6月4日からは「歯と口の健康週間」。「口が渇く」「歯ぐきから血が出る」は高血糖のサイン?内科医が警告する"お口のトラブル"と糖尿病の関係

6月4日は「虫歯予防デー」として知られ、この時期には「歯と口の健康週間」が設けられています。 多くの方にとって、歯の健康というと「虫歯予防」や「毎日の歯みがき」を思い浮かべるかもしれません。
しかし、糖尿病内科医として日々診療する中で、私はお口の健康は、決して歯だけの問題ではないと感じています。
糖尿病治療というと、どうしても血糖値やHbA1c、食事、運動、お薬に意識が向きがちです。
しかし実際には、歯ぐきの炎症、噛む力、唾液の量といった「お口の環境」も、血糖コントロールや全身の健康に深く関わっているのです。
「最近、歯ぐきから血が出る」
「口が乾きやすい」
「歯がぐらつく気がする」
「歯科にはしばらく行っていない」
こうした小さなサインは、単なるお口のトラブルではなく、糖尿病管理を見直す大切なきっかけになる場合があります。
6月の「歯と口の健康週間」を機に、"お口を守ることは、全身を守ること"という視点で、ご自身の健康を見つめ直してみませんか?
① 糖尿病と歯周病は、互いに悪化させ合う「負のスパイラル」
糖尿病と歯周病には、互いに影響を及ぼし合う「双方向」の深い関係があります。
糖尿病で高血糖の状態が続くと、体の免疫力が低下し、歯ぐきに炎症が起こりやすくなります。さらに傷の治りも悪くなるため、知らないうちに歯を支える骨が弱くなり、歯周病が進行しやすくなります。
一方で、歯周病により歯ぐきで慢性的な炎症が続くと、その影響は全身に及びます。
慢性的な炎症はインスリンの働きを妨げ、血糖値を下がりにくくする可能性があるのです。
つまり、「糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が糖尿病を悪化させる」。
この負のスパイラルを断ち切ることが、糖尿病治療において非常に重要です。
糖尿病内科医が歯の健康についてお伝えするのは、専門外の話をしているのではありません。
お口の健康は、血糖コントロールを支える大切な土台の一つなのです。
② 歯周病治療が「血糖値改善」の一歩になることも
糖尿病治療では、HbA1cの数字に注目することが多くあります。
しかし、HbA1cを改善するために必要なのは、お薬を増やすことだけではありません。
歯周病がある方の場合、歯科でしっかり治療(歯石除去など)を受けて口腔内の炎症を抑えることが、血糖コントロールにも良い影響を与える可能性があります。
これは、私たち内科医にとっても非常に重要な視点です。
血糖値がなかなか安定しない患者さんを診るとき、食事や運動、薬の内容だけでなく、睡眠、ストレス、感染症、そしてお口の状態まで含めて考える必要があります。
実際の診療でも、以下のようなお声を伺うことがあります。
「最近、歯ぐきの腫れが続いている」
「歯科に何年も行っていない」
「噛みにくくなって、食事内容が偏っている」
お口の環境が整うと、よく噛めるようになります。
よく噛めると、食事の満足感が高まり、早食いの予防にもつながります。
食事をゆっくり味わえることは、血糖値の急激な上昇を防ぐうえでも大切です。
歯周病治療は、単に歯を守る治療ではありません。糖尿病の方にとっては、全身を守り、未来の生活を守る治療でもあるのです。

③ 高血糖による「口の乾き」は、虫歯や歯周病の入り口になることも
実際の診療でも、患者さんから以下のようなお声を伺うことがあります。
「口が渇きやすい」
「夜中に水を飲みたくなる」
「口の中がネバネバする」
血糖値が高い状態が続くと、尿の量が増えて体の水分が失われ、唾液が減少しやすくなります。 唾液には、口の中の細菌を洗い流す「自浄作用」があります。唾液が減ることで虫歯や歯周病菌が繁殖しやすくなり、その結果生じた炎症がさらに血糖コントロールに影響を及ぼすという悪循環を生むこともあります。
「口が渇く」という症状は、単なる加齢や体質だけで片づけてよいものではありません。 高血糖のサインであることもあり、糖尿病管理を見直す大切なきっかけになる場合があります。
小さな違和感に早く気づくこと。
そして、内科と歯科の両方で確認していくこと。
それが、将来の大きな合併症を防ぐ第一歩になります。
④ どちらも初期には気づきにくい「沈黙の病」
糖尿病と歯周病には、よく似た特徴があります。
それは、どちらも初期には自覚症状に乏しい「沈黙の病」であるということです。
糖尿病は、最初のうちは痛みも苦しさもないことが多い病気です。
だからこそ、気づかないうちに血管、神経、腎臓、目、足などに影響が進んでしまうことがあります。
歯周病も同じです。初期の段階では強い痛みがないため、
「少し歯ぐきから血が出るだけ」
「歯みがきのときだけ気になる程度」と見過ごされがちです。
しかし、進行すると歯を支える骨が少しずつ失われ、最終的には歯を失うことにもつながりかねません。
「痛くないから大丈夫」
「食べられているから問題ない」
「歯科は困ってから行けばいい」
という考え方は、病気を静かに進行させてしまう原因になります。
本当に大切なのは、症状が出てから慌てて治療することではありません。
症状が出る前に気づき、予防することです。
内科で定期的に採血をするように、歯科でも定期的にお口の状態を確認する習慣が、将来の健康を大きく守ってくれます。
⑤ 糖尿病治療に「歯科との連携」が欠かせない理由
糖尿病治療は、内科だけで完結するものではありません。
例えば、目を守るためには眼科との連携、腎臓を守るためには腎臓内科との連携が大切です。また、足を守るためには皮膚科や形成外科、フットケアとの連携も必要になります。
そして、歯と口を守るためには、歯科との連携が欠かせません。
糖尿病の方にとって、かかりつけ内科医を持つことと同じように、「かかりつけ歯科医」を持つことはとても大切です。
歯を失うことは、単に噛みにくくなるだけではありません。
・食事の楽しみが減る
・食べられるものが限られる
・栄養が偏る
・人前で笑うことや話すことに自信を失ってしまう
・外出や人との交流が減る
お口の健康は、食べる力、話す力、笑う力、そして「その人らしく生きる力」に直結しています。
だからこそ、医科歯科連携は単なる専門職同士の繋がりではなく、患者さんの人生の質(QOL)を守るための大切な医療のバトンです。
私たち内科医が「歯科にも定期的に通いましょう」とお伝えするのは、血糖値だけでなく、患者さんの未来の暮らしを守りたいからです。

お口を守ることは、未来を守ること
糖尿病治療で大切なことは、HbA1cの数字だけを追いかけることではありません。
血糖値の背景には、その方の食事、運動、睡眠、ストレス、仕事、家族、生活習慣、そしてお口の健康があります。
糖尿病を診るということは、単に検査値を見ることではなく、その方の暮らし全体を見つめることだと私は考えています。
「木を見て森を見ず」という言葉があります。糖尿病診療においても、血糖値という一本の木だけを見ていては、本当に大切なものを見落としてしまうことがあります。
なぜ血糖値が上がっているのか。
なぜ食事が偏っているのか。
なぜよく噛めなくなっているのか。
なぜ口が乾いているのか。
なぜ歯科受診から足が遠のいているのか。
その背景まで一緒に考えることが、これからの糖尿病医療には必要です。
たいや内科クリニックでは、糖尿病を単なる血糖値の病気としてではなく、全身の健康、生活の質、そして患者さんの未来に関わる病気として捉えています。
患者さんがいつまでも自分の足で歩き、自分の口で食べ、大切な人と笑顔で過ごせるように。そのために、内科の立場からも、お口の健康の大切さをお伝えしていきたいと思います。
歯ぐきからの出血、口の乾き、歯のぐらつき、口臭、噛みにくさ。こうした小さなサインは、体からの大切なメッセージかもしれません。
6月4日の「虫歯の日」、そして「歯と口の健康週間」をきっかけに、ぜひ一度、ご自身のお口の健康を見直してみてください。糖尿病のある方は、内科での定期診療とあわせて、歯科での定期検診も大切にしていただきたいと考えています。
お口を守ることは、血糖を守ること。
血糖を守ることは、未来の生活を守ること。
たいや内科クリニックは、これからも地域の皆さまが安心して暮らし続けられるよう、血糖値だけでなく、全身を見つめる糖尿病診療を大切にしてまいります。
地域のかかりつけ医として、糖尿病教室、健康セミナーを適宜開催しています。
地域の患者さんとのコミュニケーションを大切にし、患者さんに役立てる情報を発信し、患者さん目線で、患者さんに寄り添った診療を行うよう努力してまいります。
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