世界のムコ多糖症の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界のムコ多糖症の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Mucopolysaccharidosis Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、ムコ多糖症(Mucopolysaccharidosis:MPS)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。MPSは、グリコサミノグリカン(Glycosaminoglycans:GAGs)の分解に必要なライソゾーム酵素の欠損によって未分解基質が体内に蓄積する、先天性のライソゾーム病群である。骨格変形、肝脾腫、呼吸障害、心血管障害、神経学的低下など多臓器に進行性障害を生じ、病型によっては生命予後にも大きく影響する。調査会社は、MPSが出生10万人あたり数例という超希少疾患である一方、軽症・緩徐進行型では小児期後半から成人期まで診断されないことがあり、真の発症頻度が過小評価されている可能性を強調している。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間として、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場における出生頻度、有病患者数、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
MPSは単一疾患ではなく、MPS I、II、III、IV、VI、VII、IXなど複数のサブタイプから構成され、それぞれ原因酵素、遺伝子変異、遺伝形式、臨床像、進行速度が異なる。したがって、「MPS全体」の疫学と「各MPSサブタイプ」の疫学を区別することが重要である。
病態の基本は、細胞内ライソゾームでGAGを正常に分解できなくなることである。分解されないGAGが細胞・組織内に蓄積し、時間とともに骨格、関節、肝臓、脾臓、心臓、気道、神経系など広範な臓器に障害を起こす。
臨床症状は病型と重症度によって大きく異なる。重症型では乳幼児期から粗な顔貌、骨格異常、関節拘縮、臓器腫大、呼吸障害、発達遅滞などが明らかになる場合がある一方、attenuated form、すなわち軽症・緩徐進行型では初期所見が目立ちにくく、診断が大幅に遅れることがある。
今回の資料が特に強調しているのは、この診断遅延である。軽症MPSでは特徴的身体所見が初期には微妙で、小児期後半、思春期、さらには成人期になって初めて診断される患者が存在する。
したがって、成人で新たにMPSと診断された場合でも、成人期に疾患が発生したという意味ではない。MPSは先天性遺伝疾患であり、長年存在していた病態が遅れて認識された可能性が高い。
この診断遅延は疫学上も重要で、実際の出生頻度が変化していなくても、遺伝学的検査や疾患認知が向上すれば診断患者数が増える可能性がある。
世界のMPS全体の出生頻度は、出生10万人あたり約1.04~4.8例と推定され、統合解析では約2.27/10万人出生とされる。
これは一般人口有病率ではなく、「出生時にどの程度の頻度でMPS患者が生まれるか」を示すbirth prevalenceまたはbirth incidenceに近い指標である。
したがって、2.27/10万人という数値を一般人口の現在有病率として扱ってはいけない。
また、1.04~4.8/10万人という幅はかなり広い。これは国・地域による遺伝的背景、近親婚率、病型構成、新生児・遺伝学的診断体制、レジストリの充実度などの違いを反映している可能性がある。
欧州では、MPS全体が出生10万人あたり約1.5~3例とされる。
この値は世界の1.04~4.8/10万人、統合推定2.27/10万人と概ね整合する。
オランダやスウェーデンなど遺伝性疾患レジストリが充実した国では、サブタイプ構成が比較的詳しく把握されており、Sanfilippo syndrome、すなわちMPS IIIが主要サブタイプとして多く確認される場合があるとされる。
ただし、「欧州ではMPS IIIが必ず最も多い」と一律に断定することはできない。病型構成は国・地域によって異なるためである。
世界のサブタイプ構成では、MPS Iが全MPS症例の約30~50%、MPS IIが15~35%、MPS IIIが10~25%を占めるとされる。
ただし、この3つのレンジはそれぞれ異なる研究・地域から得られた幅であり、上限を単純に合計すると100%を超える。
したがって、「MPS I 50%+MPS II 35%+MPS III 25%=110%」と計算して矛盾とみなすべきではない。
これらは各病型が地域ごとにどの程度を占め得るかを示す範囲であり、単一集団における相互排他的な固定構成比ではない。
また、MPS IV、VI、VII、IXなど他の病型も存在するため、MPS I~IIIだけで全MPSを説明することもできない。
性別では、病型による違いが重要である。
MPS II、すなわちHunter syndromeはX連鎖性疾患であるため、男性に圧倒的に多い。
一方、MPS IIIなど多くの他サブタイプは常染色体劣性遺伝であり、男女ほぼ同程度に発症するとされる。
したがって、「MPS全体が男性優位」と単純化するのは不適切である。
MPS IIが多い地域ではMPS全体の患者集団も男性優位に見える可能性があるが、これはMPS IIの遺伝形式による病型構成の影響である。
このため、MPS全体の男女比を評価するにはサブタイプ別患者数を考慮する必要がある。
地域差では、中東・北アフリカで近親婚が重要な要因として挙げられている。
この地域ではMPS I、III、VIなどの頻度が世界平均の数倍に達する場合があるとされる。
これは常染色体劣性遺伝疾患において血縁婚が原因変異のホモ接合体出生確率を高め得ることと整合する。
ただし、今回のレポート対象8市場には中東・北アフリカの主要国は含まれていないため、この情報は世界的背景として理解する必要がある。
東アジアではMPS IIが比較的多い疫学的特徴が示されている。
特に日本、台湾、韓国は長期的な全国データを有し、MPS IIの地域疫学を理解するうえで重要な国とされる。
ただし、今回の抜粋では日本における具体的なMPS II発症率や患者数は示されていない。
したがって、「日本ではMPS IIが多い」という定性的特徴は支持されるが、他国の何倍かを定量的に比較することはできない。
米国では、MPS全体の出生発症頻度が約0.98/10万人出生とされる。
これは今回提示された世界推定1.04~4.8/10万人よりわずかに低く、統合推定2.27/10万人の半分未満である。
ただし、この差をそのまま「米国では生物学的にMPSが少ない」と結論づけるのは慎重である。
診断基準、対象期間、症例捕捉方法、病型の含め方などが異なる可能性があるためである。
さらに、米国の一般人口有病率は100万人あたり約2.67例とされる。
ここで、出生発症頻度0.98/10万人出生と人口有病率2.67/100万人は異なる指標である。
0.98/10万人は約9.8/100万人出生に相当する一方、一般人口有病率は2.67/100万人なので、数値だけを直接比較すると有病率がかなり低くみえる。
しかし、MPSは重症型では若年死亡が起こり得るため、出生頻度より一般人口有病率が低くなることは十分あり得る。
また、診断漏れやデータソースの違いも影響する。
したがって、米国の0.98/10万人出生と2.67/100万人人口は内部矛盾というより、「出生発症」と「ある時点で生存している患者数」の違いとして解釈する必要がある。
一方で、資料全体の世界統合出生頻度2.27/10万人に対して米国0.98/10万人という差は比較的大きいため、研究方法や対象期間の違いを考慮すべきである。
ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国については、今回の抜粋では国別MPS発症率や患者数は具体的に示されていない。
欧州全体では1.5~3/10万人出生という範囲が示されているため、これらの国々はその地域背景の中で評価されるが、各国固有の値をこのレンジから逆算することはできない。
インドについても今回の抜粋では具体的全国数値がない。
また、国によってレジストリ、遺伝子検査、新生児スクリーニングへのアクセスが異なるため、報告症例が少ない国ほど真の有病率が低いとは限らない。
MPSでは特にattenuated phenotypeの過小診断が問題となる。
重症型では幼少期から典型的な所見が現れるため診断につながりやすいが、軽症型では関節症状、軽度骨格異常、心臓病変、呼吸障害などが個別疾患として扱われ、MPS診断まで長期間かかる可能性がある。
したがって、2026~2035年にMPS診断患者数が増加しても、出生時の遺伝的発症率が増加したとは限らない。
疾患認知、酵素測定、尿中GAG検査、遺伝子検査などの普及によって、従来見逃されていた患者が新たに診断される可能性がある。
治療では、病型によって酵素補充療法(Enzyme Replacement Therapy:ERT)が重要となる。
資料ではMPS I、II、IVA、VIでERTが標準治療として使用されるとされる。
ERTは不足しているライソゾーム酵素を外から補充し、GAG蓄積を減らすことで臓器障害進行を抑えることを目的とする。
ただし、すべてのMPSサブタイプに同じERTがあるわけではなく、病型ごとに適応が異なる。
また、中枢神経系病変への効果には限界があり得るため、全身症状の改善と神経学的進行抑制を同一に考えるべきではない。
造血幹細胞移植(Hematopoietic Stem Cell Transplantation:HSCT)は、選択された早期患者、特にMPS Iで長期的利益が期待される治療として挙げられている。
ここでも重要なのは「early-stage」であり、すでに不可逆的な神経障害が進んでからでは十分な効果が得られにくい可能性がある。
このため、MPSでは早期診断が治療機会そのものを左右する。
支持療法も非常に重要である。
骨格変形に対する整形外科的治療、呼吸管理、心臓モニタリング、神経認知機能支援などが必要となる。
MPSは全身性疾患であるため、代謝専門医だけでなく、整形外科、循環器科、呼吸器科、耳鼻咽喉科、神経科など複数診療科の連携が必要となる。
新規治療としては、遺伝子治療、基質減少療法、次世代酵素製剤などが開発されている。
ただし、今回の資料ではこれらはemerging therapiesとして位置づけられており、すべてがすでに承認された標準治療という意味ではない。
したがって、2026~2035年の研究開発市場では重要だが、現時点の治療基盤は病型に応じたERT、HSCT、支持療法である。
市場疫学の観点では、MPSは一般的な慢性疾患のように人口高齢化だけで患者数が増える疾患ではない。
患者プールを左右するのは、出生数、保因者頻度、遺伝的集積、近親婚、新生児・小児期診断、遺伝子検査、患者生存率などである。
さらに、病型別治療が改善して小児期死亡が減少すれば、成人MPS患者が増える可能性がある。
その場合、出生発症率が一定でも人口有病率は上昇し得る。
つまり、「有病患者数増加」と「MPS出生頻度増加」は別の現象である。
2026~2035年の患者プールを押し上げる第一の要因は、軽症・非典型症例の診断改善である。
第二に、遺伝子検査の普及によるサブタイプ確定率向上がある。
第三に、治療改善による長期生存がある。
第四に、レジストリの整備によって従来統計に反映されなかった患者が捕捉される可能性がある。
一方、MPSは遺伝性疾患であるため、一般的な生活習慣病のように短期間で発症率が大幅に変化するとは考えにくい。
したがって、予測患者数の増加が示された場合でも、その多くは診断率向上と生存期間延長による可能性を考慮する必要がある。
全体として本レポートは、MPSを「GAG分解に必要なライソゾーム酵素の遺伝的欠損によって基質が体内に蓄積し、骨格、内臓、呼吸器、心臓、神経系などに進行性障害を起こす複数の希少遺伝性疾患群」と位置づけている。
世界のMPS全体の出生頻度は1.04~4.8/10万人出生、統合推定約2.27/10万人とされ、欧州では約1.5~3/10万人出生である。
MPS Iは全症例の約30~50%、MPS IIは15~35%、MPS IIIは10~25%とされるが、これらは地域ごとの幅を持つ推定値であり、単一集団における固定構成比ではないため単純合算すべきではない。
MPS IIはX連鎖性のため男性優位である一方、MPS IIIなど多くの他病型では男女差は小さい。したがって、MPS全体の性差はサブタイプ構成によって変化する。
米国では出生発症頻度約0.98/10万人、人口有病率約2.67/100万人とされる。この2つは出生発症と現在有病という異なる指標であり、直接比較すべきではない。
また、中東・北アフリカでは近親婚の影響でMPS I、III、VIが高頻度となる場合があり、東アジアではMPS IIが比較的多いという地域差が示される。日本はMPS II疫学の重要なデータ提供国とされるが、今回の抜粋には具体的な日本の発症率は示されていない。
治療ではMPS I、II、IVA、VIなどでERTを用い、選択された早期MPS IではHSCTが検討される。さらに整形外科治療、呼吸管理、心臓モニタリング、神経認知支援など多職種による長期管理が必要である。遺伝子治療、基質減少療法、次世代酵素製剤は有望な研究開発領域だが、今回の資料では新興治療としての位置づけである。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、真の遺伝的出生頻度そのものの増加より、軽症型の認知向上、遺伝子検査拡大、レジストリ整備、早期治療による生存改善が診断・有病患者数を押し上げる可能性が高い。
したがって、今後のMPS管理における中心的課題は、MPSを一つの均質な疾患として扱うのではなく、MPS I、II、III、IV、VI、VII、IXなどを遺伝子・酵素・臨床表現型ごとに正確に分類し、典型的な乳幼児症例だけでなく成人まで未診断となっているattenuated formを積極的に見つけること、さらに治療可能な病型では不可逆的臓器障害が進む前にERTやHSCTなどへつなげることである。2026~2035年は、超希少疾患ゆえに過小評価されてきた真のMPS患者数をどこまで明確化し、出生直後から成人期まで切れ目のない診断・治療体制を整備できるかが、臨床・疫学・研究開発・市場の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
- 序文
1.1 はじめに
1.2 調査の目的
1.3 調査方法および前提条件 - エグゼクティブサマリー
- ムコ多糖症市場概要 ― 主要8市場
3.1 ムコ多糖症の過去の市場規模(2019~2025年)
3.2 ムコ多糖症の市場規模予測(2026~2035年) - ムコ多糖症の疫学概要 ― 主要8市場
4.1 ムコ多糖症の疫学動向(2019~2025年)
4.2 ムコ多糖症の疫学予測(2026~2035年) - 疾患概要
5.1 徴候および症状
5.2 原因
5.3 リスク因子
5.4 ガイドラインおよび病期
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 ムコ多糖症の病型 - 患者プロファイル
6.1 患者プロファイルの概要
6.2 患者心理および精神・感情面への影響因子 - 疫学動向および予測 ― 主要8市場(2019~2035年)
7.1 主な調査結果
7.2 前提条件およびその根拠
7.3 ムコ多糖症の診断済み有病患者数
7.4 ムコ多糖症の病型別患者数
7.5 ムコ多糖症の性別患者数
7.6 ムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:米国(2019~2035年)
8.1 米国における前提条件およびその根拠
8.2 米国におけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
8.3 米国におけるムコ多糖症の病型別患者数
8.4 米国におけるムコ多糖症の性別患者数
8.5 米国におけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:英国(2019~2035年)
9.1 英国における前提条件およびその根拠
9.2 英国におけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
9.3 英国におけるムコ多糖症の病型別患者数
9.4 英国におけるムコ多糖症の性別患者数
9.5 英国におけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:ドイツ(2019~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件およびその根拠
10.2 ドイツにおけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおけるムコ多糖症の病型別患者数
10.4 ドイツにおけるムコ多糖症の性別患者数
10.5 ドイツにおけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:フランス(2019~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件およびその根拠
11.2 フランスにおけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおけるムコ多糖症の病型別患者数
11.4 フランスにおけるムコ多糖症の性別患者数
11.5 フランスにおけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:イタリア(2019~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件およびその根拠
12.2 イタリアにおけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおけるムコ多糖症の病型別患者数
12.4 イタリアにおけるムコ多糖症の性別患者数
12.5 イタリアにおけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:スペイン(2019~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件およびその根拠
13.2 スペインにおけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおけるムコ多糖症の病型別患者数
13.4 スペインにおけるムコ多糖症の性別患者数
13.5 スペインにおけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:日本(2019~2035年)
14.1 日本における前提条件およびその根拠
14.2 日本におけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
14.3 日本におけるムコ多糖症の病型別患者数
14.4 日本におけるムコ多糖症の性別患者数
14.5 日本におけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 疫学動向および予測:インド(2019~2035年)
15.1 インドにおける前提条件およびその根拠
15.2 インドにおけるムコ多糖症の診断済み有病患者数
15.3 インドにおけるムコ多糖症の病型別患者数
15.4 インドにおけるムコ多糖症の性別患者数
15.5 インドにおけるムコ多糖症の年齢別患者数 - 患者ジャーニー
- 治療上の課題およびアンメットニーズ
- キーオピニオンリーダー(KOL)の見解
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