下水道インフラの健全度向上に向けた専門チームを設置
― 下水道インフラの健全度を向上させる技術開発に注力 ―
安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)は、国内の重要課題の一つであるインフラ老朽化への対応について、当社がこれまで各分野で行ってきた技術開発や関連工事を通じて培ってきた知見を基に、下水道インフラの調査、診断、修繕、改築に至る一連の技術を速やかに展開するべく、2025年10月より専門のチームを設置しました。
- 取り組みの背景・目的
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した幹線下水道管路損傷に起因する大規模陥没事故では、硫化水素で腐食した下水道管に起因するとの考えが示される(注1)など、設置から長期間経過した下水道インフラの老朽化は全国規模の課題として認識され、その対策が急務となっています。
また、国土交通省が実施した下水道管路の全国特別重点調査では、腐食が生じやすいと判定された優先実施箇所813kmのうち、2025年8月時点で調査が完了した730kmの中で最も危険度の高い「緊急度I」と判定された要対策延長(原則1年以内の速やかな対策が必要と見込まれる推計延長)は72kmに達しています(2025年9月17日公表)。
このような現状を踏まえ、下水道管路の健全度を向上させるために“安藤ハザマがいま提供できるソリューション”を取りまとめるとともに、保有技術の展開や新たな技術開発を担う専門チームを設置して取り組みます。
当社が得意とする技術を下水道インフラの修繕、改築に活用することで、管路の損傷に起因する陥没事故の未然防止に貢献します。
- 安藤ハザマのソリューション
(1) 防菌コンクリート
当社が開発した防菌剤(※2)を混和したコンクリートの耐食工法で、硫黄酸化細菌によるコンクリートの硫酸劣化を抑制します。他の微生物や環境への影響がなく、効果が長期間持続する特長があります。現場打ちコンクリートやコンクリート二次製品等に数多く採用されています(表1)。
適用製品:現場打ちコンクリート(レディーミクストコンクリート)、コンクリート二次製品(鉄筋コンクリート管、マンホール、ボックスカルバート等)、補修用モルタル(下地モルタル含む)、グラウト等
表1:防菌コンクリート施工実績(抜粋)
[納入日] [施工場所] [事業主体] [製品名] [数量]
2021年 ベトナム ハイフォン市 マンホール1号 2基
2021年 宮城県 仙台市 現場打ちコンクリート 345m3
2021年 福岡県 鞍手町 推進管 186本
2022年 宮城県 仙台市 現場打ちコンクリート 628m3
2022年 三重県 三重県 現場打ちコンクリート 69m3
2022年 埼玉県 寄居町 マンホール1号 96基
2023年 宮城県 仙台市 現場打ちコンクリート 141m3
2023年 福井県 福井市 現場打ちコンクリート 57m3
2023年 広島県 東広島市 推進管 293本
2024年 大阪府 大阪府 現場打ちコンクリート 29m3
2024年 茨城県 水戸市 現場打ちコンクリート 68m3
2024年 島根県 松江市 推進管 136本
2025年 茨城県 茨城県 現場打ちコンクリート 229m3
2025年 広島県 広島市 現場打ちコンクリート 58m3
(2) バイオスマートコンクリート(R)(注3)
強アルカリ条件下でも代謝活動と増殖が可能な強アルカリ耐性菌をコンクリートに練り混ぜ、その代謝活動によってひび割れを自己治癒させる効果を持つコンクリートです。
一般的な好気性微生物は高pH環境では死滅あるいは芽胞となって休眠状態となりますが、当社が獲得した強アルカリ耐性菌「AH株」は、pH11~12の強アルカリ条件下でも代謝活動と増殖が可能です。これにより、強アルカリ材料であるコンクリート中でも活動し、炭酸カルシウムを析出してひび割れを閉塞するとともに、酸素を消費・除去することで鉄筋の腐食を抑制する防錆機能をも併せ持ちます。
AH株と栄養素を添加したバイオスマートコンクリート(R)で作製した供試体で漏水実験を行った結果、繰り返し導入したひび割れが自己治癒され、漏水が止まったことを確認しています(写真1)。

(3) スラスラ工法(注4)
既存のコンクリート構造物に専用モルタルを吹付け、「スラスラシート」と称する高分子シートを差し込むことで構造物と一体化させるもので、専用モルタルの防菌作用とシートの耐薬品性などによって長期間にわたり高い防食性能を発揮します(図1)。
適用範囲:下水道処理場施設(着水井、最初沈殿池、連絡水路、汚泥処理施設、汚泥貯留施設等)、下水道施設(ボックスカルバート、特殊人孔など)
適用実績:上下水道施設(流域下水道浄化センター最初沈殿池修繕)
排水処理施設(ショッピングセンター排水処理水槽修繕)
商業ビル(排水貯留槽修繕)
導水路(水力発電所酸性河川取水路修繕)
標準施工断面図(躯体構造物) 標準施工断面図(円形構造物)

これらの当社が得意とする技術を下水道インフラの修繕、改築に活用することにより、健全度の向上に寄与することが可能です。
- 今後の展開
このほかにも下水道インフラの健全度向上に寄与する技術開発に取り組んでおり、開発の進捗に合わせて順次展開していく予定です。今後、専門チームで得た成果とともに、当社の技術を下水道管理者に提案し、安全・安心な都市生活や社会経済活動を支える下水道インフラの整備に貢献していきます。
(注1)埼玉県が設置した原因究明委員会の中間報告(2025年9月4日公表)
https://www.pref.saitama.lg.jp/c1502/news/nakagawa0314.html
(注2)防菌剤
下水道施設で発生する硫化水素をコンクリートの腐食原因となる硫酸に変える硫黄酸化細菌や鉄酸化細菌などの活動を阻害する薬剤。防菌剤をコンクリートに適正に配合することで、下水道施設特有の硫酸劣化に対する抵抗性を向上。
ヒューム管などの下水道用耐食性コンクリート製品として多数の実績を有するビックリート製品にも本防菌剤を使用。
https://bic.gr.jp/
(注3)バイオスマートコンクリート(R)
鉄筋コンクリート構造物の長寿命化を目的として、微生物の代謝活動によってコンクリート中の溶存酸素を消費し、かつ、酸素と水の供給路となるひび割れを自己治癒することで鉄筋の腐食を防止する技術。微生物を高度利用したバイオスマートコンクリート(R)として静岡理工科大学、愛媛大学および港湾空港技術研究所と共同開発。
https://www.ad-hzm.co.jp/info/2025/20240108.php
(注4)スラスラ工法
構造物に防菌効果を持つ専用モルタルを塗布し、左官仕上げして固まらないうちに耐薬品性の高い支持体付き高分子シートを差込み構造物と一体化させることで、長期にわたり高い防食性能を発揮する。上下水道施設、化学プラント、排水処理施設、温泉施設など、幅広い使用状況にフレキシブルに対応可能。
https://www.ad-hzm.co.jp/solution/concrete/detail_02/