50年にわたり撮り続けた「塩の現場」の作品約80点を紹介  片平孝写真展「塩の旅 ~地球の塩の現場に立つ~」 たばこと塩の博物館(東京・墨田区)で1月31日(土)から開催

2026-01-19 10:00
たばこと塩の博物館

たばこと塩の博物館では、2026年1月31日(土)から4月5日(日)まで、片平孝写真展「塩の旅 ~地球の塩の現場に立つ~」を開催します。

写真家・片平孝(かたひらたかし・1943~2025)は、1970年代初頭から「塩」をテーマのひとつに活動し始め、アフリカを皮切りに、世界各地の塩湖・塩原・岩塩坑・天日塩田などを取材する「塩の旅」を続け、日本と大きく異なる世界の塩事情を伝える作品を多く発表してきました。その作品は、塩が作り出す造形を切り取った風景写真としての美しさとともに、人類にとって塩が、生きるためになくてはならないものであることを教えてくれます。片平氏の作品は、「塩の現場」に立ちシャッターを切り続けてきたからこそ得られた情報と相まって、当館の活動を支える重要な資料となってきました。

残念ながら片平氏は2025年春にこの世を去りましたが、塩をテーマにこれほどの広さと深さで世界中を旅する写真家は、今後も現れないのではないでしょうか。地球が生み出す景観に魅せられた片平氏の写真家としてのテーマは塩にとどまらず、星や砂、雪や氷におよびました。

本展では、世界各地の「塩の現場」で撮影された作品約80点を8つのコーナーで展示します。驚異に満ちた地球の光景を伝える作品を通して、日本に住む私たちが想像すらしないような、多彩な「地球の塩」の姿をご覧いただきます。また、片平氏の「塩の旅」を支えた、中判フィルムカメラやデジタルカメラ、そして、ともに旅をしたベストなども展示します。

(Photo_01) タウデニ 真正面の太陽に焦がされて進むキャラバン (マリ) 2003年 撮影:片平孝

(Photo_01) タウデニ 真正面の太陽に焦がされて進むキャラバン (マリ) 2003年 撮影:片平孝

展覧会の構成と作品、片平氏プロフィールは別紙参照

開催概要

名称  : 片平孝写真展「塩の旅 ~地球の塩の現場に立つ~」
ヨミ  : カタヒラタカシシャシンテン
      シオノタビ チキュウノシオノゲンバニタツ
会期  : 2026年1月31日(土)~4月5日(日)
主催  : たばこと塩の博物館
会場  : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
所在地 : 東京都墨田区横川1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩10分)
電話  : 03-3622-8801
FAX   : 03-3622-8807
URL   : https://www.tabashio.jp
入館料 : 大人・大学生:300円/小・中・高校生、満65歳以上の方:100円
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 : 月曜日(ただし、2月23日は開館)、2月24日(火)

※やむをえず開館時間や休館日を変更する場合があります。最新の開館情報は、公式Xかお電話でご確認ください。

展覧会の構成と作品紹介

※“○○”部分は、片平氏のコメントに基づいています。

  1. アフリカ 塩との出会い・探求
    「砂丘を越えるハウサ族の塩キャラバン(ニジェール)」は、塩の写真家・片平孝を代表する1枚だといえるでしょう。「塩の旅」の2つのルーツ(マリとニジェール)のうちのひとつで、この塩キャラバンとの出会いにより、命がけで塩を運ぶ世界があることに驚き、塩の大切な役割を知って深く感動したことが、半世紀にわたって塩をテーマとした写真家のライフワークにつながりました。アフリカではじまった「塩の旅」から、片平氏の塩への探求をたどります。
(Photo_02) 砂丘を越えるハウサ族の塩キャラバン (ニジェール) 1972年 撮影:片平孝

(Photo_02) 砂丘を越えるハウサ族の塩キャラバン (ニジェール) 1972年 撮影:片平孝

“旅の最初は1972年、ヒッチハイクのような形でとび乗った、サハラ砂漠のキャラバンだった。”

(Photo_03) ラック・ローズと呼ばれるレトバ塩湖 (セネガル) 2001年頃 撮影:片平孝

(Photo_03) ラック・ローズと呼ばれるレトバ塩湖 (セネガル) 2001年頃 撮影:片平孝

“首まで湖に浸かり、足で、湖底に堆積した塩をザルにかき入れる。結んだロープでザルを水面まで引き上げては、塩を船に放り込む。”

  1. アフリカ 大地溝帯に魅せられて
    アフリカ大陸東部を南北に走る大地溝帯は、南はマラウイ湖付近から北は紅海を経て死海に達します。プレートテクトニクスを見せつけるかのように広がる巨大な断層は、地表に姿を表した海嶺ともいわれ、大地の裂け目から地中の物質を噴き出し、日本では想像すらしないような多彩な塩の光景を見せてくれる最前線として、片平氏を惹きつけました。
(Photo_04) 夕日のアッベ湖に立ち上がる石灰の塔のシルエット (ジブチ/エチオピア) 2011年 撮影:片平孝

(Photo_04) 夕日のアッベ湖に立ち上がる石灰の塔のシルエット (ジブチ/エチオピア) 2011年 撮影:片平孝

ジブチとエチオピアの国境にあるアッべ湖は、炭酸ナトリウムの多いアルカリ性の塩湖です。
“浅いアッべ湖の水面が夕日に染まる。岸辺に立ち上がる石灰の塔トラバーチンがシルエットになって、要塞のように見える。”

(Photo_05) 海になろうとする塩の湖・アッサル湖の渚 (ジブチ) 2011年 撮影:片平孝

(Photo_05) 海になろうとする塩の湖・アッサル湖の渚 (ジブチ) 2011年 撮影:片平孝

“海面より約150mも低い位置にあるアッサル湖。酸化した鉄分で褐色のシミがついた白い渚には、約40mの厚さで塩が堆積している。”

  1. アフリカ 33年越しに叶えた夢
    片平氏の「塩の旅」には2つのルーツがあります。そのひとつが、1970年にマリの港で見た岩塩板を運ぶキャラバンでした。以来、産地のタウデニへの思いを募らせましたが、長らく外国人が立ち入ることができない場所でした。片平氏は2003年、ようやく33年越しの夢を叶え、タウデニ~トンブクトゥ~モプティという、そのキャラバンの全行程を追うことができたのです。
(Photo_06) タウデニの岩塩を切り出し整形する (マリ) 2003年 撮影:片平孝

(Photo_06) タウデニの岩塩を切り出し整形する (マリ) 2003年 撮影:片平孝

タウデニ岩塩の採掘場は、真っ平らな地面を3mほど掘り下げたものです。干上がった太古の塩湖の底で固まった、水平な岩塩層を切り出します。
“切り出した厚さ約20cmの岩塩の原石は両面を削り落とし、純度の高い中心4cmを残して塩の板に仕上げる。”

(Photo_07) タウデニ 出発したキャラバンに朝日が昇る (マリ) 2003年 撮影:片平孝

(Photo_07) タウデニ 出発したキャラバンに朝日が昇る (マリ) 2003年 撮影:片平孝

タウデニから終点・マリの古都トンブクトゥまでは750kmあまり。昼間は日陰もない過酷な暑さ、夜は厳しい寒さという繰り返しが約20日間続きます。
“星明かりをたよりに、早朝4時に出発。凍えるような空気の中を進むと、やっと太陽が昇ってきた。朝日の温もりに思わず手をこすり合わせた。”

  1. オセアニア 乾燥大陸の奇観
    「塩」だけでなく「地球が生み出す景観」に関心があった片平氏は、オーストラリアの塩湖や塩田とともに、エアーズロックに代表される奇岩などを訪れています。乾燥地が大部分を占めるオーストラリアは、片平氏がテーマとする「塩」「岩」「星」いずれにも恵まれた場所だったのではないでしょうか。
(Photo_08) エーア塩湖の湖面を覆う塩の結晶 (オーストラリア) 1991年 撮影:片平孝

(Photo_08) エーア塩湖の湖面を覆う塩の結晶 (オーストラリア) 1991年 撮影:片平孝

南オーストラリア州北部の中央盆地には塩の湖が点在します。その一つに、雨季にだけ塩の湖に戻るエーア湖があります。
“足元に広がる絡み合った棘のある低木をかき分けて湖面に立った。夕日に染まっていく塩の花が見える。”

  1. ヨーロッパ 歴史遺産と塩づくり
    ヨーロッパは、アフリカやオセアニア、南米のような「地球が生み出す景観」がむき出しになった場所は多くないものの、塩と人との歴史的な関わりが刻まれています。片平氏は、中世にまでさかのぼるような「天日塩田」や「岩塩坑」を訪れつつ、その土地の地理や岩塩鉱脈の成り立ちにも関心を寄せていたようです。
(Photo_09) マルサーラ塩田の収穫作業 (イタリア) 2004年 撮影:片平孝

(Photo_09) マルサーラ塩田の収穫作業 (イタリア) 2004年 撮影:片平孝

海水を引き入れて、池から池へと移しながら濃縮して塩を作る、現在、世界中に広まっている天日塩田の基本形は、この地が元となっています。
“厚さ約5cmで結晶池いっぱいに堆積した塩を2m四方ごとに区切り、小山にする作業をしている。ピラミッド型に盛り上げるのは、塩にまとわりついたにがりを流し落として抜くためだ。”

  1. アジア 塩づくりの地を求めて
    アジアにも、ヨーロッパと同様、塩と人との関わりの歴史を伝えてくれるような製塩地があります。もともと「地球が生み出す景観」への関心とともにアフリカや南米を旅することが多かった片平氏ですが、アジアを訪れる頃には、ライフワークとしての「塩の旅」を明確に意識していたように思われます。
(Photo_10) ダニ族の塩の池 (インドネシア) 2004年 撮影:片平孝

(Photo_10) ダニ族の塩の池 (インドネシア) 2004年 撮影:片平孝

石器時代の塩づくりが残るというダニ族の村。標高1800mの中腹に、海水よりも薄い塩水が湧く小さな池があります。
“乾季には、池の塩水にバナナの茎を浸して灰まじりの塩をつくる。しかし、訪れた季節は雨季で、バナナの茎を池に浸して繊維をもみほぐし、浅漬けのようなものを作っていた。”

(Photo_11) バリの塩田 夕方の収穫風景 (インドネシア) 2004年 撮影:片平孝

(Photo_11) バリの塩田 夕方の収穫風景 (インドネシア) 2004年 撮影:片平孝

バリ島クサンバ村の塩づくり。砂浜に海水をまいてかん水を採る作業は日本の揚浜に似ていますが、天日で結晶させます。
“浅い容器に塩田でつくったかん水を入れて蒸発させ、8時間分の塩がたまった。シャーベット状の塩をかき集めるのはヤシの実の殻で作ったお椀。”

  1. 北米 砂漠と塩と星の旅
    北米にも広い乾燥地帯があり、「塩」や「岩」の景観とともに、乾燥地ならではの澄んだ夜空があります。関心のある「塩」や「岩」と合わせて「星」を写し込むには格好の場所だったといえるでしょう。
(Photo_12) モニュメント・バレーに昇る大熊座 (アメリカ合衆国) 撮影年不明 撮影:片平孝

(Photo_12) モニュメント・バレーに昇る大熊座 (アメリカ合衆国) 撮影年不明 撮影:片平孝

  1. 南米 地球と塩のハーモニー
    片平氏の「塩の旅」は、皮切りのアフリカに続いて南米へと展開しました。地球で最も乾いた砂漠ともいわれるチリのアタカマ砂漠周辺をはじめ、地球最大の塩湖(正確には塩原)であるウユニ湖など、地球と塩とが生み出した景観に惹かれたのでしょう。さらに岩塩坑や塩田もある南米では、数多くの作品が残されています。
(Photo_13) シパキラ岩塩坑 地下の岩塩教会大ホール (コロンビア) 1985年 撮影:片平孝

(Photo_13) シパキラ岩塩坑 地下の岩塩教会大ホール (コロンビア) 1985年 撮影:片平孝

南米コロンビアの首都ボゴタから北に50kmほど。岩塩鉱山の町・シパキラには『黒いカテドラル』と呼ばれる岩塩教会があります。
“岩塩を掘り出したあとに残った空間を利用して、1万人を収容できる大寺院がつくられた。”

(Photo_14) アタカマ塩原 (チリ) 1986年 撮影:片平孝

(Photo_14) アタカマ塩原 (チリ) 1986年 撮影:片平孝

チリ北部サンペドロ・デ・アタカマの南、アンデス山脈とドメイコ山地がぶつかるところに、広大な湿地帯・アタカマ塩原があります。
“アンデス山脈の麓まで続くアタカマ塩原の塩の大地を、夕日が染めていく。”

(Photo _15) 塩の結晶したウユニ湖に群れるフラミンゴのひな (ボリビア) 1986年 撮影:片平孝

(Photo _15) 塩の結晶したウユニ湖に群れるフラミンゴのひな (ボリビア) 1986年 撮影:片平孝

“時速100キロで快適に走っていると、突然たくさんのフラミンゴのひなが一斉に走り出す光景が目に入った。親鳥は天敵から雛を守るために干上がった塩湖で子育てする。”

(Photo_16) 月夜のウユニ湖に沈むオリオン座 (ボリビア) 1986年 撮影:片平孝

(Photo_16) 月夜のウユニ湖に沈むオリオン座 (ボリビア) 1986年 撮影:片平孝

“昼間にスコップで集めた塩を積み上げた小山が並ぶ。その遥か先、塩の地平線に、オリオン座が逆さまになって沈んでいく。”

片平孝プロフィール

1943年宮城県生まれ。東京写真大学(現・東京工芸大学)卒。日本写真家協会会員。2025年没。
地球が生み出す景観に魅せられ、海抜以下の灼熱の砂漠から極寒の雪山まで、その現場に立ち続けてきた写真家。砂漠の撮影を目的に訪ねたサハラで塩キャラバンと出会い、命がけでも運ばなければならない塩の大切さに気づく。以来、地球が生み出すさまざまな塩の姿や人びとの暮らしとの関わりを求めて世界中を旅し続けてきた。塩に覆われた壮大な景観が多い乾燥地帯は、同時に、砂や星の撮影地でもあり、砂・星・塩いずれのテーマもライフワークとなった。さらに雪や氷もテーマとし、出身地に近い蔵王の樹氷を中心に撮影を続けてきた。
主な著書に、『塩 海からきた宝石』『砂漠の世界』『雪の一生』(以上、あかね書房)、『地球 塩の旅』(日本経済新聞社)、『星の旅』(朝日新聞社)、『雪の手紙』(青菁社)、『塩 地球からの贈り物』『雪と氷の大研究』『砂漠の大研究』(以上、PHP研究所)、『おかしなゆき ふしぎなこおり』(ポプラ社)、『サハラ砂漠 塩の道をゆく』(集英社新書)などがある。