ヒアルロン酸Naマイクロニードルによる皮内深くに成分を届ける性能を3D可視化

大正製薬株式会社［本社：東京都豊島区　社長：上原 茂］（以下、当社）は、肌の気になる部分の悩み解消やスポット美容を目的に使用されているヒアルロン酸Naマイクロニードルが持つ「内包した成分を皮内深くに届ける」性能を、共焦点レーザー顕微鏡で3D可視化することに成功しました。ヒアルロン酸Naマイクロニードルは、ニードル（針）が皮内で溶解することで、内包した成分の放出が開始されます。この放出した成分が、速やかに皮内深くへと到達し、時間とともに広範囲に拡散することを確認しました。
この研究成果の一部は、第41回日本DDS＊学会学術集会（2025年6月17～18日開催）にて発表し、優秀発表賞を受賞しました。
＊DDS（Drug Delivery System）とは、体の必要な場所に必要な成分を適切に届けることで、成分の効果を最大限発揮するための製剤技術のこと

※ローダミンB（蛍光色素）を届けたい成分の指標とした

参考：比較対照としてヒアルロン酸Naマイクロニードルに内包した成分と同じ成分（ローダミンB）を溶解させた水溶液（以下、水溶液）を皮膚に塗布し、3Dで皮内挙動を確認しました（図2）。水溶液では、成分が皮膚表面上層部に広く均一に分布するものの、皮内深くへの拡散は確認されませんでした。以上より、皮膚に塗布して浸透させる一般的な水溶液製剤とは、その拡散性に大きな違いがあることが判明しました。

本研究では、蛍光色素であるローダミンBを内包したヒアルロン酸Naマイクロニードル（以下、成分内包マイクロニードル）を製剤化し、それを摘出皮膚＊に適用し、経時的な皮内拡散挙動を共焦点レーザー顕微鏡により評価しました（図3）。この手法では、まず皮膚の深さ方向に対し図4のような等間隔のスライス画像を取得します。この2Dのスライス画像を重ねて3D構築することにより、図5のような画像を取得しました。
結果、マイクロニードル中の成分は速やかに皮内深くに届き、時間とともに広範囲に拡散することが確認されました。
＊摘出皮膚：研究倫理に準拠し入手した、美容整形などで切除されたヒトの余剰皮膚。

また、本研究ではヒアルロン酸Naマイクロニードルに内包した成分と同一の成分（ローダミンB）を溶解させた水溶液について、皮膚に塗布した際の経時的な3D皮内挙動を確認しました。

水溶液では成分が皮膚表面上層部に広く均一に分布するものの、皮内深くへの拡散は確認されませんでした。

研究内容①において、マイクロニードル中の成分は速やかに皮内深くに届き、時間とともに広範囲に拡散することを、水溶液との比較により確認しました（図7上段・中段）。
このようなマイクロニードルの拡散挙動について考察するため、針形態の違いが成分の拡散性に与える影響を比較しました。具体的には、固体のニードルを混ぜ込んだ水溶液＊（以下、水溶液（ニードル配合））を皮膚に塗布し、経時的な皮内挙動を確認しました（図7下段）。
結果、水溶液と同様に成分は皮膚表面上層部に広く分布するものの、皮内深くへの拡散は確認されませんでした。このことから、ニードルが垂直に刺さる（マイクロニードル穿刺）ことが、成分を皮内深くへ拡散させることに必要な要素であることが示唆されました。

ヒアルロン酸Naマイクロニードルは、共焦点レーザー顕微鏡を用いた3D可視化により、成分を速やかに皮内深くに届け、広範囲に拡散させることに優れたデバイス（製剤）であることを確認しました。ヒアルロン酸Naで構成されたニードルに成分を内包する本製剤は、皮膚に塗布して浸透させる一般的な水溶液製剤とは、その拡散性に大きな違いがあることも判明しました。　
なお、ニードルには、長さ、太さ、強度、本数の違いなど様々な種類のものが存在します。ニードルの「刺す」という基本性能は、ニードルの形状やニードル同士の間隔などに影響され、届けたい場所や成分によって、求められる設計も異なります。今後、ニードルの形状、間隔などの違いによる皮内挙動の差についても研究を進め、DDS技術としての更なる展開を目指して参ります。