深刻な雷災害に悩むマレーシアの防災に貢献 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択

実験で行ったロケット誘雷の様子
実験で行ったロケット誘雷の様子

近畿大学理工学部(大阪府東大阪市)電気電子通信工学科教授 森本 健志を代表とする、中部大学(愛知県春日井市)、岐阜大学(岐阜県岐阜市)、福島大学(福島県福島市)、音羽電機工業株式会社(兵庫県尼崎市)との共同研究「持続可能なエネルギー供給と極端気象災害の早期警報のための電荷分布リアルタイム3Dイメージングと雷活動予測」が、国際科学技術共同研究推進事業である地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に条件付き採択※ されました。
本研究は、年間の発雷日が200日を超え、深刻な雷災害に悩むマレーシアのマラッカ海峡沿岸地域を対象に、世界最高峰の雷観測網を構築し、発雷予測などの実現によって防災に貢献することを目指すものです。
※ 今後、外務省やJICAによる相手国政府や関係機関との協議を経た後、正式に共同研究を開始。万が一合意に至らない場合は国際共同研究を開始できない可能性があるため、現時点では「条件付き」となっている。

【本件のポイント】
●雷災害の防災に関する国際共同研究が、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)として採択された
●マレーシアのニーズを基に、地球規模課題の解消に向けた国際共同研究として、政府開発援助(ODA)と連携して推進
●これまでに培った観測技術で雷雲内電荷分布のリアルタイム3Dイメージングと雷活動予測を行い、年間の発雷日が200日を超えるマレーシアの防災への貢献をめざす

【地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)】
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、独立行政法人国際協力機構(JICA)が連携し、科学技術の競争的研究資金と政府開発援助(ODA)を組み合わせることにより、開発途上国のニーズに基づき、地球規模課題の解決に向けた社会実装を目指す国際共同研究を推進するプログラムです。

【本件の概要】
近畿大学理工学部電気電子通信工学科教授 森本 健志は、電磁波を用いた雷放電や雷雲を観測する装置を開発し、雷放電メカニズムの解明や対策に関する研究を行っています。地上用の観測装置だけでなく、東大阪発の人工衛星「まいど1号」や国際宇宙ステーションからの雷観測、更には予め設定した場所に雷を誘発する誘雷の実績もあります。
今回、雷電流計測や雷で各所設備が壊れないための雷害対策を専門とする中部大学工学部教授 山本 和男らと共同で、深刻な雷災害に悩むマレーシアの防災に貢献すべく研究提案を行いました。マレーシアのマラッカ技術大学、テナガナショナル大学等とマラッカ海峡周辺の雷活動を対象とした世界最高峰の観測網を構築し、得られた研究成果を社会実装して防災に貢献します。今後、外務省による相手国政府との実施に係る国際約束の締結等の準備や手続きを経て、令和5年度(2023年度)から正式に共同研究を開始します。

【研究内容】
本研究は、落雷のエネルギー(中和電荷量)が大きく、電力・通信設備や電気・電子機器に被害を与える恐れのある正極性落雷が多いマレーシア・マラッカ海峡沿岸地域を対象に実施します。
まず、雷の前兆となる雲内の微小放電の開始からその進展路を詳細に観測するVHF(Very High Frequency=Ultrashort Wave:超短波)帯と、広域の雷活動全体を隈なく観測するLF(Low Frequency=Long Wave:長波)帯を両輪とする電磁界観測網を構築します。雷放電がどこで始まり、どのように進展し、どこで終わるのかについて、3D観測データを高速処理して雲内の電荷分布と中和される電荷量を推定し、高構造物とロケット誘雷で直接計測する雷撃電流波形で検証します。また、電磁界計測および雷撃電流計測によって、雷放電に関わる空中の電荷挙動を網羅的に捉え、その情報に基づく雲内電荷分布推定と発雷予測を実現します。さらに、IoTやAIを活用した送配電線網や電力機器の制御、極端気象災害の早期警報の社会実装を進めるとともに、誘雷による能動的耐雷・避雷対策についても研究します。

提案研究のイメージ
提案研究のイメージ

【関連リンク】
理工学部 電気電子通信工学科 教授 森本 健志
https://www.kindai.ac.jp/meikan/306-morimoto-takeshi.html

理工学部
https://www.kindai.ac.jp/science-engineering/


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