自動病理診断に繋がる画期的なイメージング技術を新開発  がん組織を非標識・無染色で自動的に可視化することに世界で初めて(*1)成功

富士フイルム株式会社

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、対象物への光照射で生じる散乱光を増強し、高感度に物質を検出する表面増強ラマン分光(Surface-enhanced Raman Spectroscopy: SERS)を活用して、組織の代謝物を非標識・無染色で高精度に大面積で分析できるSERSイメージング技術を開発しました。
また、本技術を応用した、当社R&D統括本部先端コア研究所と慶應義塾大学(末松 誠 客員教授、本務 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 理事長、医学部医化学教室 加部泰明 専任講師ら)との共同研究(*2)において、マウス生体切片中のがん組織の分布を、SERSイメージングによる代謝物情報から自動的に可視化することに世界で初めて(*1)成功しました。これは、がんの進行状態をより正確に判別するだけでなく、抗がん剤への耐性の有無やがんの悪性度判定など、がんの自動病理診断に繋がる画期的な成果です。なお本研究成果は、2018年4月19日(米国東部時間)に英国科学誌Nature Communicationsのオンライン速報版で公開されます。

現在、がんなど病変部の組織の分析方法として、抗体による標識や、染色を用いた、細胞形態のイメージング手法が一般的に利用されています。しかし、細胞のわずかな形態異常から組織を高精度に分析するには、熟練を要します。そのような中、標識・染色による形態分析ではなく、病変部特有の代謝物などの物質を同定することで組織を分析できるSERSを活用したイメージング(SERSイメージング)に注目が集まっています。
SERSイメージングは、基板上の対象物に光を照射したときに、物質の分子構造に応じて固有の波長を持つ光が散乱されるラマン散乱という現象を活用した分析方法です。さらに、基板上にナノサイズの金など金属微粒子を配置することで対象物からのラマン散乱を増強でき、高感度に物質を検出できます。しかし、金属微粒子を基板上に大面積で均一に配置することや、強められたラマン散乱光から必要な情報だけを取り出して画像化することが困難でした。
富士フイルムは、先端コア研究所にて将来に向けた新たな技術開発を進める中、写真フィルムで培った粒子形成技術やナノフォトニクス技術などを活かし、非標識・無染色で組織の代謝物を大面積で高精度に分析できるSERSイメージング技術を開発しました。

当社が開発したSERSイメージング技術

◆詳細はWebページをご覧下さい。
 ⇒ http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1286.html?link=atp

富士フイルムは、SERSイメージング技術をがん診断分野のみならず、バイオイメージング分野にも幅広く応用し、医療の質のさらなる向上に貢献していきます。

*1 対象物への光照射で生じる散乱光を増強し、高感度に物質を検出する表面増強ラマン分光(Surface-enhanced Raman Spectroscopy: SERS)を活用して、代謝物情報から非標識・無染色で自動的に可視化したことが世界初。
*2 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)末松ガスバイオロジー(2009~2014、研究総括 末松 誠:当時)および、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「疾患における代謝産物の解析および代謝制御に基づく革新的医療基盤技術の創出」研究開発領域(研究開発総括:清水孝雄)における研究開発課題「代謝システム制御分子の系統的探索による治療戦略創出と創薬展開」(研究開発代表者 加部泰明)により実施されました。なお、本研究開発領域は、2015年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されたものです。(慶應義塾大学の末松誠客員教授は、AMED-CRESTの研究費を受給しておりません。)

富士フイルムニュースリリース一覧
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