私たちが考える「こどもまんなか社会」とは 〜子どもの社会課題に取り組み続ける理由〜 をテーマに対談を5月末に実施しました

2023-06-08 10:00
私たちが考える「こどもまんなか社会」とは

今回は、子どもを軸にした社会課題にコミットしている会社をお招きし、わたしたちが考える「こどもまんなか社会」とは、というテーマで5月末にお話をうかがいました。オイシックス・ラ・大地株式会社様と、株式会社ニシハタシステム様にお集まりいただき、各社がなぜ子どもを軸にした社会課題にコミットしているのか、日頃あまり深くおうかがいできていなかった部分をお聞かせいただきました。

オイシックス・ラ・大地株式会社 BtoBサブスク事業本部 施設食材流通事業部 部長 清水 崇司さま
https://sukusukuoisix.oisixradaichi.co.jp/

株式会社ニシハタシステム 専務取締役 西畑 進太郎さま
https://www.nishihata-system.jp/jmobiles


───本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず自己紹介、会社のご説明と、コドモンとの関わりについて教えていただけたらと思います。

ニシハタシステム 西畑(以下西):初めまして、ニシハタシステムの西畑と申します。ニシハタシステムは「当たり前の防災を体現する」をミッションにして、日常業務から災害時まで使えるIP無線機、緊急地震速報のシステム、防災や災害対策に関するサービスの提供を行っています。元々は保育業界に向けて特化していたわけではなく、一般の企業や学校関係など幅広くご提供していたのですが、 最近では、保育業界に対しての防災、保育×防災をテーマに保育防災カンファレンスというオンラインの研修や、ほいく防災なびというメディアを立ち上げて、防災に関する情報発信をしながら、 防災・災害について考えるきっかけを提供していきたいと考えています。コドモンカレッジで防災や危機管理に関する研修の中でサポーター企業としてご一緒させていただいております。本日はどうぞよろしくお願いします。

オイシックス・ラ・大地 清水(以下清):オイシックス・ラ・大地の清水と申します。私は2022年10月に設置されたBtoB領域の、特に給食施設に対する食材提供やサービス提供を行う施設食材流通事業部、保育事業の担当責任者になります。現在取引してる保育施設が約750施設で、安心・安全な食材、そして様々なサービスを「すくすくOisix」という名称で提供しています。弊社は、食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決する、 単純に安心安全な食材を届けるだけではなくて、それをやることによってお客様の食に関する課題が解決できている必要がある、そういうところまで考える経営理念を持った会社になります。最近ではサステナブルリテラーとして持続可能型小売業という色合いを強めていて、例えば、無駄になって捨ててしまうような食材を加工して再生し、お客様に向けておやつや食品にして販売するということを行ってます。それが可能なのは、直接4000軒の生産者と契約し、メーカーともやり取りをしているのが理由で、川上から川下まで一貫して、流通・販売まで担っている会社だからというのが理由です。「すくすくOisix」がどんなサービスを提供しているかというと、大きく4つあります。まずはおいしい安心・安全な食材を提供していること、2つ目に専用の発注システムを組んで無償でお客様に提供している。そして3つ目に献立。弊社の中に管理栄養士も在籍しており、献立を提供しつつ直接農家と契約している強みを活かして食育のコンテンツも提供しています。そして4つ目がミールキットです。今までは献立とその発注システムと食材の提供をしていたんですが、2022年7月から給食用のミールキットを開発し、調理の時短が実現できるような商品をお届けしています。献立に沿ったミールキットで、安心安全で、なおかつ時短が実現できて、その空いた時間に、保育園の付加価値を高めるような活動をしていただく、というコンセプトの商品です。コドモンさんとは2020年くらいから、献立作成から食材発注までがワンストップでできるという連携をしたり、先ほど西畑様もおっしゃっていたコドモンカレッジに協賛スポンサーとして参加させていただいております。

■どんな思いで、なぜ子どもを軸にした社会課題にコミットし続けているのか、どうやってビジネスで解決しようとしているのか

───どうもありがとうございます。みなさまがたとは色々なお取り組みをする中で、お付き合いがずっとあったんですけれども、 テーマごとにお話をする機会はあっても、どうして子どもを軸にした社会課題にコミットしているのか、というようなコアの部分をうかがう機会はあまり作れていなかったと思っています。というわけで、今日はどんな思いで、なぜその社会課題にコミットし続けていらっしゃるのか、どうやってビジネスで解決しようとしているのかという、コアの前提の部分に焦点を当てて、深くお話を伺っていきたいと思います。では西畑さんからお願いいたします。

西:ありがとうございます。社会課題にコミットするというところに関して、私たちは防災・災害対策にフォーカスをあて、サービスや事業の展開をさせていただいてます。この災害大国日本においては、 日常生活の中で自然災害は切っても切り離せないものと考えています。地震以外にも熱中症・大雨・台風・降雪など、この日本においては様々な災害が起こっています。災害は起こることというのを前提に考えた時に、 ある程度の大人になってくると、事前の準備や、身の安全を自分で守る行動は取れると思うんですね。ただ、保育園に通っている幼い子どもたちは、自分で自分の身の安全を守る行動をとるのは難しいので、未就学児の子どもが多くいる保育園は、災害弱者になりやすいんです。保育園の環境も含めて考えていくと、例えば平日午後14時に地震などの災害が起こった時に、保育園の先生方は自分1人で子どもたち10人、20人、30人の命をその瞬間に守る行動を取らないといけない。これってすごく過酷な状況だと思っています。すごく特殊な状況です。
現状、まだまだ災害対策や防災に対しての答えはないと考えていて、ただ年々災害の規模も非常に大きくなって、昔でいう想定外が今では当たり前になってしまってる。そういう状況下で私たちがやりたいのは、施設のみなさんが答えにたどり着けるようにお手伝いをしたくて、サービスや情報の提供をさせていただいてます。
緊急地震速報やIP無線機を一般の企業さんや、学校関係に数多く導入いただいてたんですね。地震が来る前のことは多少なりともお手伝いできていたんですけど、地震が来た後に電話が繋がらなくなってしまって、例えば保育園だと園外保育で外に出てしまっていた場合は、指示が出せない、安否確認が取れないという課題があります。保護者との連絡も取れないし、情報共有ができない、安否確認の報告ができないというのは、すごく現場が課題に感じていらっしゃる部分であります。いろんな課題をいただく中で何かできればという思いで、IP無線機の事業をスタートして、命を預かるお仕事をされてるこの保育業界に特化して、ご案内をさせていただいている次第です。
本当に災害大国日本においては、防災は切り離せないものだと考えているので、 全てが全てサービスで解決できるものではないと思うんですけど、私たちが携わることで、1つでも多くの命を助ける、そこに繋げていきたいな、という思いで、この社会課題に取り組んでいる次第です。

清:私は2012年から2014年まで、仙台の事業所に配属になりまして、ちょうど震災の直後で、まだ結構大きな地震がある時期だったんですけれども、東日本大震災のお話を聞く機会がたくさんありました。その時、私の子どもが通っていた幼稚園の園長先生は、震災当時保育園が流されちゃって、10人ぐらい園児を連れてすぐ逃げて助かったっていう経験をされてる園長先生だったんですよね。その時に何がやっぱり1番怖かったかっていうと「情報がないことが1番怖かった」とおっしゃってたんですよね。何が生死を分けるかっていうと、情報がちゃんと掴めているかどうか、そういうところにあるのかなというふうに思ったのですごいサービスだなと感じました。情報がなくても結局逃げないと、というとっさの判断で、車に子どもを押し込んで逃げていなければその保育園は結果流されちゃっていたので、そうやって個人が判断しなければいけないってすごく過酷といいますかつらいですよね。どこに行ったらいいのかとか、何が起こるのかっていうことがわかれば判断材料も増えると思うので。そういったシステムがもっと広がれば本当にいいなって思います。

西:今、清水さんがおっしゃっていただいたような、東日本大震災の現場の先生の生の声をわたしも何回かおうかがいしていて、実際に現場で起こったこと、被災者の声や、ご遺族の方のお話など、やっぱりその瞬間に判断できたかできないか、本当に10秒とか20秒とか数秒の差だと思うんですよね。で、それで結果が大きく変わっているので、情報がなくて判断ができるかどうか、そこってすごく大きい問題だなと感じますね。

清:情報が何もない状態で、例えば誰かと話せて人に背中を押されるのと、自分一人で決めるのとではかなり違いは大きいなと、特に災害の規模や危険度が増せば増すほどそうだろうというのは感じます。

───どうもありがとうございます。次はオイシックス・ラ・大地様がなぜ社会課題にコミットしているのか、そういったところをお聞かせいただければと思います、お願いします。

清:オイシックス・ラ・大地としてなぜ保育園向けにサービスを提供しようと考えたのかというところで、元々私どもは、BtoCの宅配通販がメインの会社です。お客様のご自宅までお届けして、ご家庭の中で商品を消費してもらうことを前提としています。家庭以外でもオイシックスの味をと考えた時に、 オイシックス会員全国約40万世帯の3割以上が保育園に通っていらっしゃるご家庭が非常に多く親和性が高いということで、最初に子どもたちが社会に出て日常的にご飯を食べる保育園で、おいしく、安心して食べてもらうことができたらいいよね。さらにそれを家でも食べたいとなれば、よりお客様にも喜んでいただけると思って始めたのが前提です。 保育業界における課題は、最近は待機児童も減り定員割れなどが出てきている中で、保育園もコストを気にするようになってきています。「おいしい」や、「安心」って、なかなか定量的な価値に表しづらいものなので、そこにお金を使うよりは、そうじゃないところにお金を使いたい。例えば、保育園の職員の中で保育士さんの割合が圧倒的に多く9割ぐらいを占めるので、 経営者層のみなさんはそっちに優先順位を割いてしまって給食の立ち位置が非常に優先順位が低くなるわけです。監査上は提供できていれば問題ないという減点方式の見方をされることが非常に多いので、 給食提供というのが、保育施設の中においてコスト部門のように見られてしまうことが多く、それに加えて昨今の食材費の高騰もある中で、食材費やコストを下げないと、と考える方が非常に多いんですよね。コストを抑えるという思考のまま行くと、給食の質は担保できるのかという課題が見えてきました。それを解いていくには単純に商品がいいですよ、だけではなくて、現場の栄養士さん調理員の方が楽になって、自分の付加価値を提供できるようになっていく、ないしは、キットを使うことによって給食の運営コストが下がりそう、といったことをアピールしていただくことで、園は例えば、その地域においての優位性を出したり、保育士の応募者、利用したい園児をもっと増やすことができて、課題を解決できるんじゃないか。というストーリーでサービスを立ち上げて、今、給食キットを提供するところまで来ました。まだまだ課題はたくさんあるんですけれども、食の課題解決が僕らの会社の使命なので、 給食の優先順位は低いけれども、そこに挑んでいくところがミッションだと思っています。

───はい、ありがとうございます。園にもよると思いますが「毎日保育園で食べる給食」というものと「食育」は、まったく切り分けて考えられている感じなんですかね。

清:保育指針の中に食育と明確に書いてはあるんですけれども、やらないと減点になってペナルティが与えられるかというと、別に何もないんですよね。食育計画はもちろん提出する必要があるんですけれども、今年の献立はこれですと提供しさえすれば、それで何も言われないという現状はあります。特色のある保育園さんはもちろんあるんですけれども、余力がないところが圧倒的に多いという実感があります。この5月からちょうど調理キットを使い始めてくださった認定こども園さんがあるんです。去年ぐらいから園児の応募率が一気に下がって定員割れを起こしそうになり、園の価値をアピールするために、自園調理でオイシックスの商品も使っていますというアピールをしたいという狙いです。実は僕も数日間給食室の中に入って、調理サポートをしてきたんです。

───すごく素敵な取り組みですね!!!

清:提供時間が守れるかどうか、というギリギリの戦いの中で運営されてるんだなっていうのが、非常によくわかりました。 そしてそれって結構、時間内に提供できた!というところで満足しちゃうんですよね。子どもたちが食べているのを見られないことも多くて、片付けをして、おやつも準備し始めないと、となるとそもそも給食室から出られないという状況もあると思います。キットを使うと例えば、野菜があらかじめカットされているのでその前段として、泥を落としたり洗わなくていい、皮を剥いたり、使った包丁を洗う必要もない、そういう二次的な効果も出てくるんです。だから時間の効率化が図れて余力を作ることができます。

───なるほど、よくわかりました、どうもありがとうございます。では次に今日の1番のメインテーマをお聞きしていきたいなと思うんですけれども、4月からこども家庭庁が発足しました。子どものことをちゃんと考えようっていう機運が高まっているというのを我々も感じています。もちろん本当にそれが子どもにとっていい形で、財源の問題もクリアになり実を結ぶ社会になっていったらいいなと心から願っています。我々は子どもや子どもを取り巻くいろいろなことを考えて、それをビジネスと結び付けて、なるべく社会に貢献できるようにやっている3社が集まっていると思うんですけれども、わたしたちが考える「こどもまんなか社会」っていうのは、じゃあ、どんな社会なんだろうっていうところをちょっと考えてみたいと思います。例えば保育でいうと配置基準問題が1つ大きな課題としてあると思うんですけれども、 それをとっかかりにお話を聞かせていただければと思っております。

■「知ることができる」「選択できる自由」が子どもたちの幸せ

清:国の配置基準は、私も見直しが必要だなと個人的には感じています。食の観点からいうと、子どもたちの喫食率という視点があります。もちろん大前提として、無理やり食べる必要は全然なくて。僕も実は大人になるまで野菜ってキュウリしか食べられなくて…野菜の会社にいるのに(笑)。でも健康に育ってるので問題はないのですが、乳幼児期における子どもたちの幸せってなんだろうって考えた時に、大人になってからもそうだと思うんですけれども、「知ることができる」っていうことですね。それがなんなのかを知ることができることと、選択できる自由だと思うんですよね。選択できる自由っていうのは、例えば食本来のおいしさだったりを子どもたちが知った上で、嫌いなのか、好きなのかは判断できる状態かなと思っていて、 まずは食べれるような環境をいかに作るかっていうのは、非常に重要なんじゃないかなと思っています。
保育施設における給食で、 国の配置基準通りの人数の大人が喫食の介助をした時と、人数を増やして調理員さんとか栄養士の方も入ってもらって手厚く配置されている時、後者のほうが子どもたちの喫食率がいいんですよね。質と量を上げることによって子どもたちの食べ方が全然違うということが、N数は少ないですが見えている。そう考えた時に、保育士の配置基準問題っていうのは、食の観点からいっても決して関係ないことではないです。
あと調理員の配置基準っていうのも決まってるんですよ。特定給食施設は管理栄養士を置かないといけないっていう決まりはあるものの、栄養士という役割は通常の保育施設において推奨はされていますが義務はないんです。そして調理員さんの配置義務は公定価格の中に費用も算出されている状況で、 多いかというとかなりギリギリで回さざるを得ないような配置になっています。時間内に提供する、プラス調理のスキルも求められるので、達人が育つんですよね。神みたいなスピードで野菜を切ったり調理ができたり、達人が育ちすぎると栄養士さんが色々言えなくなっちゃうんですよね。そういうブラックボックスになりがちな仕組みの不具合みたいなものを僕らはずっと見てきました。ですので調理員の設置義務の見直しにもスポットを当ててほしいなというふうに思っています。キットで解決する方向性もあるんですが、アレルギーの対応や、様々な個別対応は増えてきてますし、食に関する乳幼児期の保護者さんの不安って大きいものがあると思うので、しっかり地域において栄養士さんが本来の専門性を活かせるような働き方ができるようになるといいなと。それは、配置基準の見直しも大きく関係しているんじゃないかな、と思っております。

───ありがとうございます。管理栄養士やまわりが食育などの連携を取りづらい状況が生まれてきてしまうっていうのを聞きながら、子どもの育ちにコスト意識よりも他に大事なことは本当にないかな、っていう観点を日本という社会に持ってもらいたいなという気持ちでいっぱいになりながら聞いてました。

清:子どもたちに対して、食って、給食って、本来こういうものだよっていうことが伝えられているかどうか、 そこに至るには現状の「大丈夫」とは全然レベルが違うのではないかと思いますね。

───いや、ほんとにおっしゃる通りだと思いました、ありがとうございます。我々コドモンは3月に、配置基準に関するアンケートというものを実施しました。コドモン導入園のみなさまにご意見をうかがったところ、災害の時に今の基準だと命を守れないという回答が1位でした。他にも配置基準に関しては様々な調査が行われているのですが、どの調査でも災害は1番問題視されてます。そこも踏まえて西畑様にお話をうかがえればと思います。

【調査レポート】保育士の配置基準問題 80%が「配置基準の改善は不適切保育の減少に寄与」と回答 より

■全ての子どもが命を守られて、安心して過ごせる環境こそが「こどもまんなか社会」

西:「こどもまんなか社会」とは、まず前提として全ての子どもが命を守られて、安心して過ごせる環境っていうのがあると思うんですよね。食も同じだと思っていて、安心・安全であることが前提で美味しく楽しくで。防災に関しても、保育に関しても同じであると思うんです。現場では、いくら配置基準を満たしていたとしても、人が足りてないと先生から聞いてます。先ほども話した通り、災害っていつ来るかわからないんですよね。いつ来るかわからないものだからこそ、防災を何か特別なものとして捉えるのではなくて、日常の延長として捉えた上で、日頃から取り組んでいただきたいなっていうのは1番強く思うところです。防災って聞くと特別に何かやらないといけないというような、少し難しいイメージをお持ちだと思います。防災・災害対策として備蓄食、備蓄水、防災リュックを用意しますとか。これってもちろん重要なことだと思うんですけど、その時しか使わないんですよね。備蓄食も、食べたことがある人のほうが少ない。防災リュックも中に何が入ってるかあまりわかってない、使い方がわからない。すごく特別なものとして捉えるからこそ防災が日常の延長にはなっていないことをすごく課題に感じてます。
保育園の先生方でいうと、特に毎月実施されてる避難訓練が直接的に課題解決に繋がるので、日頃からの訓練で準備をしていただくことがとても重要だと考えてます。避難訓練はどの園でも毎月実施されていて、火災・地震・津波など色々なシーンで防犯も含めて取り組みをされていらっしゃいますが、結構型になっちゃってるんですよね。もちろん全ての園さんではないんですが、型になってしまうと、いざ災害が起こって、イレギュラーが発生した時にはおそらく助からないだろうと。実際に地震が来るタイミングって色々で、例えば園長先生が研修で園にいないとか、園外保育中に災害が起こってしまったとか、子どもたちが寝てる午睡中だったりとか食事の時間に地震が来たとか、そういう様々な想定外というのは、もう事前にある程度認識できるはずなんですよね。今この時代で、過去の東日本大震災とか、いろんな災害を経験してる日本だからこそ。ただやはり被害が繰り返されてしまうので、過去を活かしきれてない、ここも大きい課題だと考えています。
私は防災士の資格を取得したんですが、その観点で見た時に、その普段の日常で行っている避難訓練を、訓練だからこそ失敗してもらいたいと思っているんです。保育士のみなさんにお話をしていて、訓練で失敗するからこそ変化させなきゃいけないポイント、改善しないといけないポイントとか、いろんな改善点が見えてくるはずなんですよ。訓練でいつも通りきちっとできました、これって正直意味がない訓練になってしまっていて、失敗をして見直しをするからこそいざという時に、自分たちの命が助かる行動に繋がる。避難訓練1つ取っても毎月やるから型になっていってしまうのではなく、マニュアル化するのではなく、日頃の訓練で失敗できるような環境を作っていただきたい。これは、現場の先生がというよりかは、経営者の方々が、そっちに振り切らないといけないポイントかなとは思うんです。ただ、先ほど清水さんのところでも、お話が出てた優先順位で見た時に、日常の業務が優先順位としては高くなるので防災ってすごい下がってくるんです。ただ、その優先順位を上げられるのって、経営者の方々しかいないんです。 日常業務でお忙しいとは思うんですけど、例えば、園長先生に連絡がつかない状況で1回訓練をしてみようとか、園外保育中、お散歩に出てる時に地震が来た想定をして訓練してみようとか、何回も何回も失敗して、繰り返してやっていくことで、いざという時に行動が取れるようになるので、そのイレギュラーを練習の中で取り入れてやっていただくことで、安心・安全を守られる環境が作れるのかなと考えてる次第です。

───ありがとうございます。おっしゃる通りですね、避難訓練で失敗して、初めて役に立つっていう当たり前だけど忘れがちなことですね。イレギュラーを取り入れて、もう10個ぐらいちゃんと型が身についているぐらいまで行くと完璧ですよね。

西:そうです。考えられる型は全部やったぞ。みたいなところまで行けると本当にいいです。

清:今自分の子どもの頃の避難訓練を思い出してたんですけども、 小学校の時とか結構急に避難訓練のベルが鳴って焦るんですよねすごく。訓練って本当に大事だなって思っていたんですが、その反面、 なぜ保育園の避難訓練が型にはまっちゃうのかっていうことを考えていました。給食でもアレルギーの事故とか食中毒が起きないように、運営がすごくディフェンシブになるんですよね。そうすると、使う食材を少なくして、リスクのある食材を使わなくなったりとかするんですよね。型にはめてやらないと、子どもが例えば怪我しちゃうとか、そういうことを恐れたりしてるのかなと私たちも感じていたんですが、そういう反応ってあるものですか。

西:ありがとうございます。非常に多いです。これはあくまでも私の主観になっちゃうんですけど、先生って失敗できないんですよね。先生っていう存在が、あまり失敗ができる人たちではないっていう感覚になってしまっていて。変化を入れるさじ加減って、いつ来るかわからない、それだけでもいいんですよ。時間をお知らせしないとか、ちょっとだけ訓練で変えてみよう、ちょっとずつ段階を踏んで、小さいところから変化を入れていく。その中で見つかった課題や観点を少しずつ取り入れていただきたいなと思ってます。

清:効果的なやり方をされてる保育園さんってあったりするんですか。

西:ゲリラ開催をされているところはありますよ。日付を決めて枠としては何時間ぐらいっていうのをきちっと設けた上で避難訓練を実施しますと告知をして、いつ起こすかどう起こすかは予告してない状態、ゲリラの状態で開催をされる園さんもいらっしゃいます。保育園の避難訓練って園の中で完結してしまうケースがほとんどだと思うんですけど、防災士のような第三者の目を入れて避難訓練に取り組んでらっしゃる園はいらっしゃるので、 第三者やプロの目線を別の角度から入れることによって、今まで見えていなかった課題が見える化できて変化に繋がるので、自分たちだけでやるとかを考えずに頼ることも重要なのかなと思います。

清:先進的にできている保育園さんと、型にはまっちゃう保育園さんの違いみたいなのって、イレギュラーな要素が受け入れられるかどうかとか、余力があるかどうかとか、目の前の子どもたちにいっぱいいっぱいだと、なかなかそこまで行かないのかなって思ったんですけど、どうでしょうか。

西:今おっしゃっていただいた余力っていうのは、1番大きいと正直思います。他の要素でいくと経営者の意識もかなり重要ですね。災害は日常の延長で捉えるべきだと先程も申し上げたんですが、前提として日常に余力があるかどうかというのがまず課題ではあるじゃないですか。災害が発生したそのタイミングで、まず自分の命を助けた上で、子どもたちの命を助けないといけない。その人のその瞬間の余力っていうのは、非常に大きいポイントになると思います。

清:そうですよね。そう考えると配置基準はすごく重要だと思いつつも、職員のスキルも同時に求められそうですよね。第三者を交えた質の向上という部分と、職員の経験、練習で、質を上げていくことを同時にしないとっていう感じなんですかね。

西:本当に練習は大事だと思います。保育園は毎月実施されていますが、幼稚園は年間に2回とかで毎月義務付けられていないというのも大きな課題ですね。

───ありがとうございます。災害時の食についてはどうでしょうか。

清:直近で言うと、 2023年1月に、関西で大雪が降ったのを覚えていらっしゃいますか。実はあの時に3日間ぐらい高速道路が通行止めになり、関西のお取引先100施設ぐらいに2日間、食材をお届けできなかったんですよ。今回は災害用の献立を提供させていただき、施設のみなさまに対応を依頼するということを行いました。災害用の献立は、スーパーですぐ買えるような、絶対売り切れがなさそうな食材、お豆腐とか、ジャガイモなどの日持ちして、なおかつ誰でも作れそうなものに切り替えをするんですけれども、その時に我々が危惧するのは、商品を買いに行けるだろうかっていうことなんですよね。我々に食材を発注する保育園さんの思いとしては、一括で一気に全部持ってきてほしいというのが理想なんです。これが非常時に自分たちで必要な食材を買いに行かなければならないとなると、いつ誰が買いに行くのかっていう問題がある。結局は定時外で誰かが買いに行くっていうことになってしまうと、そもそも提供できないリスクもあるので、非常に難しい判断を迫られたタイミングでした。今回100施設くらいにご連絡して、いくつかの施設にはお叱りを受けましたが、献立をお見せしたらご納得いただけたケースもありました。今後リアルにどんな対策が必要なのかというと、園にはなるべく食料を常備していただき、絶対に手に入るもので献立を提供する、1番はある程度の余力を持っておいていただくとスムーズに対応できるかなと感じました。

───なるほど、やっぱりここでも災害時の特別な対応とかではなくて、 日常の延長で余力を持たせておくっていう考え方のほうが強いですね。最後に、こどもまんなか社会を実現していくために、今後企業としてやりたいことなど、お聞かせいただければと思います。

■「こどもまんなか社会」を実現するために企業として取り組んでいくこと

西:重複してしまう部分が多いんですが、私たちが取り組みをしている防災に関して、園の先生方もそうですし、一般的なイメージとしてやっぱり難しいとか硬いイメージを持たれています。同時にいつ来るかわからないからこそ、優先順位としては、非常に低いものになってしまってる。そのイメージをまず変えて、日常にあるものとして防災を考えていただけるような発信であったりサービスの提供をしていきたいと考えています。例えば少しエンタメ要素を入れながら、先生だけではなくて、保護者さんだったり、地域の大人だったり、子どもたちにも、難しくなく、特別なものではなく、 日常の中で防災に対して取り組めるような要素も含めながら、 もっともっと関心を持っていただけるように、この保育防災を届けていきたいというふうに考えてます。

清:配置基準の話題から、給食の現場も余力を持ったほうがいいというお話がでました。給食のキットで一部それを実現できますが、それだけではなくてDXを今後やっていこうと考えています。例えば発注だけではなく、栄養士や調理の方が行う事務作業で、監査の対応やそれに必要な書類を集めなければならないところをDXする。食育の情報発信についても手助けしたいと思っています。コンセプトとしては子どもたちが食べることを好きになる未来を実現したいと思ってます。さっき「選択ができる自由」とお伝えしたと思うんですけれども、子どもたちは食の楽しさを知る、そしておいしさを知る、そういった経験ができる状態になる。保護者はそういった経験ができる保育園を選択できるという状態にしていくための活動をしっかりとやっていきたいなと思ってます。私たちは保育園にこそ栄養士が必要だと思っていて、未来を担う子どもたちの成長をしっかりとサポートでき、保護者の不安も栄養相談で払拭でき、働く栄養士さんにとっても貢献実感が高く働きがいがあるという状態を、給食の面でイノベーション起こすことで実現していければなと思っています。

───ありがとうございます。今日は「こどもまんなか社会」がずっと中核にあって、テーマとしてみなさんとお話させていただいたのですが、やっぱり子どもはどこの保育園に入るかとか自分では選べないし、自分が入った保育園、幼稚園、小学校などが、自分の世界を作ってく中でとても重要な要素であるのにも関わらず、経営者によっては防災や食の優先順位が低かったり、経験できるはずだったことが経験できなかったり、もしかしたら命を奪われる可能性も高くなるというお話を聞いて、そういう世界を変えてくにはどうしたらいいのかなと考えさせられました。子どもだけではどうにもできないこともあるので、ニシハタシステムさんやオシックスさん、子どもや子育てに関することを少しでもよくしようとしているみなさまと協力しながら、少しでも世の中を変えていきたいとすごく感じました。私たちもまだまだ知らない課題や意識できていない課題もあり、それにも気づかされたので、本当に感謝しています。これから先もこういったお話をしたり、取り組みをしていく中で一緒に解決していけたらいいなと思いました。本日はどうもありがとうございました。

【株式会社コドモン 会社概要】

◆所在地:東京都港区三田3丁目13−16 三田43MTビル 3F
◆資本金:68,250,000円
◆代表者:代表取締役 小池義則
◆WEB:https://www.codmon.co.jp/
◆事業内容:子どもを取り巻く環境をより良くするための事業を手掛け、働く人にとっても働きやすい組織づくりを体現。子育てに優しい社会に変わるよう多角的に環境整備を行い、社会に貢献する。
◎こども施設職員の労働環境を整え、保育・教育の質向上を支える子育てインフラとしての保育ICTシステム「コドモン」の開発・提供。2023年2月末時点で、全国約14,000施設、職員約27万人が利用。全国約348の自治体で導入および実証実験の導入が決定。導入施設数・自治体導入施設数・契約自治体数でシェア1位(※)
◎保育士採用を支援するウェブサービス「ホイシル(https://www.hoicil.com/)」の提供。こども施設が簡単に施設の魅力を発信でき、保育学生や再就職希望者が採用情報にアクセスしやすいような情報提供を行う。
その他、保育園向け写真ネット販売「コドモンプリント(https://www.codmon.com/print/)」こども施設を対象とした専門のECサイト「コドモンストア(https://store.codmon.com/)」、現場で働く保育者の資質や専門性向上を目的としたオンライン研修サービス「コドモンカレッジ(https://college.codmon.com/)」、こども施設職員への福利厚生サービス「せんせいプライム」などを展開。※(2023年1月株式会社東京商工リサーチ調べ)

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