美容素材「トマト種子エキス」の角層セラミド増加および抗炎症作用による皮膚保湿効果が論文に!

2021-09-29 16:00
図1. 本研究の概略図

近畿大学薬学総合研究所はオリザ油化株式会社(本社:愛知県一宮市 代表取締役社長:村井 弘道 以下「オリザ油化」)との共同研究によって、このたび2018年10月に上市した新製品「トマト種子エキス」の新たな効果として、角層セラミド増加および抗炎症作用をメカニズムとした皮膚保湿効果を明らかにし、2021年9月27日に著名な科学雑誌である「molecules」から論文がリリースされた。

論文化された研究は、近畿大学薬学総合研究所の森川 敏生 教授を中心とする研究チームと、「2019年度新あいち創造研究開発補助金」を利用した産官学連携による共同研究によって実施された。研究では、トマト種子に含まれる11種類の成分を同定し、それらの皮膚の保湿作用における有用性を評価した。その結果、ヒト表皮角化細胞※1 やヒト表皮三次元培養モデル※2 を用いた実験において、サポニン※3 成分である「リコペロサイドH」が角質層のセラミド増加作用を伴う皮膚保湿作用を有することが明らかとなった。さらに、「リコペロサイドH」の抗炎症作用を調べた結果、炎症モデル動物への経口投与による炎症の抑制効果が確認され、その機序は糖質コルチコイド受容体※4 の部分アゴニスト※5 作用によるステロイド様作用であることが示唆された。これらの結果より、トマト種子に含まれる「リコペロサイドH」は、角質層のセラミド増加作用および抗炎症作用によって皮膚の保湿作用を示すことが明らかとなった。
本研究成果により、未利用資源であるトマト種子が保湿効果をもたらす健康食品・化粧品の素材として有用であり、乾燥肌の改善に貢献できることが期待される。

オリザ油化では、これまでに見出していた皮膚内部の真皮へ働きかける効果による肌の弾力ケア作用だけでなく、皮膚外側の表皮へ働きかける効果による皮膚炎症状(ドライスキンなど)改善効果の2つの側面を合わせ持つ新たなコンセプトの美容素材として、他の同種素材との差別化を図っていく予定である。また、同素材は食品用素材としてだけではなく、塗布目的のスキンケア化粧品素材としてもアピールしていく予定である。

【発表論文】
掲載誌:
molecules(インパクトファクター:4.411@2020)
Special Issue 「Bio-functional Natural Products in Edible Resources for Human Health and Beauty」
論文名:
Lycoperoside H, a Tomato Seed Saponin, Improves Epidermal Dehydration by Increasing Ceramide in the Stratum Corneum and Steroidal Anti-Inflammatory Effect.
著 者:竹田 翔伍1、宮坂 賢知1、シュレスタ サリタ2、萬瀬 貴昭2、
    森川 敏生2、下田 博司1
所 属:1. オリザ油化株式会社、2. 近畿大学薬学総合研究所

【用語解説】
※1 ヒト表皮角化細胞:ヒトの皮膚から単離された細胞で、表皮(外側)と真皮(内側)から成る皮膚細胞のうち、表皮の細胞型を示す。
※2 ヒト表皮三次元培養モデル:ヒトの皮膚表皮組織を再現した三次元構造を持ちながら培養が可能なモデル。
※3 サポニン:ステロイドのような水に溶けにくい化学構造に、水に溶けやすい糖分子が結合した配糖体の総称。
※4 糖質コルチコイド受容体:生体内においてステロイドホルモンの受容体として働き、ステロイド系抗炎症薬もこの受容体に結合することで効果を示す。
※5 部分アゴニスト:受容体の機能を促進するもの(アゴニスト)のうち、受容体を活性化状態にするが、完全に受容体に結合しても弱い作用しか示さないもの。

【関連リンク】
薬学総合研究所 教授 森川 敏生(モリカワ トシオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/823-morikawa-toshio.html

薬学総合研究所
https://www.phar.kindai.ac.jp/centers/

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