「子どもの権利、知っていますか? 権利が守られ尊重される社会を目指して私たちが考えること」のインタビュー記事を公開
株式会社コドモン(本社:東京都港区、代表取締役:小池義則)は、先日実施した「コドモン×セーブ・ザ・チルドレン共同調査 子どもの権利に関する保育・教育現場向けアンケート」に続き、11月2日(木)にこども園・学童の先生、そしてセーブ・ザ・チルドレンの方をお呼びして対談インタビューを行いましたので公開いたします。
子どもの権利条約について
1989年、子どもの権利を包括的にまとめた条約が「子どもの権利条約」として国連で採択され、日本は1994年、世界で158番目に批准しました。条約では、世界中のすべての子どもたちが、子ども時代を自分らしく健康的に、安心して豊かに過ごせるために必要な権利をまとめています。条約を批准した国(締約国といいます)の政府は、これらの権利を守る義務があります(※1)。日本では2023年4月に「こども基本法」が施行されました。こども基本法は、憲法および子どもの権利条約の精神にのっとり、全ての子どもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども政策を総合的に推進することを目的としています(※2)。
※1 セーブ・ザ・チルドレン おやこのミカタ「こどものケンリ 大人も子どもも、知っておきたい話」
https://www.savechildren.or.jp/oyakonomikata/kodomo-no-kenri/
※2 こども家庭庁「こども基本法」
https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-kihon/
子どもの権利に関するアンケート調査結果はこちら
「子どもの権利」についてインタビュー
兵庫県尼崎市
NPO法人サニーサイド
軽夕食付駅近児童ホーム「つくし」(https://www.sunny-s.org/tukushi)
施設長 北林 和樹さま
新潟県燕市
社会福祉法人 愛宕福祉会 企業主導型保育施設
燕あたごこども園(https://www.atago.or.jp/)
小池 裕子さま
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
アドボカシー部 社会啓発チーム
松山 晶さま
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
パートナーリレーションズ部 法人連携チーム
山田 有理恵さま
株式会社コドモン
広報
岡田 咲月
■月に一度、立ち止まる時間を。子どもに対しても、職員同士でも、人権擁護のためのセルフチェック
岡田(以下、岡):初めまして。本日進行を務めます、コドモン広報の岡田です。子どもの権利についての理解促進や権利を尊重するためには今の社会になにが必要なのかなど、みなさんと色々な視点からお話しできると嬉しいです。よろしくお願いします!
北林(以下、北):初めまして。北林です。子どもたちには「キタバ」って呼ばれてます。学童保育に勤めています。15人くらいの小規模学童で、兵庫県尼崎市の「児童ホームつくし」という施設です。インクルーシブ学童なので障がいの有無などに関わらず、すべての子どもたちが一緒に生活しているのが特徴です。また、僕は2019年にイエナプラン教育というオランダの教育を学んで、共に生きる地域のあり方とか国のあり方に感銘を受けたこともあって、それをベースにしながら学童保育をしています。
ちょこっと僕の経歴も言うと、小学校の先生を1年して、そこから2年目に大阪のオルタナティブ教育をしている施設で1年くらいインターンをしてからオランダに行って、そこから今に至って学童4年目という感じです。よろしくお願いします。
小池(以下、小):新潟県の燕市にある、企業主導型 燕あたごこども園の小池と申します。新潟市にある社会福祉法人愛宕福祉会が主体です。私の経歴は、最初3、4年ほど幼稚園に勤務し、保育現場に入りました。当法人に入って11年目で、様々なことを学ばせてもらいながら現在に至ってます。現在の園は開園して5年が経過し、園児が少なくなってしまう時期もありましたがプラス思考に考えながら今少しずつ落ち着いてきてるところです。
当園の特色は、教育の一環として英語教育や、職員のなかにリトミックの資格を持っている職員がいますので、リトミックを取り入れています。また未満児さんが主で、0歳児から2歳児の成長期間は愛着関係を育む大切な期間ということでマイドールを取り入れてます。入園にあたって、保護者の方に1つだけお人形を作っていただいて、それが唯一園の中にある「自分だけのもの」ということで子どもたちの心の安心材料に繋がる取り組みをしています。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
松山(以下、松):初めまして、セーブ・ザ・チルドレンの松山です。私たちは子ども支援に特化している国際NGOで、1919年にイギリスで始まりました。そこから各地で活動が広がり、日本でも国内の問題、そして海外の問題に様々取り組んでいます。貧困や飢餓の問題、今起きているような紛争時の子どもの保護、自然災害が起きたときの子どもの居場所づくり、教育支援など、多岐に渡る活動を行っていますが、その中で私はアドボカシー部というところに所属しています。
子どもたちをめぐる課題は国内外で様々ありますが「こういった政策が必要です」ということを政府や自治体に訴える提言活動や、一般市民の方たちにも、子どもの課題、また子どもの権利について知っていただけるよう啓発活動などを行っています。普段は、私は子どもの権利を知ってもらうための授業などを学校で行わせていただいたり、そのための教材づくりをしたりしています。学校の先生方、特に小学校以上の子どものみなさんと関わることが多くて、今日は小池さん、北林さんから、小さな子どものみなさんとの関わり方なども含めて、ぜひ色々と教えていただきたいなと思っています。よろしくお願いいたします。
山田(以下、山):初めまして。セーブ・ザ・チルドレンの山田と申します。今日はみなさまのお話を伺って今後の取り組みに繋げていきたいと思っております。
私は法人連携チームというところで、企業のみなさまとNGOを繋ぐ役割を果たしています。そのなかでコドモンさんといろんな連携のやり取りをさせていただいており、今回の対談もコドモンさんとご相談しながら企画しました。先生方お忙しい中、ご参加くださいまして本当にありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。
(岡)みなさま、よろしくお願いします!早速、小池さんと北林さんの施設で子どもの権利を尊重するためにどういった取り組みをしているかお聞きしたいと思います。では、まずは小池さんお願いいたします。
(小)当園では子どもとの関わりチェックシートというものを設けています。これを作るきっかけになったのが、全国保育士会が出した人権擁護のセルフチェックリスト(※)です。みなさんもご存知だと思うんですけれど、法人内には児童部門があり、児童部門の職員とでやってみました。子どもとの関わり方で「こういうとき、どうしたらいいかわからない」といったいろんな意見を先生たちからいただいて、「これって こういうことだよね」「でもこういう場合もあるよね」と毎日の子どもの関わりについて色んな話をして、子どもはどんな気持ちになるか考えたり振り返るきっかけになりました。これを活かして、徐々に各園でも人権保護のセルフチェックシートを活用してオリジナルのものを作成して取り組んだり、園内研修内で人権について考える機会を設けたりしながら取り組んでいます。
園では子どもの幸せ委員会というのを設けており、委員会のメンバーの先生を中心に毎月1回その振り返りチェックシートを1人ずつに配布してます。振り返りでは各職員が各項目で心がけていることや自身の反省点などの意見を交換しています。記載されたものは保育会議内で共有し、「こんなとき、どうしたらいいかわからない」という場面では「こういう場合ってみなさんだったらどうしてますか」と問いかけて、「私はこんな風に関わっているよ」とか「こうして関わってみるのはどうかな?」といったアドバイスを共有することによって、悩んでいる先生もそれを試してみることに繋がります。さらにそこから「やってみたけどちょっとここがまたうまくいかなかった」といったことがまた発見されて、先生たち同士での学び合いにつながっています。
さらに今年から職員同士の関わりについてもチェックシートを設けてみることにしました。昨今、不適切な保育とか虐待といった言葉が社会で飛び交っていますが、先生たちを守るためにもこういった取り組みをしています。月に1度立ち止まって考える機会としています。
※全国保育士会 平成29年3月29日「保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリストを作成しました。」
https://z-hoikushikai.com/new/new.php?id=32
(北)うちも同じ全国保育士会が出しているチェックシートを使っています。定期的に月2くらいみんなで時間をとって確認してます。うちでよくあるのは2人以上の子どもから質問が同時にきたときに「ちょっと待ってね」と言ってしまいがちなんですが、ちょっと待ってがどれくらいか子どもには分からないし、子どもと話してると待ってる子の話を聞きにいくのを忘れてしまいそうになったりするので、対応を工夫しようという意見が出たりします。
(岡)お二人のお話を聞いて、子どもと関わる仕事についていない人でも、企業で働く人やすべての人がこういったチェックシートを用いて「自分は他の人の権利を侵害していないか」「自分の権利は守られているか」といったことを考えるきっかけにもなるのかなと思いました。すごくいい取り組みをお伺いさせていただき、ありがとうございます。
(松)子どもと接するなかで「みんなの共通の悩み」を見つけたり、振り返ったりができるような仕組みを作られているのが本当に素晴らしいと思いました。小池さんの園では職員同士の関わり方についてもチェックシートを導入されたと聞いて思ったのですが、昨年学校教育の現場では生徒指導提要が改訂(※)されて、その中でも「職員同士が安心してコミュニケーションを取れることは、学校全体が安心して過ごせる場になることに直結していて大事」という内容が盛り込まれたんです。こういった動きも連動しているなと思いました。「職員同士の関わりもチェックシートの項目に入れよう」となったのは、どういった経緯があったのでしょうか。
※文部科学省 生徒指導提要(改訂版)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
(小)経験豊かな先生方が集まり、一緒にお仕事しているなかで先生方それぞれ色んな保育観があると実感しました。実際、保育にあたると「こういった考え方ってなんだかおかしいよね」といった意見が出るようになることがありました。意見として出すのはよいけれども、不満として出すだけだと生産性がないな、改善に繋がらないな、と思ったんです。みんなで考える環境づくりを少しずつしていかないといけないと感じ、先生たちに負担がかからない範囲でできる取り組みを考えたときに、毎月子どもたちのことを考えて立ち止まるタイミングで先生同士の関わりも振り返るきっかけを作ってみようかなと思ったんです。
気持ちよく働くためにオリジナルのチェックシートを考えて「燕あたごこども園としてこういうところは心がけていってもらいたい」というのを重点的に項目として作成し進めています。職員全体で考え合える職場になれたらいいなっていう思いも込めていて、色々ルールのある中でどういうふうなことができるかっていうことをみんなで考え合えると、いろんなアイデアが出てくるでしょうし、 いろんな協力の仕方が出てくるかもしれないですし。そういったきっかけになればいいなと思って取り入れました。
■現状を見直し手放すことも、子どもの権利尊重につながる 「何を言っても大丈夫」と思える環境づくりの大切さ
(岡)大人も権利について考えるのはとても重要ですよね。それでは次は、北林さんの学童ではどういった取り組みをされているかお伺いしてもよろしいでしょうか。
(北)うちの学童では、子どもたちが本当に感じてることや子どもたちの権利を尊重していくために、何かを取り組んできたっていうよりは、何かをどんどん見直していったり、手放してったりしていたのがこの4年くらいの歩みです。例えば、1つは時間割をなくしました。時間割を決めると、時間割を守ることが目的になりやすく、その子のそのときに感じていることを大切にできないことがありました。そうじゃなくて、子どもの生活リズムを観察していこうっていうことで、今みんなエネルギーいっぱいだから、とりあえず一周走ろうかと声かけしてみたり、時間割りを考えていくというより生活リズムを考えてます。ルールはもう極力なくしていくスタイルです。
「走らない」と決めてると「ルール守ってる人」「守ってない人」という部分だけで、浅い会話になってしまい、なぜ走るのか、走ることで私はどう感じるのか、などの深い話し合いが難しくなることがありました。だから、もうルールとしては「自分を大切にする、相手も大切にする」っていうことだけは決めて、あとは自分たちでその場で決めることにしています。例えば、室内で走り回る際に、以前は一律に「走らない」というルールで抑えていましたが、なぜ走りたいのか、走るとどんな影響があるのか話し合って、今回はどうするのかを決めてもらっています。その際の話し合いでは、「走り回ると、宿題に集中できない」「外に行きたいけど、宿題をしないと怒られる。けど、遊びたい」「今は、5人しかいないんだから、少し走れるんじゃない?」「なら、この机は危ないから、たたんでしまおう」「みんな靴下は滑るから脱ごう」など、子どもたちが当事者同士で話し合って決めています。
あとは子どもに権利が守られているかを直接聞くインタビューもしてます。3年生以上の子5人くらいに10分ずつ子どもの権利について聞いてみてます。そのなかで発見だったのは、「学校の意見表明」と「学童の意見表明」の違いです。「学校で意見表明できてる?」と聞くと「できてる」「今日はできなかった」とそれぞれなんですが、具体的に聞いていくと「今日は僕、授業で手をあげた」っていうのがイコール意見表明できたと子どもは捉えていて、おもしろいなと思いました。
これはここの学童だけの話なんで一般化できないですけど「学校でのルールに不満はある?」って聞くと、「これ絶対言っちゃダメなんですけど、、」みたいな感じでボソっと言うんです。でもその後「うちの学童にも不満はある?」と聞くと20個くらい出てきたりして、「なんで一緒にカラオケ行けないの?」といったことも出てきたり(笑)。児童ホームつくしでは、どんな意見でも比較的言いやすいんだなとインタビューを通して発見がありました。
あとは保護者への働きかけもしてます。保護者の方には説明会とかで尼崎市が出している子どもの育ち支援条例を紹介したり、子どもの権利を守ることでどういういいことがあるかを伝えて、権利を守ることの大切さをお伝えしています。
放課後って学校と家庭の間にある場所なんで、学校で感じてることの影響とか、家庭で感じてることの影響とか、結構色濃く出ると思ってます。全員じゃないですけど、やっぱ宿題とか習い事に苦しんでる子どももいて、結構自由な学童なんで他の子は遊んでたりして、でも自分は勉強しないといけないみたいな子どもの気持ちをリアルに日々感じています。「宿題しないとめちゃくちゃ怒られる」と必死な子どもをみてると失っているかもしれない大切なことを保護者さんと、どう共に考えられるか日々葛藤しています。
(岡)色々な取り組みを聞かせていただきありがとうございます。子どもへのインタビューで、みんなが学童に対する不満とか意見を表明してくださいって言ったときにたくさん出てくるっていうのは、それだけ北林さんをはじめ職員のみなさん意見を言いやすい環境を作っているっていうことなんだなと思います。小手先のテクニックのように、じゃあインタビューしてみようか、といったことをやってみてすぐ意見が出てくるものじゃないと思うので、日々の積み重ねというか、子どもがここは安全な場所だ、何を言っても大丈夫なところだっていうのを感じられているんだなっていうのをすごく思いました。やっぱり権利が守られてるっていうのはすごい理想の状況なんですよね。
■子どもも一人の人間、型にはめないでその子にあった接し方を
(岡)みなさまいろんな子どもの権利に関する取り組みをやっていく中でも難しさを感じることもあると思います。みなさんの感じている難しさについて伺いたいのと、具体的にどういった場面で子どもの権利を尊重するのが難しいなと感じるかをお伺いしたいです。小池さんいかがでしょうか。
(小)いろんな先生たちがいらっしゃるんですが、ユーモアを出している先生もいれば、静かに子どもを見守ることが上手な先生もいてさまざまです。大人同士にも相性があるように、子ども同士でも子どもと大人でも相性が同じようにあると思います。子ども自身が心の安定を図れる先生はこの先生、 アグレッシブに遊びたいときはこの先生、といったようにその子の選択で心の安定に繋がっていけたらと思っています。そして先生同士が、それぞれの子の様子を共有しあえる環境があることも大切だと思っています。
(岡)今回子どもの権利というテーマですが、今のお話聞いて、 子どもといえど大人と変わらない、やっぱり一人の人間なので、「この人にはこういう接し方をすればいい」というのが決まってるわけじゃないっていうのを改めて感じました。大人同士でも相性の良し悪しはありますし、やっぱり子ども対大人でも相性はありますよね。
(松)子どもの主体性を育むということは、その子のペースや、誰とどういう関係を作るかなど、そういうのも含めて尊重するってことなんだろうなと、お話を伺っていて思いました。子どもの主体性を尊重するためにはなおさらのこと、保育士の先生同士の「いまこの子はこういう様子だよね」や、「こういう関わり方してみようか」ってコミュニケーションや、次はこうしようなどと考えたりする余裕を確保すること、関わる保育士の先生の人数とかもすごく大事なのかなと思いました。役割分担の面では「今の人数体制だと物理的に無理だよ」といった声が先生たちから聞かれたりするものでしょうか。
(小)そうですね、物理的な制約がありつつもいまの人数体制で連携を取りながらできるように工夫しています。朝のミーティングの段階で各学年の活動を聞いて「このときどうする?」「 このとき誰がついていく?」などを事前に先生同士で把握することで、見通しが立ちやすくなっているように感じています。
■「子どもがやりたいこと」と「大人が求めること」のバランスの難しさ
(北)うちの学童ではインクルーシブの難しさを感じることがあります。インクルーシブと言いながら、やはり話し合いでは解決が難しいときもあるんですね。例えば言語能力が高い子どもとか説明するのが得意な子と、言語能力ではなく違う才能を持っている子、いろんな子がいます。得意な子は権利を獲得しやすくて、一方で得意でない子の「こうしたい」をキャッチするには時間がかかったりといった難しさがあります。
あとは、「子どもがやりたいこと」と「大人が思うこうあってほしい」のバランスも難しいと思います。子どもに「より幸せになってほしい」っていうのは、僕も保護者さんも共通してるんですけど、ロールモデルとして「勉強できる」とか「能力が高い子」が生き残っていけるはずだという思いが保護者さんには強いことがあります。宿題をせずに遊びに出たらやっぱり不安になるのは正直あると思うので、子どものやりたいことを尊重することが大切と分かっていても勉強させたい気持ちが強くなったりと、バランスが難しいと思います。習い事に行ってる子が今日はすごく行きたくないってときに保護者さんに「今日ちょっと習い事行きたくないねんけど」って電話したと思ったら、その5分後に「やっぱ習い事いく」といって行ったり、そういった姿を見ながら、本当にそう思ってんのかなとか思って、すごく難しいです。学童で習い事の宿題してるときも、 他の子は外で遊んでても、自分は宿題終わらせるために必死になってて、いろんな知識とか得てる分、失っている大切なことを保護者さんにどう伝えるかは、日々葛藤しています。
(岡)やはり子どもに対してこうあってほしいという保護者の方の気持ちもありますよね。その狭間で揺れる子どもの姿を北林さんは身近で感じられているのがとても伝わりました。
(北)難しさもありますが、保護者さんとのコミュニケーションとしては、コドモンで子どもの様子の写真を送ったり、お迎えのときに話したりといったことを日々心掛けています。子どもたちが学校とか学童で見せてる顔と、おうちで見せてる顔がやっぱり違うので、学童では今日こんなこと頑張ってましたよ、とかっていうのを伝えるようにしています。
(小)保護者さんとのコミュニケーションでいうと、うちは入園説明会で必ず「一緒に子育てをしていきましょう」とお話をさせてもらっています。「トイレトレーニング、保育園でお願いします」とおっしゃられる保護者さんもこれまでの保育現場の経験の中で結構いらっしゃったんですね。私たちは保育園でできることはもちろんやるけれども、それは保護者さんと一緒になってやっていくことが大前提にあると思ってます。お家でできないことがあれば、もちろん私たちもお手伝いしますし、相談にも乗りますし、困りごとに対して「こんな方法もありますよ」と提案をしていきながら一緒になって子育てをしていきましょうとお伝えしています。困りごとだけじゃなく、コドモンの連絡帳アプリを通していろいろな楽しいお話を載せてくださる保護者さんもいらっしゃいますので、それも会話のきっかけになり、日々のやり取りの中で笑い声も生まれたりしています。いつでもオープンな気持ちで保護者さんとやり取りすることによっていい関係性が築けているように思います。
(松)小池さんの園では、保護者の方とのコミュニケーションではコドモンも活用されているとのことですが、悩みを抱えていそうな保護者の方に対してアプローチするために、他にどういうきっかけ作りがよさそうかなど、何かヒントがあったりしますでしょうか。
(小)ツールがなくとも日々声をかけていくことを積み重ね、少しずつ会話しやすい雰囲気を作り、保護者さんが発しやすいタイミングを掴んでいけるといいのかなと思います。あと、コドモンとは別に子育てノートというものを1冊お渡ししています。そこでは子育てで困ったことや子育て以外での困りごとなどがあったら書いていただくものとしてお渡ししています。保護者さんが共有しやすくなれたらと思い取り組んでいます。
■子どもが本当に求めていることに耳を傾けて 全ての人が「子どもの権利について知る機会を作る」のは国の責務でもある
(岡)みなさまありがとうございます。では、最後の質問です。大きなトピックになりますが、どうしたら子どもの権利が尊重される社会になると思いますか。またそのためには国や自治体にはどういったことを求めていく必要がありそうでしょうか。まず北林さん、お伺いできますでしょうか。
(北)そうですね。僕はオランダのイエナプラン教育を学んだのですが、そこで学校と社会の関係性みたいな部分で日本との大きな違いを感じました。日本では「今こういう社会だからこういう教育をしていきましょう」という側面が強くあると思うんですけど、イエナプラン教育では「社会と学校はお互いに影響し合うもので、学校は今の社会の影響を受けながらも理想の社会を先に実現する場で、そこで育まれた子どもたちが社会に出て影響を与えていく」という考えがあります。これはとてもいいなと思ってます。放課後の時間は1,600時間あって学校の時間よりも400時間多い。この放課後の時間で「未来の素敵な先取り」を学童保育でやっていきたいなと思っていて、子どもの権利を尊重するためにも、まず私たちができることをやっていきたいと思います。
そして、何か課されたものから解放されてる時間が放課後だと思ってて、子どもたちはありのままの自分を表現してることが多いと思ってます。リアルな子どもの声を僕はたくさん聞くので、学童の横のつながりを強くすることで子どものリアルな声を集める、そしてそれを国に知ってもらうっていうことはすごく大事だなと思っております。
(小)私はこの質問に対して日々子どもを取り巻く環境がこのままでいいのかなというのは常に感じています。毎日朝1番に園にくるのが0歳児さんで、1番最後に帰るのも0歳児さんで、お友達がお迎えで少しずつ少なくなってくると泣いちゃうんです。お友だちとさよならする寂しさを感じていたり、インターホンが聞こえると「次は自分かな?」と確かめにきたりします。そんな姿を見ると、確かに園は子どもを一緒に育て守るところなんですが、 受け皿を広くするだけじゃなくて、保護者の方が働く企業や身近な大人、そして国にも「子どもが本当に求めていることって何か」ということについて考えてもらえる機会があると嬉しいです。
これから「こども誰でも通園制度」ができ、様々なお子さんを預かる取り組みも始まろうとしています。しかし、現場は保育士不足で悩んでいて、このままではどんどんなり手がいなくなってしまうんじゃないかという危機感もあります。保育園の先には北林さんの勤めている学童もあったり、子どもが関わる場所は増えていく中で、「子どもが今何を求めてるのか」というところを今一度考えていただきたいです。国全体が子どもたちを育てていく、未来の子どもたちをこの国が守る、支えていく温かい国になってほしいと思います。
(岡)ありがとうございます。子どもが本当に求めてることは何か、子どもに関わる仕事についている人もそうでない人も、すべての人が聞く必要があるとすごく感じます。子どもが何を求めてるのか、その声に耳を傾ける。国が「こどもまんなか社会」と言うなら、子どもの声を聞いて、「子育ては家か保育園か」といった状態ではなく社会全体で育てるっていう意識が今必要ですよね。
(松)先ほど北林さんの話を伺って、「素敵な未来の先取り」という考え方が本当にすてきだなと思っていました。政策提言をするときには、「こういう問題があります」っていう提言にやっぱりなりがちですが、「こういう社会に住みたいんだ」とか「こういうことやってよかったよ」といったメッセージや声もいっぱい届けていきたいです。また、小池さんがおっしゃったように、子どもを育てるのは保育施設や学童だけと限定されるのではなくて、子どもも社会の一員ですし、早いうちからいろんな人と関わっていくってことも大切だと思いました。
国連「子どもの権利条約」の中には、「2条 差別されない権利」、「3条 子どもにとって最善の利益を考えてもらう権利」、「6条 生きる、育つ権利」、「12条 意見を聴かれる権利」などいろんな権利がありますが、42条に「子どもの権利について知る権利」というのも含まれています。子どもだけじゃなくて、子どもに関わる大人としても、社会のみんなが子どもの権利について知る機会を作るというのも国の責務になっています。なので、保育園とか学童とか家庭とかだけに任せるのではなくて、すべての人が子どもの権利について知り尊重していくってことがすごく大事なのかなと思いました。
最後にもう1つだけ。先生たちの配置基準の改善や働く環境整備もすごく大事で、子どもの権利条約でも国の責務に関する条文に、国が子どもの権利が守られるよう環境整備をしなきゃいけない、そのための措置を取らなきゃいけないっていうのがあるんです。子どもに関わる大人たち、専門家の人たちの研修の機会とか、人的リソースを配分するための予算をしっかり確保していくというのも実は含まれているので、ここは声を大にして、日本も子どもの権利条約の締約国であるわけですから、国の責務として求めていきたいなと今日は改めて思いました。ありがとうございました。
(山)今日私は1人の保護者として先生方の取り組みを聞かせていただきました。子育てをしながらずっとフルタイムで働いていますが、本当に保育園、学童にはとてもお世話になりました。保育園・学童の支えがなければここまで育てられなかったなと思っています。
小池さんがおっしゃっていたように、保育園と保護者が一緒に子育てをしていきましょうというのは私も入園時に説明会で言われました。園との日々の連絡帳のやり取りは交換日記のようで、一緒に子育てを見守っていただき、いろんなことを先生方に相談できたことを思い出しました。お迎えのほんの1分ぐらいの間の時間ですが、先生との会話がすごく励みになっていました。学童でもやっぱり先生たちに恵まれました。特に最初の小学校1年生になったときにはいろいろと不安もありましたが、先生方とのコミュニケーションのおかげで乗り越えてこれたと思います。今日お二人のお話を伺って、先生たちがこのような強い思いを持って子どもたちと向き合ってくださっているのは、本当にありがたいなと、 感動しながら聞いていました。
また改めて、保護者も子どもの権利について知る必要がある、保育園や学童にお任せきりではダメだと思いました。先週ある企業の従業員のみなさん向けにセミナーを実施したのですが、「子どもの権利条約を知ってる人は手挙げてください」と呼びかけたところ、手が上がったのがたった1人でした。従業員の方たちは家族がいて、子育て中の方もいっぱいいると思うのですが、こうした企業で働く方たちを含め社会全体で子どもの権利についてもっと知っていく必要性を感じました。そこからムーブメントが起きて社会、国を動かしていくようなこともあると思います。普段、保護者の方々は忙しくて、先生たちの日々の取り組みに感謝をお伝えする時間がなかなかとれないと思いますが、きっと感謝されていると思うので引き続きよろしくお願いしますということを私からもお伝えいたします。本当に今日はありがとうございました。
(岡)みなさまありがとうございます。コドモンとしても、企業で働くメンバーたちに対して子どもの権利を学ぶような機会をつくっていくことも重要だと思いました。子どもも大人も、すべての人の権利が守られる社会を目指していきたいですし、みなさまのご協力を得ながら取り組んでいけたらいいなと考えております。本日は本当にありがとうございました。
【セーブ・ザ・チルドレンについて】
セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもにとって、生きる、育つ、守られる、参加する、「子どもの権利」が実現されている世界を目指して活動する子ども支援の国際 NGO です。1919 年に英国で創設され、現在、日本を含む 30 の国と地域の独立したメンバーが連携し、約 120 ヶ国で子ども支援活動を展開しています。 https://www.savechildren.or.jp/
【株式会社コドモン 会社概要】
◆所在地:東京都港区三田3丁目13−16 三田43MTビル 3F
◆資本金:68,250,000円
◆代表者:代表取締役 小池義則
◆WEB:https://www.codmon.co.jp/
◆事業内容:子どもを取り巻く環境をより良くするための事業を手掛け、働く人にとっても働きやすい組織づくりを体現。子育てに優しい社会に変わるよう多角的に環境整備を行い、社会に貢献する。
◎こども施設職員の労働環境を整え、保育・教育の質向上を支える子育てインフラとしての保育・教育施設向けICTサービス「コドモン」の開発・提供。2021年度のサービス継続率は99.8%。2023年10月末時点で、全国約16,000施設、職員約33万人が利用。全国約448の自治体で導入および実証実験の導入が決定。導入施設数・自治体導入施設数・契約自治体数でシェア1位(2023年1月株式会社東京商工リサーチ調べ)
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