【岡山理科大学】「いきものQOL」でSDGsミニシンポ開催/プロジェクトの現状と未来像を熱く語る【いきものQOL 番外】

獣工の連携 番外

学校法人加計学園
2025-05-19 13:10

岡山理科大学では動物たちにやさしい医療や動物たちの健康づくりに向けて、獣医学部と情報理工学部の工学分野が共同で、デバイス開発に取り組んでいます。総合大学の強みを生かし、学部の枠を超えた“獣工連携”による獣医療の新しいスタイルです。動物たちのQOL(Quality of Life=生活の質)向上は、ヒトのQOLにもつながります。動物とヒトの豊かな生活実現をめざす「いきものQOL」の研究現場を、シリーズでレポートします。


  人と動物がともに幸せに暮らせる持続可能な未来づくりをテーマに「SDGsミニシンポジウム~いきものQOL~」(岡山理科大学主催)が5月17日、岡山市北区の能楽堂ホールtenjin9で開かれました。「いきものQOL」プロジェクトを担う今治・岡山両キャンパスの教員4人がプロジェクトの社会的意義や未来像について熱く語り、約80人の参加者も熱心に聞き入っていました。

 冒頭、平野博之学長は「岡山理科大学は世界大学ランキングにもランクインし、日々、教育と研究のシーズを磨いています。今日は研究のブランディングとして取り組んでいる『いきものQOL』を通したSDGsへの貢献について皆さんと共有したいと思います」とあいさつしました。

メモを取りながら熱心に聞き入る参加者が目立ちました

メモを取りながら熱心に聞き入る参加者が目立ちました

あいさつする平野学長

あいさつする平野学長

 演題と講師は以下の通りです。

 岡山理科大学の新しい“推し”:いきものQOLプロジェクトのビジョンと未来像
  <獣医学科・江藤真澄教授>
 ペットの“見えない苦しみ”を測る~QOL向上のためにできること~
  <獣医保健看護学科・佐伯香織准教授>
 獣医療×福祉×工学への挑戦~新たな領域を切り拓く~
  <情報理工学科・趙菲菲准教授>
 地域と動物産業をつなぐ架け橋~人と動物がともに暮らす社会へ~
  <獣医保健看護学科・古本佳代教授>

江藤教授 「獣医療工学」「獣医療福祉工学」――新たな研究分野の創成を

 先頭を切って江藤教授は、このプロジェクトを通して「獣医療工学」「獣医療福祉工学」という新たな研究分野を創成することで、人と動物双方の医療・福祉向上につなげることができる、と未来像を明示。開発中のデバイスのほか、産官学連携で共同開発した商品も紹介し、「こうしたプロジェクトを一つ一つ積み重ね、成果を上げて地域に貢献していくことで、私立大学に求められている役割を果たしていけるのではないか」と強調しました。

プロジェクトの未来像を示した江藤教授

プロジェクトの未来像を示した江藤教授

佐伯准教授 「防げる苦しみはしっかり防ぐことが大切」

 続いて、佐伯准教授は動物たちに包帯を巻いた時にかかる圧力(巻圧)を計測するデバイス「まきよるONE」の開発経過と、実際に実習で使って学生たちのスキルアップに効果を上げていることを紹介。また災害時のペットの同行避難では、ストレスを抱えている動物たちが受け入れやすいデバイスを使って呼吸数や心拍数などを測定し、不安や不調をいち早く把握して対処し、「防げる苦しみはしっかり防ぐことが大切」と訴えました。

「いきものQOL」で誕生した初の教材について紹介する佐伯准教授

「いきものQOL」で誕生した初の教材について紹介する佐伯准教授

趙准教授 「飼い主とペットが長く幸せな生活を送ってほしい」

 一方、趙准教授は、重度の脊髄損傷を負ったペットのために開発中の「イヌ歩行機能改善リハビリデバイス」について解説。工学系の専門知識を生かし、車イスには太陽歯車を中心として複数の遊星歯車を組み合わせた機構を採用しました。前肢の動きに合わせて、この機構で後肢を動かし、低周波パルスによる刺激を加えて、筋肉と機能の回復を図ります。「長く飼い主さんと幸せな生活を送ってほしい、というのが本来の目的です」と力がこもります。

犬の歩行機能改善用リハビリデバイスの開発に取り組んでいる趙准教授

犬の歩行機能改善用リハビリデバイスの開発に取り組んでいる趙准教授

古本教授 「人と動物、地域がつながる未来への懸け橋を築いていきたい」

 最後の古本教授は獣医系大学の役割として、人と動物、環境を連携させて感染症予防や健康維持をめざす「One world, One health」に加えて、動物と人がともに安心して暮らせる「One welfare」があることを指摘。この考えをベースに、ペット用今治タオル、ジビエを活用したペットフード、飼い主とペットがシェアできる食事などの商品開発を進めてきたことを紹介し、「今後も大学の専門知識や研究力、地域の資源を生かしながら、新たな価値を生み出して人と動物、そして地域がつながる未来への懸け橋を築いていきたい」としめくくりました。

「人と動物、そして地域がつながる未来への懸け橋を築いていきたい」と語る古本教授

「人と動物、そして地域がつながる未来への懸け橋を築いていきたい」と語る古本教授


登壇した講師の皆さん。(左から)江藤教授、趙准教授、古本教授、佐伯准教授

登壇した講師の皆さん。(左から)江藤教授、趙准教授、古本教授、佐伯准教授

QOL Quality of Life(クオリティー・オブ・ライフ)の略で、本来は人間らしく生き生きと暮らしているかどうかを示す「生活の質」「生命の質」を示します。もともとは医療分野の末期がん患者などの終末期ケアの現場で、快適さなどを取り戻そうとして広がった試みです。福祉や介護の現場にも広がり、最近ではペットについても注目されています。

関連リンク
いきものQOL#9はこちら
https://newscast.jp/news/0881513

獣医学部
https://www.ous.ac.jp/department/veterinary/

情報理工学部
https://www.ous.ac.jp/department/info/

お問い合わせ先
岡山理科大学 企画部
電話番号:086-256-8508

https://www.ous.ac.jp/