第42回和漢医薬学会学術大会での共同研究発表が優秀発表賞に選出 「水耕栽培によるセンブリの効率的な生産方法の検討」

三進金属工業株式会社(本社:大阪府泉北郡忠岡町、代表取締役社長 新井宏昌)は、近畿大学(大阪府東大阪市、学長 松村到)薬学総合研究所の森川敏生教授らとの共同研究において、日本三大民間薬のひとつであるセンブリ※1 の水耕栽培による効率的な生産方法を検討し、土耕栽培と遜色なく栽培でき、かつ、栽培期間を短縮できる生産方法を確立しました。本研究成果について、2025年8月23-24日に広島大学霞キャンパスにて開催された第42回和漢医薬学会学術大会にて発表(発表者:三進金属工業株式会社サイエンス事業部戦略的基盤研究センター 係長 佐々木将太郎)し、優秀発表賞に選出されました。
【研究背景】
医療現場における漢方・生薬製剤等のニーズの高まりにより、その生産金額は直近5年間で約28%増加しています。しかしながら、原料となる生薬の年間使用量に占める国産生薬の割合は約9%のみで、その多くを輸入に頼っています。そのため、国産生薬による安定供給が望まれていますが、栽培の難しさから生産者の新規参入の障壁が高いことが問題となっています。このような背景のもと、我々の研究グループでは環境制御が容易で生産者の知識や勘に依存しない水耕栽培の利点を生かし、日本薬局方(以下、「局方」)収載生薬の基原植物の水耕栽培研究を行ってきました※2。そのなかで得た知見を基に、今回、センブリの水耕栽培について検討を行いました。
【研究内容】
1.水耕栽培でも土耕栽培品と比べて遜色のないセンブリが栽培可能であることを示した(図1)
2.センブリの水耕栽培に最適な養液条件を確立した(図2)
3.土耕栽培では2年で1作である栽培期間を約1年で1作にまで短縮できた(図3)

【まとめ】
本研究により、土耕栽培では通常2年かかるセンブリの栽培期間が播種から収穫までを385日間(約1年)に短縮することができました。現在、栽培期間の更なる短縮と重量の増加に向けた研究を継続しています。これらの知見を踏まえ、今後も生薬の国産化に貢献する技術開発に繋げてまいります。
※1:センブリとは
日本三大民間薬のひとつであるリンドウ科(Gentianaceae)のセンブリ(Swertia japonica Makino)。その開花期の全草は、局方収載生薬のセンブリ(当薬)として、苦味健胃薬、整腸薬、育毛剤として広く利用されています。
※2:これまでに我々が取り組んできた生薬の基原植物の水耕栽培
我々の研究グループではこれまでに、局方収載生薬であるセネガの基原植物ヒロハセネガの完全水耕栽培に成功しています(薬事日報、2023年7月21日、p.5)。
【第42回 和漢医薬学会学術大会 優秀発表賞受賞者について】
タイトル :水耕栽培によるセンブリの効率的な生産方法の検討
発表者 :佐々木将太郎(三進金属工業株式会社戦略的基盤研究センター 係長)
熊内雅人(三進金属工業株式会社戦略的基盤研究センター 部長)
福田陽一(いなり天産物研究所)
森川敏生(近畿大学薬学総合研究所 教授)
赤井周司(大阪大学 名誉教授)
ホームページ:https://www.wakan-iyaku.gr.jp/news/2025/09/19/11417/
【関連リンク】
薬学総合研究所 教授 森川敏生(モリカワトシオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/823-morikawa-toshio.html
薬学総合研究所
https://www.phar.kindai.ac.jp/centers/
薬学部
https://www.kindai.ac.jp/pharmacy/


