健康保険証廃止で揺れる医療現場
マイナ保険証移行の今、求められるITインフラとは
■いよいよ12月、健康保険証が廃止へ

2025年12月1日をもって、従来の健康保険証の有効期限の終了を迎え、12月2日より「マイナ保険証」への移行が本格化されます。政府は、マイナンバーカードと保険証の一体化による利便性向上を掲げ、医療機関や薬局への専用機器導入支援策も講じてきました。
マイナ保険証を活用すれば、例えば過去に別の医療機関で処方された薬や検診情報を、本人の同意のもと医療機関に共有でき、重複投薬の防止や適切な診療につながるほか、救急搬送時には迅速な医療情報提供が可能になり、医療の質や安全性の向上が期待されます。
しかし、利便性向上の期待が高まる一方で、現場では“準備完了”とは言い難い状況が続いており、普及と定着に大きなギャップが生じています。
■現場の実態――数字が示すギャップ
厚生労働省が2025年9月に公表した資料によると、医療機関・薬局のレセプトベースでのマイナ保険証の利用率は44.40%にとどまっています1 。また、民間の調査では、マイナ保険証の利用率が10%未満の医療機関が全体の約7割を占める2という報告もあり、地域や診療所の規模によって、対応状況に大きなばらつきが生じているのが実情です。さらに、スマートフォンに格納された「スマホ保険証」についても、現場での対応状況や導入の進捗には差があるとも指摘されています。
これらのデータは、「制度上の準備は整っている」一方で、「現場での実用は未整備」と言える実態を浮き彫りにしています。
■なぜ現場は追いつかないのか?
実際の医療現場から、下記のような声が上がってきています。
• 月初めのオンライン資格確認で受付に長蛇の列ができる
• カードリーダーは導入したが、スマホ版マイナ保険証に未対応
• 操作不慣れによる窓口トラブルと対応負担が増加
• マイナ保険証を持っていない、使い慣れていない、スマホ未保持者層が診療を受けにくくなる
この背景には、端末は導入しても、日々の運用は現場まかせとなり、医療機関・患者の双方の理解が追いついていないという実情があります。この混乱を避けるためには、医療機関側の運用体制の整備に加え、患者側の理解と行動変容も不可欠です。
以下は、2025年12月2日以降の受付パターンの一例です。

■現場を支える実装可能なIT技術の必要性
必要なのは、制度の整備だけでなく、「誰もが医療を平等に受けられる」環境の実装です。そのために、現場にフィットした柔軟で操作性に優れたIT技術が求められています。理想的な機器の特徴として、下記が挙げられます。
• マイナ保険証の物理カード/スマホ版の両方に対応
• 誰でも簡単に操作でき、ワンステップの資格確認
• 受付業務の効率化・人為ミスの軽減に直結する設計
特に、スマホ型マイナ保険証が徐々に普及していく中で、物理カード専用端末だけでは十分に対応できないという現場の声は強まっています。医療現場の対応が追いついていないことで、物理カードを持たずにスマホだけ持って来院し、受付対応に時間を要してしまうというケースも少なくありません

こうした現場の声を踏まえ、対応力のある機器に注目が集まっています。その一つとして挙げられるのが、「myVerifist(マイ・ベリフィスト)医療エディション」です。マイナ保険証(物理カード・iPhone搭載版のいずれも対応)による受付に加え、読み取り用の端末はキャッシュレス決済にも利用できる多機能性を備えています。
厚労省が9月に解禁したスマホ搭載マイナ保険証のオンライン資格確認制度にも準拠しています。
■多様な選択肢が次世代の医療DXの鍵
マイナ保険証制度は、単なる制度移行にとどまらず、利便性・安全性の観点で社会的意義の高い、医療現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を促す大きな契機となる取り組みです。現在、読み取り端末の設置に関しては政府の補助金も活用可能ですが、「機器がある=運用できている」わけではありません。実際に医療現場で機能しなければ、制度全体が形骸化する恐れもあります。
本当に必要なのは、現場の混乱や負担を軽減しつつ、安心して医療を受けられる体制を整えるための「使える技術」「現場にやさしい設計」です。医療機関にとって今まさに、“選べる”端末、“使いやすい”技術、“柔軟な”対応力が問われている局面にあります。当社としても、引き続き現場の声を踏まえ、安心して医療を受けられる環境づくりの技術支援に努めてまいります。
*1 出典:令和7年11月13日付 厚生労働省資料「マイナ保険証の利用促進等について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001594829.pdf?utm_source=chatgpt.com
*2 出典:2025年8月 ケアネット調査
https://www.carenet.com/news/general/carenet/59906?utm_source=chatgpt.com
・「iPhone」は、米国およびその他の国で登録された Apple Inc.の商標です。
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